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ギフトの正体

 門まで来ると騒ぎの原因はすぐに分かった。


 大きな荷台に竜が載せられており、皆、驚きを隠せないようでざわざわとしている。


「おいおい、あいつ昨日も竜を狩ってなかったか?」


「なんでも異世界からの戦士らしい。それであの手に持った斧がすげえらしいぜ」


 荷台の先を歩く戦士に注目し見てみると、光り輝く巨大な斧を持っていた。


「戦士って奴はすげえんだな。みんな何かしらのとんでもねぇ才能やアイテムを持っていやがる」


「そりゃあ、神々に選ばれし者たちだからな。見た目は甘っちょろい奴らだが」


 人混みの会話を一通り聞いた後、その場を離れた。


「私のギフトの正体って何ですか?」


 ブレスレットをまじまじと見つめながら女神様に尋ねる。


「はい。伝説鎧~七英雄バージョン~です」


「……なんだか俗っぽい名前ですね」


 もっと、こう……厨二のハートを刺激するような名称は無かったものか!


「元々は七英雄の方々のために創られた鎧なんですが、それをミツオさんに授けました」


「へ~、すごそうですね」


「もっと喜んでくださいよ! この鎧は七英雄の命を守り続けたすごい鎧なんです! ミツオさんはその七つの鎧を授かったのですよ!」


「鎧が七つあってもなぁ。予備とかにしかならないのでは?」


「それだけじゃ無いんですよ!? なんとこの鎧には七英雄の力がそれぞれ宿っていて、鎧を装着している間にその能力を使うことができるんですよ!」


「じゃあ、7つの能力が使えるっていうことですか? え、チートじゃないですか、それ?」


 女神様のテンションが上がる理由が、ようやくわかってきた。


 七人の英雄の能力となれば、きっと強いこと間違いなし!


 異世界でチートを使って世界を救うなんて、まさに王道そのものじゃないか!


「そうでしょ! そうでしょ! 1回で壊れるのを差し引いても、破格の性能ですから! チート過ぎて、事前に全能神様に確認を取ったぐらいです!」


 ん?


「今なんて?」


「チート級の性能だけど、全能神様には確認済みだから、使っても問題ないって……」


「いや、1回で壊れるって言いませんでした?」


「え、ええ。でもそれほどの力を――」


「だめじゃん! 1回で壊れる鎧なんて、鎧じゃないじゃないですか!」


「うう。で、でもワタシの持つ鎧の中でも、最高のものをミツオさんにあげたのに……」


「泣かないでくださいよ……他のギフトは無いんですか? もっとまともな鎧とか?」


「い、いえ。堅くて耐久のある鎧なら有りますが、これほどの魔力がこもった鎧となると、他にはありません」


「うーん……」


 悩みどころだ。普通の鎧をもらってもどうにもならない。だって私は元々、単なるサラリーマンだもの。


「じゃあアイテムとかじゃなくて、才能をもらうとかできないですか?」


「で、できますよ! 鎧の才能!」


「鎧の才能? 鎧を着たらパワーアップするということですか?」


「い、いえ。鎧って着ると動きづらくなりますよね。鎧の才能はそれを軽減してくれます」


「……」


「どんな重い鎧でもある程度は動けるスグレものですよ!」


 いや地味。すごい地味。


 きっと役に立つ能力なんだろうけど、その能力だけ持って異世界で生きろと言われたら絶対にヤダ。


「いや、もっと鎧を生み出したりするとかないんですか?」


「それは厳密には鍛冶の神様の管轄なので、ワタシはちょっと……」


「分かりました。じゃあ今のままで大丈夫です。……しばらく一人にしてもらっても良いですか?」


「……はい」


 女神様との通信が切れる。



 7回しか使えない鎧を使って世界を救えだって?


 無理に決まってる!


 幸田ミツオ32歳。いつもこんな展開ばっかりだ。


 輝きに満ちた生活などは、ほど遠いものだ。



 その後、ギルドに戻り、とりあえず危険のなさそうなクエストを受けることにした。


「この薬草を摘むクエストをお願いします」


「良いんですか? これはFランクの依頼ですよ? 他の戦士の方々は……」


「ええ、これで結構です。身の程はわきまえているので……」


「そうですか。わかりました。それじゃあ、よろしくおねがいしま~す」


 薬草の特徴はすでに道具屋で見たからなんとかなるだろう。


「すみません、ミツオさん。地道な生活になってしまって」


「いえ、それが性に合ってますんで……」


 高望みをした私の方が悪いのだ。


 地道に薬草を摘むのが自分には合っている。


 世界を救うのは他の人たちに任せ、自分は困らない程度に生活するのがふさわしいだろう。


 私は地道に生きていこう。


 その方が後悔しないだろうから。

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