表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
X'mas Rose〜聖夜に咲く白き薔薇は紅に染まる  作者: 里井雪


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/87

アガーテたち

 魔力を使い切ったニールを気遣うように、ロゼは森の中をゆっくりとシャルトガルトに向かった。


「あっ! いけない! 忘れてた。これを!」


 ニールはシンプルなデザインの銀の指輪を差し出した。


「これは?」


「ああ、以前、ドルティアで街に出る時に使っただろう? 変装の指輪だよ。俺たちの見た目が指輪に設定された姿に変わるはずなのだが……」


 二人は笑顔を交わしながら左手の薬指に指輪を嵌めた。


「ああ、この指輪、アガーテが気を利かせてくれたんだけど、今回はどんな姿になるのかを聞きそびれた。困ったな、俺たちには自分がどう変わったのかが分からない」


 以前説明したように、この指輪には精神操作の魔法が掛かっているだけ、着けた当人たちの魔力が強過ぎると、自分の変身後の姿が分からず、少々不便なことになってしまう。


「それは、お楽しみということで、いいのでは?」


「まぁ、そうだな。アガーテ、ああ見えて思慮深いタイプだしな」



 ところで、この指輪をくれたアガーテたちだが……。


 ここは、リバの首都、ワルバードの冒険者ギルド。この世界の風俗、中世風というより、何から何まで地球のRPGワールドにそっくりだ。


 もしかしたら、因果関係は逆で、こちらの世界の住人が、地球人に転生して、RPGというものを創ったのかもしれないが。


 その話はさておき、冒険者という職業があることは以前にも述べたが、ギルドがあり、そのギルドは酒場も兼ねているという点もそのままだ。


 当日の狩りを終え、夕食のテーブルを囲むアガーテ、ドロシー、トーネード、メニューはコトレト・スハボヴィ、豚のカツレツだ。ビールを飲みながら、額を寄せ何やら小声で話す三人。


「そろそろ、ニール、ロゼに会えたころかな? 攫われの姫様が、納得してくれればいいのだけれど」


 と、ドロシーが口火を切った。


「どうかなぁ。でも、あのニールの様子なら、口説いてるんじゃない? トーネードは複雑かもだけど」


 チラ、とトーネードに視線を送るアガーテ、ドロシーはキョトンとしている。


「アガーテが、何を言いたいのか分からんけど、俺も二人のことは応援してるんだぜ」


「そうだよね。応援、応援だよ、僕ももちろん、そうだよ。だけどさぁ〜」


 ドロシーもトーネードも忸怩たる思いがないといえば嘘になるだろう。『大好きな人が、自分を好きにならずとも、幸せでいてくれることが、私にとっての一番の幸せ』などと『CCさ●ら』知●ちゃんのように達観はできない。


 そうはいっても、二人には、何をおいても幸せになってほしい。複雑ではあるが、自身の善意、その衷心に偽りはない、そう思っている二人。


「どうしたの? ドロシーもトーネードもボケーっとして、らしくもない。そろそろ、私たちも潮時ってことでしょ?」


 アガーテが物思いに沈む二人に現実を突きつけた。


「あの王様だからなぁ〜 勇者の行き先を吐けとか、なんとか、言ってくるってことかい?」


「それも覚悟の上で、ニールを応援したんだから、後悔はないよ。だけど、あの王、ああ見えて甘くはないと思うよ。ニールは早晩、国家反逆罪で指名手配される」


「俺たちは、共謀者、犯罪人ってことになるのかい?」


「ま、それは間違いないでしょうね。でも、国から追われる身となろうとも、ロゼへの非道許すまじ、と私は決意したつもりよ」


「アガーテってツンデレだよね。本当は三人の中で、一番、正義感が強い」


「つまらないお世辞はいいからさ。で、ドロシーは、どこへ逃げるの?」


「僕はクトゥル・アル・シュタールへ行こうと思う」


「え! 魔族の国! 彼らは一戦交えた相手だぜ?」


「僕なら大丈夫だと思うんだ。彼らとの混血だし、そもそも、魔族は強い者に敬意を示す種族だからね」


「昨日の敵は今日の友ってこと? ま、確かに、敵といっても直接殺し合ったわけでもなし」


「ま、そんなところかな」


「さすがに、私たちが同行するのは難しいわね」


「そうでもないとは思うけど……。まぁ、念には念を入れ、僕が先行して、二人が来ても大丈夫かを確認してからが、いいかもしれないね」


「俺たちはさ、ドロシーと違って、目立つ容姿じゃない、ただのモブ。そのあたりに転がってる石ころになれるはずだろ? イーサに行って紛れちゃおうぜ」


 と、アガーテを見てトーネードは言った。


「それがいいわね。じゃ、これ、変装の指輪、三人分。トーネード、私じゃ不満だと思うけれど、旅の夫婦って触れ込みで、私たちはミュルンを目指しましょう」


「え! 首都へ行くのかい!!」


「僕の経験からも、木を隠すには森、潜伏先は大都市の方がいいと思うよ」


「さすが、ドロシー分かってるわね」


「じゃ、善は急げね。今夜中に荷物をまとめて、王宮の手配が回らない内に、街を出ましょう」


 そう言った三人はギルドを出て家路を急いだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ