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X'mas Rose〜聖夜に咲く白き薔薇は紅に染まる  作者: 里井雪


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ドラゴン

グルルルル


 ドラゴン魔獣、この世界の名では、イグニスドラゴン、その名の通り、火を吹くようだ。


「落ち着いて! 大丈夫! 私たちでやっつけちゃうから」


 召喚獣は契約を結んだ主人に危害が及びそうになると、命を賭けて反撃してくれる。だが、今、そのことは、戦う二人の邪魔になってしまうだろう。戻してしまえば、他の魔獣が寄ってきて、収拾がつかなくなる。ロゼは必死で、犬神を宥めた。


ガオオオオオ!!!


 イグニスドラゴンは、夜の森の静寂を破壊するような、威嚇の彷徨を轟かせ火を吹いた。


「インビンシブル!」


 ニールのフォービドゥン・アビリティは、一分間だけ、魔法物理、全ての攻撃を無効とする技だ。森林火災対策も考えているのだろう、ドラゴンの吐いた火は、黄金色に輝く勇者のオーラにかき消された。


グロロロロロ!!!


 必殺の火吹きを打ち消された、ドラゴンは猛り狂ってニールを襲う。だが、ドラゴンの鋭い牙も、爪も、勇者を害することなどできない。


「ドーピング!」


 魔獣が狂ったようにニールを攻め出したタイミングを見計らい、ドロシーもフォービドゥン・アビリティを発動する。


「いくよ、ニール」


「OK!!」


「サンダーボルト!!」


 ドロシーは、低く腰を落とし、ドラゴンの腹に向かって、雷属性を乗せた正拳突きを見舞った。


ドカァァァァン!!!!


 地鳴りのような雷鳴が大地を揺るがし、ドロシーの超絶パワーがドラゴンを貫く!!!


 次の瞬間、ドラゴンの腹のど真ん中には、S&W M29もかくや、.44マグナムをぶっ放したような、直径一メートル大、すり鉢状の大穴が開いていた。


ズガガガ!!!


 断末魔の悲鳴すら上げることもできずドラゴンは絶命し、周りの木々を薙ぎ倒しどうと横様に倒れた。


「ふぅ、疲れたね。この倦怠感、寝るにはいいわぁ」


「だな」


「あ、魔石拾っておきますから」


 ロゼが気を利かせて、そう言った時、既に二人は寝息を立てている。彼らにとっては、数分前にボスクラスの魔獣を倒したことなど、夜中に尿意をもよして、トイレに立った程度の話なのだろう。


 そうなのだ、彼ら二人は、冒険者仲間としての年月を過ごしている。連携のスムーズさを見れば、ドロシーとニールは固い絆で結ばれていると思い知らされてしまう。


 この気持ちは初めて感じる気持ち、嫉妬? 私は彼らに嫉妬しているのだろう。自分がどんなに望んでも行き着けない場所に二人が立っているのが分かる。


 イヤだな、なんだか、イヤだな。このイヤは、彼らの関係を嫌悪してのことなのか、嫉妬する自分に対してなのか?


 判然とせぬまま、ロゼは直径十五センチはある炎の魔石をリュックにしまった後、ヴァイスハーゼの柔らかい毛に埋もれて眠りについた。




 翌朝、今日もよく晴れた日になった。今朝方の寒さの影響だろう、溶けかけた雪が凍り、A星の朝日を受けキラキラ光るシャーベットが木々の根元に張り付いている。


「さって、朝飯を食べたら、行きますか?」


「ですね」


「僕も今夜は泊めてもらうよ」


「って、そもそも、ミシュラ・ワハームは、簡単に余所者を受け入れてくれるのでしょうか?」


「ロゼらしくもないことを言う。アンジュの推薦なら大丈夫だ、とは思わないのか?」


「こんなところにある隠れ里、どう考えても、訳ありの人の集まりでしょ? ならばって、僕は思うけどね」


「すいません。なんだか、いろいろ気になってしまって」


「それに、この二人なら、魔獣ハンターとして頼りになるから、重宝がられると思うよ」


「さて、このあたりで、降りて、あとは歩くか」


 王クラスの大召喚獣に乗って行けば、村人を無用に驚かせるかもしれない、そう考えたニールなりの配慮だ。


「そうだね。結界のすぐそばなら、魔獣はいないと思うし」


 三人は召喚獣を降り、戻した。


「ロゼ、感じる?」


「ええ、なんでしょう、押さえつけられるような、ちょっと嫌な感じ」


「この感覚が魔獣避けの結界だな」


 結界というと壁のようなものを連想するかもしれないが、ここの魔獣避けは幅一キロほどで、ドーナツ状に広がっている。魔獣が嫌う波動を村の周りに張り巡らせている、と考えればいいだろう。


 村のある方向に向かいゆっくりと歩を進める三人。


「なんだが、さっきの『嫌な感じ』がどんどん強くなるような。私、魔獣に近いの?」


「魔獣専用の結界であるには違いないが、俺たちのように、魔力の大きい者には、その圧を感じてしまうのだと思う」


「ロゼは特にね。って、大丈夫?」


 圧、確かに言われてみれば、そうだ。周りの空気がねばねばしたゼリーになったよう、思わず手でかき分ける動作をしてしまうロゼ。


「ええ、何もないはずなのに、目の前に障害物がある感じがするの」

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