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アメジストは夕暮れに神秘に煌めく  作者: 十六夜
第2章 森の民
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第4話 第三騎士団式、不測の事態での鉄則

 気が付くと、白と黒が混ざった場所に立っていた。周りには何も無く、俺だけが存在して何処までも白黒白黒。


 白黒白黒白黒

 白黒白黒白黒白黒

 白黒白黒白黒白黒白黒白黒──────。


 いや、違う。


 目の前に、俺以外の存在が佇んでいた。

 見かけだけは、生まれてこの方、朝に夕に見飽きてきた姿を容取っている。


 それは”俺”だった。


 自分が自分を見詰めている。

 それは声もなく、けれども確かに、話していた。


 初めは理解出来ぬ言葉で。

 それは次第に、理解出来る言葉へと変化する。


【太陽が死に絶え、光が闇に呑まれる】


 こいつに会うのは初めてじゃない。

 いつからか、俺の夢に出てくるようになったこいつは、起きた瞬間に存在を忘れ、夢を見る度に思い出す。そんな存在だ。


 ただの夢とも思わなくなった。

 それは───。


【遺る光を絶やす、かつては光と共にありし者】


 得体の知れない空気が一瞬にして殺気にかわり、俺に覆い被さった。


 何百回、何千回目ともなると、不意打ちにも慣れる。

 何も無い場所から出てきた黒い刃が目前に迫るのを躱して、お返しとばかりに斬撃を返す。

 斬り込んでくる奴の拳は鋭く、こっちの打撃に少しも怯んだ様子は無いが、これもいつもの事だ。


 しかし、勝負はいつも終わりが来る。


【……】

「……」


 何回目かの打撃を受け貯めては繰り出すを繰り返していた時、奴の頭に確かな一撃を叩き込んだ。

 すると、ザラっとした砂のように影が崩れ、奴の動きが止まる。

 崩れきった影の砂を見下ろして、俺は詰めていた息を吐き出した。


 負けたことはないとはいえ、圧勝できるわけじゃない。少しずつだが、徐々に勝てるまでの時間が長くなっているのを感じる。俺が弱くなっているのか、奴が強くなっているのかは、分からないが。


 とは言え、何故かこいつは一度の夢につき一回しか勝負をしない。どういう事かと言うと。


 例えば、先程のように頭を潰すなど、生き物でいう所の死───こいつにそんな概念があるかは知らないが───、それを迎えると砂になる。ただ、暫くするとまたもとの形に戻るのだが、その後は殺しに来ないという事だ。

 何故かは知らない。けど、そういうものだと割り切ることにしている。


「本当に、何なんだよお前は」


 うんざりした口調で奴に問いかけた。答えが返ってくるなど期待もしていなかったが、今日はいつもとは何かが違った。


【もう間もなく】

「……は?」


 驚く俺の前で、"俺"が無表情に言葉を紡いでいく。


【"純潔なる無垢"の子が、お前の前に姿を現す】

「誰が、何だって?」


 俺が聞き返すも、まるで聞こえていないかのように"俺"は喋り続けた。


【大地の力を宿し時、再び相見えん】


 それだけ言うと、"俺"はスっと消え去っていた。同時に、意識がどんどん歪んでいく。


 ………

 ……

 …


「キール? 大丈夫か?」

「……ああ、ケビン」


 目を開けると、薄暗い中でケビンの心配するような顔が見えた。傍にはムースもいる。

 ゆっくり上体を起こすと、見知らぬ場所の床に寝転がっていたことが分かった。


 ああっと、なんだっけ?

 こんなに頭が痛むのは、尋常でない理由があるはずなんだけ、ど。


「ああクソ、思い出した! あん野郎ッ、服が汚れたっ!」

「気にするところはそこなのか?」

「慌てたって仕方ないだろ。みんな無事なのか……あれ?」


 なんか、煩いのがいない気がするんだが。

 服の汚れを払いながら悪態をつく俺に、ムースが答えてくれた。


「憶えているか。私達は宿を出た所で襲われただろう」

「うん。なんか、物凄くビリビリしたよな。もしかして、魔法か?」


 記憶からぼんやりと当たりを付けると、ムースは神妙な顔で頷く。


「知ってたのか。その通りだ。恐らく、雷撃系の拘束魔法だと思う。カイル様が居られたらば詳しく分かると思うんだが……」


 そういえば、カイルは攻撃魔法も使えたな……なんて納得しかけたが、ちょっと待ってもらいたい。

 カイルがここに居たら、俺たちのこの体たらくを見てどう思うだろう?

 思わずふるりと震えが走った。


「うわ、ムース。カイルがいたら、こんなヘマしてってそれこそ雷落とされるだろ。怖い事言うなよ…」

「その通り、雷……うん?」


 ムースがキョトンとした顔で聞き返す中、相好を崩したケビンが笑った。


「ふっ、くくっ。キールは落ち着いてるな? 普通、今いないカイル様にどやされることより、こんな地下牢に閉じ込められてることを怖がるものなんだぞ」

「怒ってるカイルの恐ろしさに勝るものなんかない」

「……」

「あっはっは」


 カイルの落とす雷を思い出して身震いする俺に、ムースが物凄く物言いたげな顔をして黙り込んでしまう。しかし、その横でケビンが耐えきれないと言うように、膝を叩きながら爆笑しだした。


 だって、そうだろう?


 ダンケがやらかしたりハインリッヒがサボったりする度に、酷くニコニコ顔のカイルが追いかけて来て、隠れている二人をあっという間に見つけてしまう。

 まるで、最初からそこに居るのを知っていたかのように、確実にだ。


 そして、魔法の縄でぐるぐる巻きに拘束して、有無も言わさずズルズル引き摺って行くのだ。その後聞こえてくる団長執務室からの悲惨な声には、団員揃って身震いしたものである。



 団員達がうっかりふざけて、紅茶を飲んでいるカイルにぶつかった時。しかもそれがカイルの滲み一つない綺麗な団服に溢れた時。


 あれも恐怖だった。

 一週間、第三騎士団の訓練内容は拷問と言っても過言じゃない訓練内容になり、訓練後の演習場には団員達の屍が累々と積み重なるとゆー地獄の様な光景だった。


 しかも、その間俺はニコニコしたご機嫌なカイルのお茶に付き合っているのだ。


 俺にお菓子を食べさせながら満面な笑みのカイルが、屍となっている団員達に「何休んでいやがるんです?まだ訓練の最中ですよ」と魔法を使って強制的に訓練へ戻す様子を想像して欲しい。


 笑顔がむしろ怖い。直接雷を落とされていないはずの俺ですら、背筋が凍る思いだった。


 触らぬカイルに祟りなし。君子カイルに近寄らず。

 カイルのそれは回避可能なうちに予防線を張らないとドカンと纏めて雷が落ちる。

 それはもう俺たちの共通認識である。


 ……。

 なんでこう、第三騎士団は曲者揃いなんだろう?


 滔々と意見を述べる俺の横で、笑いながら涙を浮かべるケビンが頷いている。


「確かにその通りでも、キールが言うと本当に面白いな」

「今のうちに笑っとけよ。旅の報告書読んだカイルの顔見るまでの短い間だろうけど」

「何言ってるんだ? そんな恐ろしい想像は考えないようにするに限るだろう。どうせ怒られるんだから」

「うん。だな」



 真面目な顔で適当な事を言うケビンと思わず頷きあってしまう。

 怒られるのは確定なのか。やっぱりそうなるよなぁ……。



 って、こんなこと考えてる場合じゃなくてだな。


「んで、あの看板娘とラッセロは? 姿が見えないけど、もしかして別々に捕まったとか?」

「いや、安心していい。二人なら無事だ」

「ん?」


 ムースの答えに対する俺の疑問には、ケビンが答えてくれた。


「不意を突かれて魔法攻撃を受けただろう? 地に伏してから意識を失うまでの時間僅かに間があったんだが、どうやったのかラッセロが彼女を抱えて逃げ出したんだよ。んで、追いかけていく連中と怒号が聞こえた。牢屋番達の会話でも、まだ捕まっていないっぽいな」

「そうか、良かった! ラッセロなら、きっと逃げ切れるはずだ」


 一つ懸念事項がなくなってほっと息をつく俺に微笑みつつ、ムースは不思議そうな声で言う。


「キールは、彼に対する評価が随分高いんだな。勿論私もケビンも、彼を信頼に値すると思ってはいるが。用心深いキールにしては、少々珍しい様な気がする」

「ん? ああ、騙されたんじゃないかって?」

「……」


 沈黙が必ずしも肯定を意味するとは限らないけど、今回はそういう意味だろう。

 確かに、状況だけ見れば、ラッセロは確かに怪しい。同じく雷撃魔法を食らったのにも関わらず抜け出せた事とかは特に。


 静かな目線を投げかけるムースに、俺は瞬き二つ分考えてこう答えた。


「思わないよ。何となくだけどさ。ラッセロは、そういう事をする奴じゃないと思う。寧ろ、今頃じゃじゃ馬を目的地に送り届けることに専念してくれてるんじゃないかな」

「それは勘、なのか?」

「うん、そう。でも、ムースだってラッセロを疑っちゃいないだろ?」


 俺は、人を見る目だけはあるんだ。

 ムースは微笑んでひとつ頷いた。


「そうか。では、私達はここから出る事に全力を尽くすとしよう」

「ははっ。全力を尽くすなんて、ダンケみたいな言い方だな」


 珍しいやら懐かしいやらで、真面目な突っ込みに驚きと笑いが混じったようだ。

 ムースにしては珍しい事に、ちょっとばかり相好を崩し、片目をつぶってみせた。


 うーむ。美丈夫がやると様になるよな。


「キールに習おうと思う。こんな時こそ、団長式ポジティブ思考といこう」

「「賛成!」」


 ケビンと顔を見合せ、ムースの案に全力で乗っかる。頼もしい二人の顔を見ていると、勇気が湧いてきた。


 こういう時、独りじゃないって安心するもんだよな。


 俺はぐるぐると回していた肩を二三度ならしてから、ぐっと傾聴の視線になった。

 ケビンとムースも真面目腐った顔で姿勢を正す。そして、ムースが一言。


「クォーレンス辺境伯第三騎士団式、不測の事態での鉄則その一」

「はっ。まずは安否確認であります!」


 ケビンがビシッと敬礼をしてハキハキと答える。因みに、声量は物凄く小さい。

 ムースは小さく頷き、続きを促す。


「団員の安否。この場合はムース様と私とキールの三人であり、総員目立った外傷なし。体調の不良も見られない為、オールクリアであります!」

「よし。では、鉄則その二」

「はっ、状況確認であります!」


 ケビンに続いて俺も敬礼をする。これまた物凄く小さい声でハキハキと話す。

 ムースがまたも頷く。


「周囲の環境的特徴を列挙。暗くてジメジメ、窓はなく、出口は一箇所。牢屋のような場所に収容されていると推測。地下ではないかと思われる。また、所在地は不明」


 俺達の答えに頷いたムースが後を次ぐ。


「敵には、魔法使いがいると思われる。襲撃時の話口調から推測するに、奴隷商人の一味である模様。更に、バハルシュ公国の警吏と癒着の恐れあり。理由として、宿屋襲撃時の人員に関所に居たはずの衛士の姿が確認されている」


「現在、憂慮すべき点としては、一連のキルトン市での不可解な出来事にこのバルサザル市一派が関わっている可能性である。問題解決に向けて、これにより対処の仕方が大いに変更せざるを得ない点が問題だ」


 そんな感じに、三人で現状を把握し合っていた所、突然、鼓膜をぶち破る勢いで怒声が聞こえてきた。


「おいっ!! ここから出せっ! 俺を誰だと思っていやがるんだ、ええっ!!? 今すぐ出さねぇってんならひどい目に遭わすぞ!!」


 ビックリして声の発生元を辿ると、斜め向かいの牢屋からだった。

 それで気が付いたことだが、他の牢屋の中にも俺達と同じように捕まったであろう人影が複数人見受けられる。


 声の主は()()を短い足でガンガン蹴飛ばしながら、ずんぐりした体を振り乱して喚き続けている。

 その手足は短いものの、いかにも強そうなガチガチの筋肉で出来ていて、やもすると格子が折れるんじゃないのかと思ってしまう程だった。


 とんでもなく(やかま)しい。



 俺が思わず何だあれはと、ムース達を振り返ると、二人は遠い目をして頭痛を抑えるような表情をしている。


「またか……」

「またですね……」

「どうしたんだよ、二人とも」

「ああ、いや……」

「実はな、キールが目を覚ますよりも前から……」


 そこで一旦、ケビンが口を噤む。

 すると、丁度また誰だか分からない罵声が聞こえてきた。


「おいっ!!聞いてるのかお前らっ!!俺にこんな事して、ただで済むと思ってるのかっ!!今すぐに出せえっ!!ゼェハァ……」


 ケビンが閉口する様を見て、成程と納得する。

 つまり、ああして謎の声の主は、呼吸が困難になるまでずっと叫んでは休み、叫んでは休みを繰り返していたのだろう。


 ──にしても、えらく声のでっかい野郎だな。野太い声からして、叫んでいるのはおっさん……か?


 身体が子供サイズなのにあそこまで野太い声なのは何故だろう。もしかして、彼は噂に聞くドワーフという種族だろうか。


「……」

「ずっとああなのか?」

「キールは気絶してて正解だったな。俺も同じ牢屋だったら間違いなく殴ってる」

「ケビン。騎士たるもの、罪のない民間人に対して殴るなどと言ってはいけない」

「あの騒音は罪だと思います」

「ケビン!」


 ムースに叱られているケビンの横で、俺は明後日の方向を眺める。

 その時、格子を揺すっているドワーフ(?)とは別の場所から、同じくらいビリビリと空気が振動するような大音声が発せられ、広くもない地下牢に響き渡った。


「おいっ、このクソドワーフめっ!!もう我慢の限界だっ、いい加減にその煩い口を閉じろっ!!我が主の鼓膜に差し障るだろうがっ!!!」

「なんだと人間の小童がっ!!!」


 どうやらあのドワーフの大声に我慢ならなくなった男がいるらしい。それも、主人と一緒に閉じ込められているようだ。


 ちょいちょいとケビンに向かって指で手招きすると、丁度お説教が終わったタイミングのケビンがそそくさと寄ってくる。そのまま二人で、格子に出来る限り近づいて様子を見ることにした。


 ドワーフに対して文句を言った男は、件のドワーフと張り合う様に罵り合っている。


「お前が昨日からその煩い大声でがなりたてるせいで、我が主の体調がますます悪くなる一方ではないかっ!!少しは周りの迷惑を考えて行動しろ馬鹿者っ!!」

「俺の声が煩いと抜かすお前さんこそ喧しいわいっ!!どっちが周りの迷惑を考えてない馬鹿じゃ、こんうつけ(もん)(わっぱ)がっ!!」

「何を抜かすかドワーフ風情がっ!!」


 あまりのレベルの低い言い争いに、思わずケビンと顔を見合わせて嘆息する。


「どっちも」

「同じくらい」

「迷惑だよな」

「うん」


 頷き合っている間にも、言い争いはますますヒートアップしていく。


「あのいけ好かん奴隷商人達がのさばるのをみすみす許した(もん)らに馬鹿呼ばわりされる筋合いはないわいっ!!大体、宿屋で(くつろ)いどった所をいきなり訳の分からん屁理屈で捕まえて来よった(もん)らと、お前さんの着てる服は同じだろうがっ!!なんで鉄格子の中におるんだっ!!」

「なんだと、言わせておけばっ!!あんな公国の裏切り者共と私達を同じにするとはいい度胸だなドワーフっ!!そもそも奴隷商人を引き入れたのはバルサザル市長の一派であって、我らキルトンの者ではないわっ!!今すぐ認識を改めろくそドワーフっ!!」

「同じ人間で仲間割れしたとばっちりだろうがっ!!」

「違う所属だと言っているだろう、馬鹿者!!!」

「どうでもよいわ、鼻たれっ!!」



 キリがない。

 というか、そろそろどっちも黙っててくれ……。


 その時、隣で訝しげな顔をしているケビンが、俺の肩を叩いた。


「なぁ、キール。俺の聞き間違いか? こっからじゃ見えないが、ドワーフとやり合っている男、"我らキルトンの者"って言ったような気がするんだが」

「ああ。俺も確かにそう聞いた。まさか、こんな所にいたとはな」


 間違いない。

 我が主と言っていたことから察するに、キルトン市長とその部下が、この場所に捕まっているのだ。

 ラッセロの言う活気のない町の正体は、これだったんだ。


「市長は行方不明だったんだな。というか、あの話が本当なら、バルサザル市長が今回の件の首謀者という事か」

「らしいな。しかも、キルトン市長を監禁して冒険者達に噂を流し、キルトン市に立ち寄らせないようにしただけでなく……」


 俺の言葉を、いつの間にか近くに来ていたムースが引き継ぐ。


「噂を信じ込み、バルサザル市に寄るしかなくなった冒険者達の一部を不当に拘束して、奴隷商人に売り飛ばす」

「そしてその冒険者達はキルトン市内で消えたことにされ、ますますキルトン市に人が寄り付かなくなるとゆう悪循環」

「でもさ、市長がいなかったら流石に公都からも調査が入るだろ? 噂の事もあるし」


 思わず疑問を零すと、恐らくだがと前置きして、ムースが予想を述べた。


「キルトン市長は人望の厚い人物という話だ。もしかすると、市長の身柄の安全と引き換えに公都からの調査の目を誤魔化す様に、とでもキルトン市警に言い含めているとは考えられないか」


 ムースの話は尤もだ。というか、一番有り得そうな話だろうな。


「問題は、何故黙って従っているか、だな」

「俺たちを宿屋で捕まえた、雷撃魔法を使うあの魔法士さえ何とか出来れば良いのですが。やつはバルサザル市長のお抱えなのでしょうか。それとも、手を組んでいる奴隷商人の手の者でしょうか」

「分からないな」

「どっちがどうだと、何かあるのか?」


 二人の会話に首を傾げると、ムースが説明してくれた。


「バルサザル市長が起した今回の事件が、バハルシュ公国からの指示を受けて行った可能性がまだ残っているだろう。そうすると、もしあの魔法士が市長の手の者だと、色々と厄介ではある」



 それから聞いた話をまとめるとこんな感じだ。


 もし、バルサザル市長がバハルシュ公国から黙認されて今回の事をやっているとする。

 例えば、バルサザル市長が奴隷商人と結託して冒険者を売り捌いて稼いだ利益を半分公国に譲渡する代わり、悪事を見逃してもらうなどといったことだ。


 その場合、バルサザル市長とやり合うとなったら最悪公国とことを構えることになってしまう。

 だから、魔法士を遠慮なくぶっ飛ばしていいか躊躇している……と。


「そういう事か?」

「まあ、そんな所だな」


 簡単にまとめた事を述べると、頷きが返ってきた。

 ところで。


「それ、俺たちになんか関係あるのか? 今、俺達って()()()冒険者なんだけど」


 公国とやり合う事になったとして、困るのはヘルデ王国としての話のはずだ。

 所謂、国家間のあれこれというやつ。


 でも、俺達は今、ヘルデ王国民としてではなく、じっちゃんの密命で、ただの冒険者として旅している。

 国際関係に縛られない独立の存在である冒険者ギルドが、現在俺達の身分であり、保証人という状態だ。


 そして、ギルド所属の冒険者が問題を起こした場合、その者の身柄はギルドが有し、調査の上有罪と認められた際には制裁という名の罰が与えられる。


 国の圧力や貴族の権力から冒険者達を守る一方で、犯罪者となった仲間には一切の容赦をしない。それが絶対的に守られているからこそ、冒険者はどの国でも身分が保証されているのだ。

 つまり、バルサザル市長が俺達にしていることは、裏で公国が糸を引いていようがいまいが、ギルドに対する敵対行動に他ならない。


 公国が出張って来ようが、だから何だ、という話である。


 何か間違ってただろうかと思い、二人を見ると、ムースとケビンはそっくりの表情で固まっていた。


「「あ」」




 元々、辺境伯家の騎士団員だった二人は、仕方ないかもしれないけどさ。


 今は冒険者やってるって事、もしかしなくても二人とも、すっかり忘れてたんだな?







読んで下さり、ありがとうございました!

良いね・高評価★★★★★頂けると、作者もとても嬉しいです( * ॑꒳ ॑*)

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