表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
X'mas Rose〜聖夜に咲く白き薔薇は紅に染まる  作者: 里井雪


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/87

アンジュの手紙

 純白となったシーツをじっと見つめていたロゼ。


「なんだか、妙な気持ち。恥ずかしいような、それでいて、満ち足りていて……」


「今まで、ロゼは幸福という感情を持ったことがないのでは? 頑張るよ! これから、君を世界一の幸せ者にしてみせるから」


 一般の男女でも初めて結ばれるというのは、特別な意味を持つだろう。彼らはそれに加え、生涯達成不能だと考え、諦めていた何かが突如、棚から落ちてきた訳だ。


 今、彼らは途轍もない高揚感に包まれている。ニールの芝居がかったクサイ台詞は、どうか勘弁してやってほしい。


「ありがとう、ニール。私たち、小さなクリーニング屋さんでも始めましょうか? あっ、そうだ、私はゴミの処分屋ができますよ」


「アハハ、それはいい!」


「確かに、こんな気持ちは初めてかもしれないわ。でも、どこか後ろめたいのは、アンジュのことが気になって、彼女……、あっそうだ」


 アンジュが持たせてくれたリュック、急いでいて、まだ中身を確認していないことに、ロゼは気付いた。


 改めて、荷物の中身をベッドの上に出す。着替え、タオル類、鏡、ブラシ、化粧道具、水筒、携行食、さらには、紅茶缶、ロゼが好きな紅茶をわざわざ詰めてくれていたようだ。


 これだけ? あっ! リュックの底には、A4半分くらいの大きさのエンベロープが見える。


 ロゼは白い封筒を開けた。そこには、小さく折り畳まれた、アンジュの生まれ故郷である、魔の森の隠れ里、ミシュラ・ワハームへの地図、転写魔法で撮ったロゼとアンジュの写真、さらには手紙が添えられていた。そこには、



〜*

 ロゼ様


 この手紙を読まれるころ、ロゼ様はニール様とどこかの宿におられるのでしょう。


 ロゼ様がオステン戦役から戻られた時から、この日が来ることは覚悟しておりましたし、準備もしておりました。あまりお荷物になってはいけないと思い、紅茶缶一つしか入れられませんでしが、どうか、お好きな紅茶、ニール様とお楽しみください。


 前にも申し上げました通り、私は幼いころから大恩を受けたロゼ様をお慕い申しております。ですので、いえ、ですから、あなた様の幸せは、私にとっても、大いなる幸福である、とお考えください。私のことを気に掛けて、ニール様との清福を躊躇うなど、本末転倒でございます。


 とはいえ、私は、あなさ様以外にお仕えする人など、この世におりません。ですので、再度、お二人のメイドとして雇い入れていただく思います。どうか、この我儘をお許しください。


 直ちにお二人の後を追い、ミシュラ・ワハームに参りたいところではありますが、私が迂闊に動いてしまえば、その跡を辿られてしまうやもしれません。ほとぼりが覚める数年間を我慢いたします故、私から音信がないことを、ご心配なされませぬように。


 写真を添えましたのは、再会した時、ロゼ様が私の顔を忘れていないように、と思ったが故でございます。


 では、しばしのお別れとなりますが、どうか、ニール様とお幸せに。 かしこ。

*〜



 手紙を読んだロゼ、アンジュの気持ち、複雑な思いは、痛いほど分かる。だが、いつか再会して三人で暮らせばいいではないか。アンジュにとって、それはベストな選択ではないにせよ、ベターな何かだろう、ロゼはそう思った。


 ただ、一つだけ引っかかることがある。何故、アンジュは写真を同封したのだろう? アンジュの顔を忘れる? あり得ぬことだ。


 この世界の写真は、かなり特別なもの、この写真も去年の誕生日に、写真屋に依頼し、高額なお金、確か金貨一枚を払って撮ってもらったものだ。貴重な一枚だから、保管しておいてくれ、ということか?

 

「アンジュ殿のお手紙に何か?」


「いえ、合流するのは、数年後になるだろうと」


「そうなんだ、随分と気を使われたんだな。だが、まだまだ、俺たちは若い。俺も三人で暮らせる日を楽しみにしているよ、ロ……」


「待って! 名前、名前よ、しばらくは、怪しまれないためにも偽名を名乗った方がいいわ、慣れておかないと」


「だな、オリヴィア」


「じゃ、オーシーノ、夕食を食べに行きましょう?」


「OK」


 二人は部屋を出て食堂に向かう。夕食時を迎え、食堂は冒険者でごった返していた。奥の方に二人向かい合わせに座れそうなテーブルが一つ、空いていたので、そこに座った、ニールとロゼ。


「イーサのもの、ソーセージばっかりと思ってない? オーシーノ」


「ああ、少し、食べ飽きたかな」


「じゃ、シュニッツェルを、あと、ロゼワインをボトルで」


 シュニッツェルとは、牛肉を薄くたたいて伸ばし、小麦粉、卵、パン粉をつけ揚げたフライのようなものだ。


 しばらくすると、ウエイトレスが熱々のシュニッツェルを運んできた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ