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第2話

俺が学校に着いたのは、午前8時15分ごろだった。

廊下に貼り出されたクラス表を適当に確認し、俺がお世話になるクラスに入る。

見慣れた人も当然いるが、何人かは俺が知らない、というか関わったことがないのもいた。

クラスに馴染むのは、少し時間がかかるかもなーと思っていたら、一人の少女が声をかけてきた。


「――高橋大翔」


声をかけられた方を見るとそこには、銀髪ショートの小柄な少女が立っていた。

「え……?」

周りを見るが、高橋大翔という人は俺しかいなかった。

「もしかして……俺?」

「うん」

まっすぐ俺の方を見ながら少しうなづいた。

「なんで俺の名前を……」

「覚えてないんだ……」

覚えていない?どういうことだ?

俺は、まったくこの子と会ったことがない。というか見たこともない。

「……覚えてないなら、いいよ」

少女はそう静かに言って、実際の席に歩いて行った。

そのまま椅子に座ると、机から少々分厚い小説を取り出し、読み始める。

「な……なんだ一体」

あの少女って、去年のクラスにいたか?

去年のことを思い出してみるが、あの少女とは一度も会ったことがないし、見たこともない。

いやもしかしたら、ほとんど教室から出てこなかったからかもしれない。

去年の俺のクラスには、あの子はいなかった。つまり別のクラスにいたんだろう。

別の説で言うと、あんまり学校に来てなかったというのもある。

まあどういう説だろうが、俺はあの少女を見たことがない。

「おんらっ!」

「ぐふっ」

と、俺が頭を悩ませているところに、ぱちーん!と頭をひっぱたかれた。

「って、なにしやがる隼人!」

こっちの犯人はすぐに分かった。頭をさすりながら盛大に叫ぶ。

「おお、朝なのに元気だな大翔」

俺の友人である佐藤隼人は、同じクラスであったことを喜ぶより、サラサラした髪と少しばかりある筋肉を誇示するように、腕を組んで笑った。

「いや、今のお前の行動で元気なんかなくなったよ」

「おいおい、悪かったな。それはさておき、お前氷空そらちゃんとそんな関係になったのかぁ?」

「はっ?」

勇人は顔を近づけて訊いてくる。

「氷空……?誰だそれ」

「いやいや、今まで喋ってたじゃんか」

そう言いながら、窓際の席を指さす。

そこにはさっきの少女が座っていた。

俺の視線に気づいたのか、少女は小説から目を外し、俺の方に向けてきた。

「えーと……」

少し戸惑いながら、少女から目をそらす。

それに対し隼人は、馴れ馴れしくその少女に手を振った。

「……」

少女は別に反応を示さないまま、さきほど読んでいた小説に視線を戻した。

「はぁ……見たか?うちの女子の中では最高難易度なんだ」

「何の話だよ?」

「ん?お前知らないのか?」

「……そうだけど。というか、前のクラスにいたか?」

俺が言うと、隼人は少し驚いた顔をした。

「氷空ちゃんだぞ?高橋氷空。うちの高校で一番の天才。ホントに聞いたことないのか?」

「うーん……聞いたことないな。というかそんなにすごいのか?」

「ああそうだ。なにせ成績はいつも学年トップ、この前の模試なんかでは全国トップとかなんとかって言われてるし」

「はぁ……どうしてそんな人がここに?」

「知らねぇよ。家の都合とかじゃねぇの?」

いったん間をおいて、隼人が続ける。

「まあそれだけではなく、体育の成績はダントツ、それでいて美人とは……。去年の『恋人にしたい女子ランキング』とかいうモノでは第2位だったんだぜぇ?」

なんなんだそのランキングは。

というか誰が何の目的で作ったんだか。

「ということでだ。簡単に言えば、校内一の有名人ってとこかな」

「なるほどね……」

俺はそう言って、予鈴が鳴った。

「ああそうだ。座席表を確認しないと」

「そんじゃまた後でな」

俺は黒板に貼られた座席表に目を通し、窓側の席から数えて3列目にカバンを置いた。

「――大翔。まだ思い出せない?」

そこで気づく。

俺の席は、学年トップ、というか校内一の有名人である氷空の隣だった。

「え……っ?」

「ふーん、そっか。まあ、別に今すぐ思い出せって言ってるわけじゃないんだよ?ただ……」

そこで氷空は言葉を切る。

「……ううん、何でもない」

少し間が空いて、氷空は自分が言ったことを消すかのように隠した。






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