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X'mas Rose〜聖夜に咲く白き薔薇は紅に染まる  作者: 里井雪


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ロゼ・ダンジュ

 ロゼの恋心に気付いているのか、いないのか、ニールは生真面目な顔で答えた。


「こんな魔道具など些細なこと、お礼を言わねばならぬのは、こちらの方です」


「魔道具自体ももちろん、ありがたいですが、感謝の気持ちは、とりわけ、そのお心遣いについてです。私に代わって敵を殺し、殺人の重荷を肩代わりしていただいたこと、王に知られれば叛逆の罪に問われかねないと承知の上で、魔道具を手配いただいたこと、です」


 そう言われたニールの顔、心なしか上気してきたように見える。この間、読んだロマンス小説なら、きっと、彼は私を抱きしめキスしてくれる。


 だけど現実は砂糖菓子などではない、苦いならまだいい、私の現実は、なんの味もしない砂を食べているようなものだ。


「あなたは、私を買い被っておられます。そこまでの深謀遠慮があって、したことではありません。ただ、純粋に、あなたのことが……」


「いけません!! そのお言葉の先、決して口にされてはなりません。あなた様のお気持ちだけ、ありがたく頂戴いたします。ですから、もう、私のことはお忘れください」


 一転、ロゼは厳しい表情で、ニールの言葉を遮った。


「??」


 ニールは成り行き上、この場で告白でもしようと思っていたのだろうか。だが、ロゼの剣幕に押され、「ずっと前から好きでした」などという台詞を飲み込んでしまった。


「ロゼ殿のことを忘れることなど、できませんが、私のことを思っていただいた上での忠告、ということでしょう。ひとまず、このお話は置くことにします」


「はい」


「まだ、魔道具について詳しく説明していませんでしたね。実は私、王の前で嘘、詐欺をやってしまったのです」


 ニールはあの時、「この指輪」ではなく、「指輪(a ring)」と言ったことを解説した。


「あの時点で、叛逆行為かもしれませんね。だから、ものはついでです!」


 ニールは薬指に嵌っている、王から貰った指輪を外して、床に捨て、力任せに踏みつけた。


 パリン


 指輪が潰れるのに呼応して、ロゼのチョーカーにヒビが入る。勇者ニールは、鋭利な断裂面で、ロゼの首を傷つけぬよう慎重にチョーカーを外した。


「さて、これが代わりのfakeの品、とてもよくできているでしょ?」


 ロゼは再びチョーカーを巻き、ニールは指輪を同じ左薬指に嵌めた。ちなみに、この種のfake品、あたかも本物のような魔力を感じるのに効果がないという魔道具で、とても高度な魔法が込められている。


 聖剣など神器と呼ばれる特殊なものは別にして、一般的な魔道具なら、普通に作ってしまった方が簡単、コストもかからない。


 だから、これを使っての詐欺など存在しない。すなわち、詐欺師の世界も費用対効果、コスパが悪い模造品をわざわざ作る愚か者などいない、ということだ。


 そんな事情で「fake品が作れる」ということ自体、知る人もごく僅かだ。ニールがこのトリックに自信を持っている所以でもある。


「では、そろそろ、夕餉の準備もできていることでしょうから、行きましょうか?」


「はい」


 二人は連れ立って一階へと続く螺旋階段を降りる。見れば、祝宴の準備が整っていた。ピエロギ、ザピェカンカ、ゴウォンプカ、こちらの郷土料理に加えて、ハムやソーセージ、赤ワインのボトルが十本ほど並ぶ。


「お、主役のお二方、よいタイミングでお越しになった!」


 ウーカシュの一言に、宴席の皆から拍手が湧き起こった。まるで結婚式の新郎新婦入場のようだわ。ロゼは抑えることができぬ妄想に囚われた。真っ白なウエディングドレスの裾を引きながら、愛する人と歩けたら……。


「ささ、主賓、お二人席についてください。ああ、酔ってしまう一般人、私も含めてだが、は乾杯の一杯だけで。まだまだ、警戒は怠らぬように」


「ウーカシュさん、真面目過ぎやしませんか?」


 こういう時にツッコむのはトーネードの仕事のようだ。


「勇者パーティの方は飲んでいただいても大丈夫ですよ」


「いえ、別の意味で遠慮しておきますわ」


 アガーテ、この間の「暴言」を気にしているだろうか。


「はい! では、ひとまずの戦勝と、英雄お二人への感謝を込めて、Cheers!!」


 今回出された赤ワインは、ややピンクがかった色をしている。このあたりの名物なのだそうだ。


「ロゼ殿、このワイン、あなたの髪の色のような薔薇色、少しピンクがかった赤をしているでしょ? その名も、ロゼワインと言うのですよ」


「なるほど、こうしてグラスを透かしてみると、本当に美しい」


「おいおい、ニール、そいう歯の浮くような台詞は、嫌われるぞ」


「な、何を言っている、私はワインをだなぁ……」


「そういえば、ラベルに天使が描かれていますね」


「ええ、アンジュというブランドのようです」


 ああ、私はここで、なんだか楽しい日々を送ってしまっているけれど、イーサのアンジュ、どうしてるのかしら? 彼女は天涯孤独と聞いているけれど、休暇をとってどこかへ出掛けているのかしら?

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