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2話 美しい笑顔

 サロンに着くとジェームスがドアを開けてくれた。

 

 中には知らない女性が2人と先に来ていた父上が座っていた。


「遅くなり、もうしわけありません。」


 とりあえず謝っておこう。


 父上が大丈夫だと言い手招きしてきた。

 近くに行くと自分の隣を叩く。


 座れってことかな?


 俺がソファーに座ったのを見ててから父上が彼女達に話しかけた。


「この子が話していた息子のサンシュユンだ。

とても優しく、亡き妻に似て頭がいい子でね。私にはもったいないくらいの息子だよ。

2人とも、きっといい家族になれると思う。よろしくたのむよ。」


「こちらこそ、よろしくお願いいたしますサンシュユン様。」


 凛とした表情の女性が頭を下げた。


 えっ!?ちょっ、だめだろ、これから家族になるって人が息子に頭を下げちゃ!


 俺があたふたしているのに気付いてない父上が少し困ったように彼女達にも事情があってね。と話し出した。


「じじょう…ですか?」


「そう、事情」


 父上いわく、彼女は未婚で子を生んだらしい。

それには隣国の貴族がかかわってるみたいで、きちんと籍を入れる事ができなかったみたいだ。


 そんなことってありえるの!?って思ったからきいてみたら、花嫁修行のために奉公に行っていたお屋敷で既婚者のお手つきになってしまったらしく、妊娠がわかったとたんにポイッと…。


 ちょっと俺、怒り心頭。


眉間にシワをよせて、たぶん般若の面状態だと思う。

母上になる人が、ビックリした表情してるし。


ジェームスからそっと出されたジュースをごくごく飲んで、少し落ち着く。


 ねっ、優しいでしょ?とか、父上そんな同意は今いらないから。

あぁ、でも、あの低姿勢はそういうことか…。


 父上に話の続きを促すと、実家に戻された義母上こと、ペペロミア様…今初めて名前を知ったな。は、家族と揉めまくったらしく、今、冷戦状態。

 3年間頑張ってきたけど、心身共に疲れきってたところに父上と出会ったらしい。

 父上も母上を亡くして、落ち込んでいるところだったから、2人して意気投合。

 そのまま、あれよあれよという間に結婚の話になって今にいたると…。


 うん。いや、ダメだろ!


 父上我が家の状況言った!?

 今の状態を知ってて結婚なんてしないだろ普通!


「ペペロミア様。たんとうちょくにゅうに言います。

この結婚なかったことにした方がいいと思います。」


「え?」


あっ、顔面蒼白…。いや、でもここは心を鬼にして!

ペペロミア様のためでもあるし!!

なんか父上も青くなってるけど気にしない!!


「はっきり言います。

我が家には今、お金がないんです。

借金こそギリギリしなくてすんでいますが、それも時間の問題なんです。

ずっと、亡くなった母上がこの家の経済を支えてきました。

父上は、ハッキリ言ってそういうことに関しては絶望的にむいていません。」


ペペロミア様がポカーンとしている。

父上は若干涙目だ。

ジェームスは、ご立派になられましたとか言ってる場合じゃないからね!

我が家の没落まっしぐらな状態にこんな美人を巻き込んだらダメだろ!!

娘だって絶対美人になるぞ!今だってこんなに可愛いんだから!将来超有望!!

それなのに、実家が没落貴族とかシャレにならないし、婚期絶対遅れる。

下手したら足元みられてヤバい奴に嫁ぐことになるとか、ダメ!絶対!!


「そんなわけで、没落寸前貴族に貴女みたいな美人が嫁いでくるなんて絶対に反対です!

お金持ってて、子供も一緒にどうぞなんて人、ペペロミア様ほどの美人ならいくらでもいると思います!

ていうか、ペペロミア様なら引く手数多でしょうに!」


ちょっと力説しすぎてゼエゼエ言ってる。

そっとお水を置いてくれるジェームス、グッジョブ!!


「父上は確かに顔と口はすこぶるいいですが、それだけです。」


「サンシュユン…」


「それだけです。」


駄目押しにもう一度言ったよ!

だって、本当のことだし。


さて、ペペロミア様はどうで…る?って、あれ?


ペペロミア様は、さっきまでの凛とした姿でも、顔面蒼白でも、ポカンと口を開けた姿でもなく、鈴の鳴るような声でコロコロと笑っていた。





数刻でいろいろなお顔をみせてくれる人なんですね。可愛いなぁ。


じゃなくて!


「ペペロミア様?」


「ふふ。あぁ、ごめんなさい。サンシュユン様。

まさか、そんな事を気にかけて下さっていたなんて。」


「そんなこと?」


え?俺、けっこう重大な事を言ったよね?

没落寸前ですよ!って、けっこう重大な事だと思うんですけど…。


「ふふっ。そんな顔なさらないで?

私、それも承知でこちらに嫁ぐことにいたしましたのよ?」


……ビックリしすぎて、今の俺はさっきのペペロミア様みたいにポカン顔。

ただ、おれはきっと美人とかではなく、ザ・普通ってやつだろうけど!

ペペロミア様みたいな美人ならポカン顔も絵になるんだろうけどね。


いつまでも間の抜けた顔を晒してはいけない。


はっ、と気付いて顔を引き締め直す。


「えっと、それはどういう意味で?」


俺が聞くと、ニッコリ笑顔のペペロミア様。

だけど、先程までの可愛らしいお顔ではなく、何か"裏"がありそうな美しい笑顔。


おや、これは意外と…。


「この結婚は、契約結婚ですから。」


そう言いきったペペロミア様は、とても美しい笑みをうかべていた。

せんよー。です。2話目です。


更新遅いと思いますが、よろしくお願いします。

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