41話 一口カツ
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今日、二話目でーす。
ディーダ司祭は、「アレを泊めるの結局うちの教会なんですよね……。めんどくさい。」そう愚痴を言いながら帰っていった。
あんな感じでも仕事はきっちりするんだろうな。
それはさておき。
「父上、明日、出立するのですか?」
「護衛依頼を受けたからね。そのつもりだよ。
まぁ、そろそろ仕事に戻らねばならなかったから、踏ん切りのつくいいきっかけだよ。
…家族と離れて仕事をするのは、なれているとはいえ、やっぱり寂しいからね。」
「父上……。」
「お父様……。」
少ししんみりしていると
パンッ
と音が響いた。
顔を向けると義母上が微笑み、
「では、旦那様には無事に出立してもらうためにも鋭気をやしなってもらいましょう。
ユン、よろしくね。」
無茶振りがとんできた!!
□□□□
いや、かまわない。
かまわないのだが、鋭気をやしなうってことはつまり……
なんだ?
力が出るものってことでいいのかな?
力?力……肉?えっ、肉料理でいいってこと??
わからん!!
「かしこまりました!行ってまいります!」なんて敬礼して部屋からでてはみたが、どうしたものか。
……とりあえず、厨房に行ってみよう。
□□□□
「アルストローー。」
「あぁ、ぼっちゃん、プリンならちゃんと冷えてますよ。」
「……あっ、忘れてた。」
まぁ、それはデザートでいいか。うん。
「ごめん、アルストロ。プリンは食後のデザートにまわすよ。
俺、義母上からの指令で、父上を元気に送り出すための肉料理を作りに来たんだ。」
「肉料理ですか?」
「うん。もう夕食の準備はすんじゃった?」
「まぁ、だいたいは。
でも、下ごしらえなんで明日にまわしてもかまいませんよ。」
「本当に?ありがとう!」
「奥様の指令を無視するわけにはいきませんしね。」
「ははっ。たしかに!
でもありがとう!」
その言葉に、アルストロは照れくさそうに笑った。
□□□□
「で、なんの料理を作るのですか?」
「トンカツにしてみようかなって。」
そう、トンカツ。
日本人が縁起をかつぐのにはもってこいの食べ物、トンカツ!
まぁ、今俺は日本人ではないんだけどね。
おいといて。
「……トンカツ。」
「えーっと、豚肉の衣揚げってかんじかな。」
「あー……なるほど、なんとなくはわかりました。」
よかった。なんとなくだけど理解してもらえた。
理解ができたところで、作ってみよー!
「まず、一番重要な材料なんだけど、豚肉ってある?」
「豚肉はないです。」
ないの?!
「ただ、豚肉の類似ならありますよ。」
「類似?」
「えーっと、今あるのは、ビッグボアと角猪ですかね。
ビッグボアは脂がのった豚肉ですね。
角猪は赤身が多いです。」
これは好みの問題だなぁ。
……両方作るか。
「よし!両方作ろう。
大きさは食べやすいように小さめにして、あとは自分で好みのものを選んでもらおう。」
一口カツってやつだね。
そうと決まれば、さっそく作っていこう!
□□□□
「まず、手のひらにのるくらいの大きさに切り分けていきます。」
今回もアルストロに切るのをお願いする。
「使う箇所はどこにしますか?」
「ヒレでいいんじゃないかな?」
あまり量はとれない箇所だけど、ビッグボアは大きいし、角猪は数も多い。
量的には十分だろう。
「かなりの数、切り分けちゃっていいよ。」
余ったらあまったで、他の料理にも使えるし。
「切り分けたら肉の表面を叩いていきまーす。
肉叩きでも包丁でも、どっちでもやりやすいほうでいいよ。」
道具があるならどんどん使ってこう!
簡単にできるほうがいいしね。
「叩き終わったら、塩コショウをして下味をつける。
下味つけたらひっくり返して、また肉を叩いて塩コショウ。」
この量を叩いていくのは大変だ……。
うん。みんなに頑張ってもらおう。
「下味をつけたら、一つ一つもとの大きさに戻してね。
叩いて伸びたのを、こう、ギュッとして、塊にもどしてね。」
薄いのもおいしいけど、今回はカツとして食べてもらいたいからね。
「できあがったら、小麦粉、卵、パン粉の順につけてってね。」
「ユン様、パン粉ってなんですか?」
「!?」
えっ!?パン粉ないの!?この世界!?うそでしょ!?
「パンを細かく砕いたものだけど……。
えっ、知らない?」
「知りませんでした。
あいかわらず、その知識はどこで仕入れてくるのですか?」
前世です。
とは言えないよね~。
まぁ、それはおいておこう。
えぇっと、たしかパン粉の作り方は。
「残ったパンで、いらないやつある?」
「あぁ、はい。ありますよ。」
そう言うと、アルストロは調理台のすみにおいてあるパンを持ってきた。
「けっこう残るんだね。」
「足りなくならないように、多めに焼きますからね。
余っても使用人の腹に入るので。」
「なるほど。じゃぁ、わるいんだけど、このパンを卸金ですりおろしてくれる?」
「すりおろすんですか?」
「うん。粗めでいいから。」
「はい。わかりました。」
パン粉を作ってもらっているうちに、バットに溶き卵と小麦粉を一種類づつ入れて用意しておく。
「パン粉ができました。」
「ありがとうアルストロ。」
パン粉も用意しておいたバットに移しかえて。
「よーし!どんどん作ってこー!!」
小麦粉をつけて、卵をつけて、パン粉は被せるようにして、軽めに押さえる。
「はい。たねの出来上がり。」
適当な数をとりあえず作って、残りはみんなにやってもらおう。
さぁて、揚げていきますか!!
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