6話 おはよう
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目を開ければ、見慣れた天井、見慣れた部屋。
体を起こして周りを見渡しても、変わらない風景。
いや、違うな。一つだけ変わったところがある。
自分の隣でピタリとくっついて寝ている、乙女ゲームのヒロイン、ジュリアンナ。
彼女の存在に笑みをみせながら優しくゆすり起こす。
「おはよう。ジュリア。ほら、起きて。」
ゆさゆさと体をゆすっていたら、んーっと言いながら薄く目を開けた。
「おはよう。ジュリア。」
目と目を合わせて、もう一度挨拶をする。
とたんにガバッと起き上がったジュリアは大きな目を更に大きく見開き
「おっ、」
「お?」
「おにいさまーーーーー!!!」
大型犬が飛びついてきたかのごとく、俺に抱きついてきた。
危ない!ほんとうに危ない!!
ベッドの上で良かった!
このまま頭ゴーンの地面でお昼寝タイム再開とか洒落にならない!
ジュリアに泣かれながらベッドの上で抱きつかれていると、泣き声に反応したのか、大人達が部屋に入ってきた。
「ぼっちゃま目覚めたのですか!」
違った。どうやら、俺が目を覚ましたから入ってきたみたいだ。
すぐに医者を、それと旦那様と奥様にも連絡を。
テキパキとしたジェームスの指示にしたがって使用人達が散っていった。
「えーっと、とりあえず、ジェームス。」
「はい、ぼっちゃま。どこか痛いところがございますか?それともきぶんが悪いところでも?」
「起こして。」
俺、ずっとジュリアにマウントとられっぱなしです。
首しか動きませんよ!!
ジェームスがジュリアを引き剥がそうとしても剥がれないので(むしろ首がしまって苦しい)しょうがないので、ジュリアごと起こされた。
いつまでも泣き止まないジュリアの背中をポンポンとあやしてあげていると、廊下から足音が聞こえてきた。
「ユン!!」
大きな音を立てて入ってきたのは、父上、義母上、ちょっと後にカラン先生だ。
わざわざカラン先生まで呼んでいたのにはビックリした。
あれ?!大事になってないか!?
「ユン!無事か!大丈夫か?!どこか痛いところは?!気持ち悪いとかはないか?!」
矢継ぎ早に質問してくる父上は少し涙声で、大の大人が何を泣いているんだと思ったが、
「お前まで、エリカと同じになってしまうかと思ったら、気が気じゃなかったよ…。」
前言撤回します。俺が悪かったです。ごめんなさい。
やっちゃったなー。
義母上をチラッと見ても泣いてるし、
ジェームスをチラッとみても泣いてるし、
…って、ジェームスまで泣いてるの!?
あれ?もしかして思ってる以上に深刻な状況だった??
…うん。甘んじて今の状況を受け入れます。
とりあえず、皆が落ち着くまでジュリアをなだめることにした。
□□□□□
すぐに落ち着いたジェームスがジュリアを剥がし、カラン先生が俺の診断をする。
頭痛なーし。
吐き気なーし。
発熱なーし。
脈拍せいじょー。
その他もろもろ以上なーし。
……だろうね!
起き抜けに、俺、ジェームスに指示出してるし。
具合が悪くなるどころか、前世の記憶が蘇ってくれて、かえって頭スッキリ!
グルグル思考に陥らなくなったから最高だね!!
まぁ、診断結果異常無しのお墨付きをもらえたから、よかったよかった。
今日は大事をとって一日安静に過ごすようにって言われました。
全然平気なんだけどね。
でも、倒れたのが昨日の昼前で、起きたのが次の日(今日だね)の朝方だったんだから慎重になるのも当たり前か。
ほぼ丸々一日眠りっぱなしみたいなもんだもんな。
むしろ、一日安静だけってありがたいよね。うんうん。
カラン先生には、あらためてお礼をしなきゃな。
俺がこんな状況なので、義母上とジュリアの歓迎会は後日仕切り直しで行うみたいだし。
アルストロ達が一生懸命用意してくれたのに悪いことしたな。
後で謝っておこう。
あとは……
うん。あとは、このゲームの知識を活かしてジュリアを幸せにするだけだ。
この先の展開は全部覚えているし。
ジュリアの補佐をできるだけやっていこう。
でもまぁ、その前に先立つものがなかったら何にもできないので、まずは金銭集めからだな。うん。
俺は義母上の仕事を、ゲームのシナリオよりもはやめに手伝おうと誓った。
読んでいただきありがとうございます!!!
1章はこの話で終了です。閑話をはさんで2章にはいりますので、引き続きよろしくお願いいたします。
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