閑話 大人達の裏事情(ペペロミア)
更新できず、申し訳ありませんでしたm(。≧Д≦。)m
今回、義母上視点です。
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皆様、はじめまして。
私、ペペロミア=カッテージと申します。
このたび、カッテージ伯爵家に嫁がせていただく運びとなりました。
以後、お見知りおきを。
嫁いだその日に跡取りであるサンシュユン様がお倒れになったと聞いたときは生きた心地がいたしませんでした。
娘、ジュリアンナと共に家族になることを望んでくださったムスカリム様、家族になることを許してくださったサンシュユン様。
そして、新しい奥方として受け入れて下さったカッテージ家の家臣の皆様。
あたたかな家庭など望めないと諦めていた私にとって、光ともいえる方々との一時。
これからの希望を胸に秘めて、未来に夢をはせていたとき、
ジュリアの悲鳴。ジェームスの叫び声。
急ぎ駆けつけるとジェームスの腕のなかでぐったりとしているサンシュユン様。
「ぼっちゃん!ぼっちゃま!!」
「おにいさま!!」
二人の焦っている声が聞こえる。
青白い顔、ピクリとも動かない体。
ヒュッと喉がなる。
体が固まったまま動けなかったのは数秒なのか、数分なのか。
バタバタと階段を駆け上がる音と、ユン!!と大きな声で部屋に入ってきたムスカリム様の姿で、ハッと我に返る。
体を揺さぶろうとするムスカリム様をみて
「揺すってはいけません!!」
大きな声で静止した。
ビクリと手を止め、わたしの方を見るムスカリム様。
「揺すってはいけません。
もし、体を動かしたことによって何かしらの症状が悪化してしまう可能性もあります。
症状がわからないいじょう、先生が来てくださるまでそのまま動かさないでおくのが最善です。」
そう言いながらサンシュユン様の近くにいく。
「失礼します。」
サンシュユン様の近くにしゃがみこんで、そっと首に手を当てる。
素人では手首の脈を正確には測れないので、首の頚動脈を探る。
頚動脈なら首に手をおけば、どこかしらに脈を感じられるはずだから。
首から伝わる体温は、高すぎず低すぎず、平均的な体温な気がする。
手にあたる脈拍、弱くない。
呼吸、安定している。
苦しそうではないわよね?
それだけでもホッとする。
いつまでもジェームスに抱かせているわけにもいかないので、体を冷やさないように床にタオルケットを敷いてもらい、サンシュユン様を横にさせる。
あとは、動かさずにお医者様を待つしかないわ。
ほどなくしてお医者様(カラン先生とおっしゃるのね)が到着され、床に横になっているサンシュユン様をみつけると、すぐさま近くにより診察を開始する。
よかったわ。
これで、もう、大丈夫。
強ばっていた肩の力が抜け、ホッと息をつく。
ムスカリム様と一緒にサンシュユン様の近くを離れようとしなかったジュリアを、カラン先生の邪魔になってしまうからと離し、少し離れたところで一緒に見守った。
最後に脈を測ると頷き、
「眠ってますね。」
??え?
「眠って?」
「ええ。眠ってます。
たぶん、倒れたのは気絶によってだと思われますが。
さきほどうかがったように、ジェームス殿がとっさに倒れるのを受け止めてくださったおかげで、頭も体も打ち付けていないですし、熱も出ていません。
脈拍も正常ですし、呼吸も落ち着いております。
それに、よーく聞いてください。」
そう言うと、口に人差し指をあて、皆を黙らせる。
スーッスーッ
…ん?
スーッスーッ
「ね?寝息が聞こえるでしょ。
ですので、今の段階では大丈夫です。
ただし、容体が急変する可能性もあるので、目が覚めるまでは気を抜かないように。」
その言葉に少し気が抜けたのか、ムスカリム様はその場に腰を下ろした。
「よかった。本当に…よかった。
カラン先生、ありがとうございます。」
ムスカリム様がそう言うと、うんうんと頷き、
「動かしても大丈夫なので、サンシュユン様をベッドで寝かせてあげてください。
いつまでも床にいては冷えてしまいますからね。
それと、サンシュユン様を動かさずに指示を待っていたのは正解です。
名前の呼び掛けなどはやっていただいた方がいいですが、強く揺するなどの行為は症状の悪化を招く恐れがあるので、気を失うなどの症状の場合やらないように。
まぁ、でも、今のところは大丈夫でしょう。
静かに寝かせてあげてください。」
では、これで。と帰っていくカラン先生を見送りに玄関ホールまで着いていく。
家は屋敷の側だから見送りはけっこうですよと言われ、素直に礼をいった。
「あぁ、そうそう。
できれば、御当主様についていてください。」
「え?」
「誰かが側にいないと不安になる日は誰にでもありますので。」
ではこれで。と、スッと礼をされ出ていかれた。
カラン先生の言葉を考えながら部屋に戻ろうとすると、隣の部屋から声が聞こえた。
覗いてみるとジュリアとジェームスが話をしている。
ジェームスは膝をおりジュリアの目線まで屈んで、話しをしてくれていた。
家臣の態度はその家の品格を現していると言われているので、本当に素晴らしいわ。
ムスカリム様は…。
ベッドの近くで椅子に座っていた。
ムスカリム様に近づくと、視線をこちらに向けてくださったがまたすぐにベッドの方に向きなおした。
ベッドを覗くと、サンシュユン様がすやすやと寝息をたてながら眠っていた。
こちらの部屋に連れてきたということは、この部屋がサンシュユン様の部屋なのね。
ジュリアの部屋の隣だということに改めてサンシュユン様の優しさを感じる。
もしも、ジュリアに何かあったときにすぐに対処できるように、わざと隣の部屋にしてくれたのだろう。
今だ目を覚まさぬサンシュユン様に心が痛む。
動かぬムスカリム様に声をかけようとすると、
「いーやー!ぜったいに、おにいさまといっしょにいるの!!」
「ですが、今ぼっちゃまはお眠りになっておりますので。」
「しってるわ!
だから、わたしがいっしょにいておにいさまがおきたらみんなにおしえるっていってるでしょ!」
「ですが、いつ起きられるかもわかりませんし…。」
「だから、いまなんのおやくそくもないわたしがいっしょにいるっていってるの!」
「ですが…」
「みんなおしごとがあるでしょ!
わたしもあるわ!
おにいさまといっしょにいるのが、わたしのきょうのおやくそくでおしごとだったのよ!
だから、そのおしごとをするだけなのよ!
おかあさまがいつもいってるわ。
こどもはおべんきょうをすることがおしごとだって。
でも、たくさんあそぶこともだいじなおしごとだって。
わたしのきょうのおしごとは、おにいさまとたくさんおはなしして、たくさんあそぶことだったの!
だから、おにいさまといっしょいることやねることがわたしのおしごとなの!」
…こんな我儘を言うジュリアは初めてだわ。
この数十分でジュリアの心をここまでつかんでしまったの?
サンシュユン様おそるべし。
じゃなくて、
ジュリアの大声でも起きないサンシュユン様をみつめ、我儘を言わないように注意しようとジュリアに向き直ると、
キュルキュクー
……?
何の音かしら?
キョロキョロと見回すと、ジュリアが顔を真っ赤にして俯いていた。
「まぁ。」
ジュリアのお腹の音だったのね。
ジュリアに近付き、ジュリアの顔を隠すようにして抱っこする。
幼くったって女の子だもの。
お腹の音は恥ずかしいわ。
「ムスカリム様。
よろしければ、食堂へ行って少し食べ物をいただいてもよろしいでしょうか?」
ムスカリム様をみると、ゆるゆると首をふり
「いや、私も一緒に行こう。
そして、皆で食事にしよう。
腹が減っていては冷静な感情ではいられないし、うまく頭も動かせまいよ。」
そう言うと、ゆっくりとだが腰を上げた。
□□□□
食事を終えるとジュリアは一目散にサンシュユン様のお部屋に駆けていった。
…本当にレディ教育は徹底的におこなわなければ、大変なお転婆娘になってしまうかもしれません。
チラリと給仕役を務めてくれているオリーブをみると、ニコリと笑われ頷かれたので私も頷き返した。
これでジュリアのレディ教育は大丈夫でしょう。
ムスカリム様は、少しだけ一人になりたいと一人でサロンに向かわれた。
ジェームスや他のメイド達は仕事に戻ると言うし…。
私はどうしましょう。
請われた仕事をするわけにもいきませんし。
悩んでいるとスッと紅茶が出てきた。
「温かな飲み物は、心を休めますよ。」
オリーブの言葉がスッと入ってくる。
「そうよね。
私自身が落ち着かなければ皆にも影響がでるものね。」
「さようでございます。」
紅茶を一口飲んで、深く息を吐く。
これは、私だけでなく、ムスカリム様も同じよね。
それなら、
「オリーブ、お願いがあるの。」
「はい。なんなりと。」
□□□□
コンコンコンとサロンのドアをノックする。
中にいる人、ムスカリム様に入室の許可をとる。
後ろからついてきたオリーブが紅茶の用意をして、部屋を退出していった。
「温かいうちにどうぞ。
一息つけますよ。」
「あぁ、ありがとう。」
ムスカリム様がそっと一口飲む。
私も一口。
ほんのりレモンの香りがする。
レモンバームの紅茶は、ハーブティーの中でも初心者に受け入れられやすい飲みやすさがある。
鎮静作用や心身ともに疲れてしまった場合のリラックス効果がある紅茶。
たぶん、ムスカリム様にも気に入ってもらえると思って選んだのだけれどどうかしら?
もう一口紅茶を飲むムスカリム様。
カチャリとカップを置くと、はぁーっと長く大きなため息をはいた。
「…君には情けないところしか見せていないなぁ。」
ははは、と、自嘲気味に、でも、いつものムスカリム様のように軟らかな表情で笑いかけられた。
□□□□
「少しでも落ち着いてくださってよかったです。」
自身の膝の上に置いていたムスカリム様の手の上に自分の手を重ねて、キュッと握る。
「エリカの時も思ったが、私は本当に無力だな。」
「前奥様のエリカ様でしょうか?」
「そう。エリカもいきなりだったんだ。
なんの前ぶれもなく、いきなり倒れて。
私はその時遠くで仕事をしていてね…。
連絡がきて、急いで帰ってきたときにはもう…。」
「ムスカリム様。」
「それでも、最後の言葉は聞けたんだよ?
ユンをよろしく。と、この領土を頼む。と、そして、幸せになって。と。」
「……。」
「約束は守れてるか分からないけど、エリカが気にしていたこの領土は、ミア、君が支えてくれるだろうと思ってるし、ミアを妻に迎えて私も幸せになろうとしている。
まぁ、ユンに関しては父親として出きることはやるけれど、あの子のやりたいように好きなことをやらせてみようと思ってたところなんだ。」
「私にできることなら、何でもいたします。」
「ははは。そのセリフも二度目だ。」
「ふふ。ええ、そうですね。」
ふぅっとため息を吐かれると、ムスカリム様はポツリポツリと私達の出会いを確認するかのように話し始めた。
読んでいただきありがとうございます!!!
ムスカリム視点に続きます。
あと、仕事が忙しすぎて更新おそくなります。
暑すぎるんだよ!ばかぁー・゜・(つД`)・゜・ウワーン
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