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X'mas Rose〜聖夜に咲く白き薔薇は紅に染まる  作者: 里井雪


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アンナ

 ノックの音がしたと思ったら、初老のメイド、アンナが入って来たようだ。彼女も緑の目に金髪といった、この世界の標準的な容姿だが、年齢なりに色が燻んでいる。


「あら、お客様ですね、これは珍しい。アンナと申します。早速、お料理の支度をしますが、まずは着替えさせてくださいな」


「ああ、こちらのお二人、オーシーノさん、と、オリヴィアさんは、我が家にしばらく逗留してもらうことになった」


「まぁ、エルフのご夫婦なんて、初めてお目にかかります。噂通り、なんて美しいのかしら」


「僕、ヴァイオラは、明日にはここを出ますけど……」


「ヴァイオラさん、そこまでお急ぎになる旅なのですか? よろしければ、しばらく、ご一緒に」


「ええ、そうですよ。見ればまだお若いように思いますが、お疲れでしょう。二、三日はお泊まりになっていかれては?」


「じゃぁ、明々後日まで、二人の片付けを手伝うよ」


 そんな話をしている間に、アンナは夕食作り終えたようだ。


「ささ、どうぞどうぞ。久々のお客様、田舎故、何もないですが、私なりに頑張ってみました」


 メニューは、鶏肉のシュニッツェル、魚は川でとれたニジマスだろう、オイル漬けにしてキャベツと炒めたもの、ジャガイモの塩茹、そして定番のザワークラウトだ。


「あの、私も、ご相伴に預かっていいですか?」


「もちろんです!」


 アンナは、メイドといっても、近所の農家で一人暮らしをしている老人だ。いつも、村長の食事の世話をしつつ、自らの食事も取ることにしているらしい。


「まぁ、全て、地産地消ということで、おなじみのソーセージなどはありませんが」


 この村は基本自給自足、養鶏のみを行いタンパク源は鶏と川魚なのだろう。野菜は豊富に栽培しているようで、かつ、氷の魔石を使った冷蔵庫もあるこの世界、その保存には事欠かない。


 だが、この規模の村で、養豚や養牛までは難しく、ましてやソーセージへの加工となると、手に余るということだろう。


 もちろん、ケシの花で現金収入もある訳だが、街で何かを売買するには、魔の森を抜けて行く必要がある。


 類稀なる魔力を持つ三人だから、簡単に踏破できた魔の森だが、一般人は魔獣を避けながらの旅となり、往復で一週間もかかる。さらには、いざという時のために身軽である必要もあり、荷車を引いて大荷物を運搬することなど不可能だ。


 従って、彼らが街で買うものは、村では生産していない工業製品、医薬品、魔道具に限られる。それでも、リュックに詰めれば、瞬く間に満杯になってしまい、本当に必要な物を持ち帰れないことすらあるらしい。


「鶏肉の方がダイエットにいいと聞くよ。なにより美味しいし」


「君の有り余る魔力は食事から供給されているはず、ドロシー、そう簡単に太れんだろ?」


「あのねぇ〜 ニールの兄貴、あっ!」


「ああ、アンナは信頼のおける人物です。これからのこともありますし、全て話しておきましょう」


 村長は三人の事情をアンナに説明した。


「なるほど! この村にはいろいろ訳ありな方が、いらっしゃいますが、とびっきりの賓客。歓迎いたしますよ! いや、長生きはするものですね。みなさんと握手してもいいですか?」


「あはは、どうぞ。僕は勇者様の付き添いに過ぎないけどね」


「いえいえ、ドロシー様も、今まで見たこともないような、強い魔力をお持ちの方です」


 アンナは、ドロシー、ニール、ロゼの順で握手をした。


「これも、こちらで作ったお酒ですが、少々キツく、ドロシーさんには……」


 と言って、村長は透明なアルコールを持ってきた。ここで採れるものといえばトウモロコシだろうか。これを発酵、蒸留したものなら、テキーラということになる。


「あはは、実は、僕、ロゼより年上なのです。魔族の血が混じっています故、成長が遅いだけで」


「ダンピール! 何もかもお話いただけるのは、私どもを信頼いただいたということですね」


「それもあるし、ニールとロゼに言っておきたいことがある。僕は、こんな事態となったことが、むしろ、ありがたい。好機だと思っているんだよ」


「いや、そこまで言うなよ。俺を気遣ってくれる気持ちがありがたいが」


「本当なんだ。僕は、多分、魔王の腹違いの妹だよね。魔族の流儀は前に言った通りだし、経緯を説明すれば、ちゃんとした立場で迎えてくれる可能性すらある」


「ドロシーは、敵の敵になった訳だから、味方ということでもあるな」


「いや、そうじゃない。魔族の敵は人族ではないよ? 魔族の軍事力を考えれば、力ずくでリバから魔の森を奪うという選択肢もあった。だけど、戦争をしないで、決闘システムを取り入れたのには訳がある。少なくとも彼らは人族との全面戦争など、望んではいない」


 そう言ったドロシー、次の言葉は少し躊躇った。


「青臭いと笑われるかもしれないけど、僕は、魔族と人族の架け橋になろうと思うんだ。両種族は、もっと、もっと、仲良くなれる、そう信じてるから」


「道のりは長いと思うし、俺たちに、手伝えることはないかもしれないが……」


「いいえ、大丈夫よ、ドロシーのことだもの、すぐに私たちが魔族の国へ行って、協力できるようにしてくれるわ」

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