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X'mas Rose〜聖夜に咲く白き薔薇は紅に染まる  作者: 里井雪


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フツノミタマ

 紅茶を進めるロゼ、地球でいえばダージリン、芳醇な香りがふわりと広がる。


「さ、どうぞ、飲みながら、今日の講評をお願いしますね」


「随分と積極的な生徒だね」


「外で体を動かす、ただそれだけで、なんだか嬉しく、心が湧き立つのです」


「なるほど。じゃ、早速、今日の動きだが、魔獣が逃げるのは予測しておくべきだった……」


 ニールはロゼの身のこなし、一挙手一投足について細かくアドバイスした。その指摘は、加護によるスピードに頼り過ぎ無駄な動きが多いこと、獲物の動きを先読みできていないこと、などだ。


「……、そんなところかな、だけど、俺から教えることは、もはや少ないと気付いたよ。それで、そうだ、この短剣、ずっと持っててくれるかな?」


 ニールはリュックの中から、先ほどロゼが使った短剣を出し、彼女に渡した。刃渡りは二十センチほど、鋭利な先端の両刃の剣で、十字架のような形をしているミセリコルデと呼ばれるタイプのもので、黒く滑らかな柄が付いてた。


「え! もらっていいの?」


「ああ、俺のサブウエポンはこちらに、あるしね」


 と言って、ニールは腰に刺した剣を指差した。こちらは、刃渡り二十五センチほどで護拳が付いたサーベルといったところだ。


「君なら、この短剣で、突くもよし、魔獣の時のように斬ってよし、コンパクトで使いやすいと思って」


「ありがとう」


 受け取ったロゼだが、さすがに剥き身の剣をベルトに挿すわけにもいかない。


「ああ、そうだ! 鞘、ホルスターがいるね。宿の向かいが武器屋だったし、買いに行くか?」


 二人は連れ立って宿を出て、向かいの武器屋、RPGでもお馴染み剣と弓が交差する看板のある、石造りの店に入った。


 店の奥の方に、口髭を生やした店主らしき男が座っている。少し背が低いか? やはり、この手の商いをする者はドワーフ族が多いようだ。


「ほぅ、珍しい、エルフのご夫婦かな?」


 ちなみに、この世界の異世界種族、交流が少ない分、争いも少ない、エルフとドワーフが犬猿の仲というのは、「ロード・オブ、なんちゃら」だけ、架空の設定だ。


「この短剣をベルトに吊るすホルスターがほしいのですが」


「うむ、ちょっと剣を見せてくれるかな?」


 剣を店主の前のテーブルに置いたロゼ、ミセリコルデを手に取り、刃先を灯りに翳した瞬間、店主の顔色が変わった。


「こ、これは!!」


 プラスチック製かと思われるくらい、滑らかで漆黒に輝いてはいるものの、なんの飾りもない細身の短剣。だが、見る者が見れば、この剣の価値が分かるらしい。


「この手触りと光り、もしや、オリハルコン鋼じゃないのか! ワシも見るのは初めてだが、お主ら、何者じゃ? ただの冒険者ではあるまい」


「あ、ああーー、いろいろ事情がありまして。そこは、どうか、深く詮索しないでください」


「ま、そうじゃろうな。こんな神器クラスの武器を持ち、エルフに変装している二人、脛に傷、じゃなかった、理由があって当然じゃろう。ま、こんな凄いものを拝ませてもらった眼福に免じて、ワシは貝になると誓うよ」


「かたじけない」「ありがとうございます」


 他種族、エルフ、ドワーフ、マーメイド、魔族などは、人族に比べ魔力が強い者が多い。この店主の願力、見破れないまでも変装の魔法を感じるセンスがあるのは、そのあたりに関係しているのだろう。


 ちなみに、こちらも、まさか見破られまいと、高を括っていたようだが、ニールがロゼに渡した短剣は、聖剣アメノハバキリと対を成すサブウエポンだ。白銀に輝く白のアメノハバキリに対し黒、フツノミタマという銘がある。


「そんじゃ、これで、どうじゃ? 錆びることもないオリハルコンじゃし、シンプルなものがよかろう」


 店主は倉庫へ行って革製でキャメル色をした鞘を持ってきた。


「いいですね! それで、お願いします」


「ちょっと待っててくれ、調整するから」


 店主は、鞘の裏にベルトに通すためのループを取り付けてくれた。ホルスタータイプの鞘は、ちょうど刀身が入る長さで、動いても短剣が抜けないよう、鍔に掛ける留め具が付いている。


「どうかな、挿してみてくれるか」


 ロゼはホルスターをベルトに通し、背中に回す、フツノミタマを挿して、一旦、留め具で止めた。背中に手を回し、留め具の外して逆手で剣を抜いてみる。そのまま、くるりと剣を回して、順手で握り直した。


「ちょ、ちょっと、お、お嬢さん」


「オリヴィアと言います」「ああ、ご挨拶が遅れました、オーシーノです」


「ワシは、ゼクス。いやいや、自己紹介など、どうでもよい! オリヴィアさんの今の動き、速すぎて、何をしたのか見えなんだ」


「あ、あははは」


「まぁ、よいよい、お主らが、トンデモナイ存在だとは、最初から分かっておるからな。ま、一生の思い出として、墓場まで持って行ってやる故、銀貨一枚置いていけ」


「安いように思いますが、いいのですか?」


「いやいや、口止め料込みで、少々、割り増ししておるよ」


「では、ありがとうございました」「ありがとう」


「魔の森にでも行くのかのぉ〜 魔獣はよい、人族に気を付けてな」


「はい」「心得ましたわ」

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