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アメジストは夕暮れに神秘に煌めく  作者: 十六夜
第1章 旅立ち
15/21

第13話 不穏な帝国と陰謀の始まり

大変長らくお待たせ致しました:( ;´꒳`;)

作者の都合で更新が滞ってしまっていることを深くお詫び致しますm(*_ _)m

「ムース、ケビンお待たせ」

「ありがとう、キール。報酬はもらえたようだな」

「きっちり、3等分だぞ? お前だけ少ないとか、なしだからな」

「分かってるよ、ありがと。はい、これ」



 二人に冒険者証を返す。

 三人で依頼をこなすにあたり、きっちり3等分するというのが、俺たちの鉄則だった。律儀だよな。


 それから二人に、メリンダさんから言われた事を伝える。

 すると、ムースとケビンが思案顔で相談を始めた。



「Bランク昇級試験か。そろそろ、やっておくべきだろうか」

「そうですね。あまり催促されるのも、面倒ですし。今日はもう、めぼしい依頼が無いようですから、このまま行きましょうか」

「二人とも、ここでの昇級試験はとっくにやってあるから、あともう一箇所受ければいいんだろ?」

「ああ、その通りだキール。そうだな、私とケビンはこのまま、イズ冒険者ギルドに行ってくる。キールも来るか?」


 イズ冒険者ギルドは、その名の通り、イズ村にある。

 サメノー村と同様スタンピードの被害にあった村だったが、観光街として冒険者ギルドがあったイズ村は、この二年の内に元通り復興を遂げていた。

 今から行くとなると、戻ってくるのは昼を回った頃になるだろう。



「俺はいいよ。今日はクロードさんの鍛錬の日だから」

「ああ、そうだったな。それじゃ、後で会おう」



 そうムースが言ったのを皮切りに、俺達は別れた。


 ***


 俺は、二年半前のあの日より、変わらずクロードさんから鍛錬を受けていた。

 以前と違う点は、鍛錬の内容がより過激に、より厳しいものへと変わったことだろう。



 クロードさんが第1騎士団長であるという事実を知ってからも、俺は彼の弟子という扱いのままだった。

 普通ならば、第1騎士団を率いていかねばならない彼にそんな暇はあるのかと問いたいところだが、それに関しては問題ないそうなのだ。


 というのも、クォーレンス辺境伯軍七不思議の一つ(そんなものがあると言うことすら初めて知ったが)に、万年不在の第1騎士団長というのがある。

 この言葉尻からして分かるように、クロードさんは第1騎士団長という肩書きにはあるもののいつも不在で、実質第1騎士団を纏めているのは副団長なのだ。



 彼は、自分の気が向いた時に、気が向いた場所へ赴く。

 元々クォーターとはいえ竜族である彼はかなり気紛れで、じっちゃんの部下という地位にいるのも本人の気分によるものだとの事。

 その上、実力ではじっちゃん以外彼と手合わせできる騎士がいないと言われる程だ。


 流石に第1騎士団の連中はそんなことは無いらしいけれど、歩く災害のような彼の鍛錬を毎日されるくらいなら、俺に稽古をつけているくらいは、誰にも咎められないらしい。



 今日も今日とて、俺はクロードさんの地獄の扱きに耐えつつ、訓練にいそしんでいた。


「甘い。甘い甘い甘い、脇ががら空きだぞキール」

「くっ…ッッ!」


 次々と繰り出される猛攻を躱し、反撃し、返り討ちにあいながらも、俺とクロードさんは格闘を続けた。


 かれこれ、二時間はぶっ徹しで戦い続けている。

 クロードさんは、俺が気を失うまで猛攻をやめない。

 ひたすら繰り出される拳と蹴りを、それも、一瞬で肋を折るような(実際に折ったとしても治癒魔術師の所へ引き摺られて、また訓練に戻されるのだが)攻撃をただひたすら躱していく。その間に少しずつ反撃を加えながら。


 クロードさんが俺に三発拳を叩き込めば、俺が一発、更に俺に四発クロードさんが蹴りを入れ、俺が二発返す……。そういった具合に。



 大分やり返せるようになってはきたが、クロードさんには殆どダメージが入っていないようだった。

 更に言えば、クロードさんには俺を指導する為喋る余裕があるが、俺は致命傷を避け反撃するだけで精一杯なのだ。

 とてもじゃないが、格が違う。



 顔面に飛んできた拳を避けようとして繰り出された腹を狙うもう一つの拳を躱したことで油断したら、首筋に飛んできた回し蹴りをもろに受けてしまい、そこで意識が途切れた。



 ***


 突如冷水を浴び、あまりの冷たさに俺は目覚める。


「…ッッ冷た!」



 クロードさんに喰らった一撃で意識が飛んだことを思い出し、慌てて飛び起きた。が、いつもならここで飛んでくるはずの鉄拳が、何故だか今日は無かった。



「起きたか? 訓練再開と言いたいところだがな、御館様達がお前のことを呼んでいるそうだ。仕方ないから、続きは戻ってからやるぞ」



 そう言って、クロードさんは手ぬぐいを差し出してきた。

 俺はそれを有難く受け取り、訓練場の横にある水飲み場で顔を洗ってから水気を拭う。


 そんな事をしている間も、クロードさんは訓練の反省点を喋っていた。



「反射速度と力の出力が上がってきたのは褒めてやろう。受け身も上手くなった。だが、あの蹴りは頂けなかったな? フェイントは三回までは基本だと言ってるだろう。その前の右ストレートは云々……」



 衣服に着いた土埃を軽くはたいて落とし、てぬぐいを脇に挟む。

 クロードさんの忠告はとても為になる。

 上手く次に活かす事が出来れば、格段に技の精度が跳ね上がる。しかし、なかなか言う通りに実践するのは難しい。



「まぁ、こんな感じか。すまん、長く話しすぎたか? まぁいい、早く行ってこい」

「ありがとうございました!」



 ヒラヒラと手を振るクロードさんを尻目に、俺は御館様のいる領主の館へと向かう。



「よお、キール! 今日も激しくやり合ってたみたいだな!」

「さっき通り掛かったけど、見事なクレーターがいくつも空いてるのを見たぞ。ちゃんと平に戻してから来たか?」

「キール、今度俺とも手合わせしてくれ」

「あ、俺ともやろう」



 道すがら、館の警備をする騎士たちから声を掛けられた。この二年半の間に、辺境伯領都を守る騎士たちの殆どとすっかり顔見知りになってしまった。


 初めの頃、中にはクロードさんから特別訓練を受けている事を妬むやつなんかもいた(至極まっとうな感情だろう)が、その地獄の訓練内容と終わらない扱きに付き合っていけると言うだけで、今では尊敬の念で見られるようになった。

 彼らは本当に、心の広い人達なのである。



「うん、やろう。でも、今は御館様に呼ばれてるから、今度でもいいかな?」

「おぅ、そうか! じゃ、また今度な!」

「御館様なら、いつもの会議室にいらっしゃるはずだぜ。お待たせすんなよ?」

「じゃあな!」

「またな!」

「分かってる。ありがとう」



 騎士達に別れを告げ、俺は言われた方へと歩みを進めた。

 目的の場所には、既に見知った顔ぶれが勢揃いしていた。


 じっちゃんは部屋に入ってきた俺を一瞥して頷くと、また側近達の報告に聞き入った。

 俺は、俺と同じように待機している人物達に近付き、小さく声を掛ける。

 相手もそれに小さな声で答えた。



「やあダンケ、皆。久しぶりだね。皆もじっちゃんに呼ばれたの?」

「キール、元気そうだな。また強くなったんだって?。それはそうと、随分と時間がかかっな? 5分遅刻だぞ」

「うん。ちょっと伸びてた」



 久し振りに見る皆は、また少し大人びた顔つきになってはいたが、変わらずに元気そうだった。

 この場にミドがいないことを少し寂しく感じるも、ダンケの太陽のようにからっとした笑顔を見れたから良かったと思う。


 ダンケと話す俺に、昔から変わらず丁寧な物腰のカイルが穏やかに微笑み、ハインリッヒもにやりと笑った。この二人は以前より格段に色気が増している。



「お久しぶりですね、キール。だいぶ背が伸びたようだ。ああ、クロード様との稽古でしたか? あの方についていけるとは、キールも強くなりましたね」

「俺なら逃げ出しそうだぜぇ?」

「そんな事ないよカイル、ハインリッヒ。毎回、何処かしらに叩きつけられてるんだからさ」



 冗談じゃない。

 あれでクロードさんについて行けているとは、とてもじゃないが言えないだろう。俺では精々()()()()()()()()()という表現の方が適切に違いない。


 《本当に。俺なんてまだまだ。手加減もしてもらってるだろうし...多分》


 あまりに容赦ないしごきだから、手加減してもらっているかどうかは正直判定が微妙なところだが、少なくとも殺されたりはしていない。



 《うん。じっちゃんで漸く相手になるって人が本気出したら、俺なんか死んでるだろうな。

 未だに何で弟子にしてくれたのかも分かんないし…》



 一人脳内で自己分析していると、漸く側近達との話を終えたじっちゃんが、俺たちにそばに来るようにと言った。


 ダンケ、ハインリッヒ、カイル、ムースにケビン、そして俺は、じっちゃんの前に一列に並び、その言葉を待つ。

 どんな時も微笑みを浮かべているじっちゃんが今は酷く神妙な面持ちをしているせいか、自然と背筋が引き締まった。



「今日皆を呼んだのは他でもない。二年前のスタンピードと、昨今の魔物達の活性化についてだ」


 驚くと同時に、話の先を聴きたくてたまらなくなる。



 《何か、分かったんだろうか? フィーリや村に起こったこと…。知りたい!》


 一言一句漏らさぬよう身を乗り出すようにした俺に、じっちゃんが続ける。



「この二年の間、各国は協力して調査に乗り出した。活性化した魔物とその生態、そして、スタンピードの魔物がどこから来たのかと言う問いを明らかにするためだ。我らの王もヘルデ国調査隊を編成なさり、我が辺境伯領と他の数家の辺境伯領が主体となって行った調査の結果、大陸の西、ガラ帝国が関係している事が分かったのだ」



 神妙な顔で重々しく発せられた国名だったが、正直さっぱり分からなかった。



 《ガラ帝国? そんな国、聞いたこともないぞ? ダンケは知ってるのかな?》



 俺はさも知っていますよという顔を作りながらそっとダンケ達を盗み見たが、なんと言うことだろう、俺と全く同じ顔をしているではないか。

 と言うことは、少なくとも1つ2つ隣の国というわけではなさそうである。



「ガラ帝国ですか? ヘルデ王国とかの国とはいくつもの国や険しい山脈、内海などを隔てているはず。何かの間違いなのではありませんか?」



 案の定、騎士ではあるが中級貴族でもあるカイルが疑問というかたちで話してくれた様子から察するに、かなり大陸の中心部に位置する国だと分かる。流石は伯爵家の嫡男である。

 下級貴族であるハインリッヒはどうだろうかと目線を移すと、目が合ったハインリッヒが何やら無音で喋っていた。それによると───。


 《何々…? 俺が興味ないことを覚える(たち)だとでも思ったか…。成程》



 実にハインリッヒらしい。


 ダンケやムースやケビン達はというと、三人とも平民の生まれな為、ヘルデ王国国内と隣接した周辺国までの地理しか知らないようであった。

 本来は、それくらいの知識で事足りる。



 《すなわち、カイルが人一倍知識人である。結論終わりっ!》



 そんな事を脳内で考えること3秒、その横では、カイルとじっちゃんの難しい話し合いが続いていた。



「ほぼ間違いのない事実だ。かの国はこの数年、周辺国に対し実に横暴に振る舞っており、その理由として神の巫女の存在をほのめかしているらしい。また、大規模な戦支度を整えている噂もあるとの事だ。大義名分は、魔族の駆逐。魔族殲滅のため、神の巫女を異界より呼び出したそうだ」

「「「「「魔族殲滅!?」」」」」

「神の巫女?」


 ダンケ達は魔族殲滅という帝国の大義名分に息もピッタリで驚愕していたが、俺だけは神の巫女という単語が気にかっていた。

 似たような言葉に心当たりがあるから。


 そんな中、またしてもカイルがじっちゃんの言葉をほとんど悲鳴のような声を上げて否定した。というより、信じられないという風だった。



「ご冗談でしょう?! 魔物と魔族とが異なる種族だというのは、二千年前の三つ巴の大戦での時より常識であるはずです。ライレンシア聖霊国でさえ、それを認めています。かの帝国は再び世界を混沌へと導くつもりなのですか?!」

「落ち着けカイル。ところで、三つ巴の大戦ってなんだったっけ?」



 ダンケがカイルをなだめようとして言ったのであろう問いは、むしろ彼を興奮させたようだ。

 じっちゃんの御前(ごぜん)だという事実を考慮してか、声だけは平坦であるものの、今にも眩暈(めまい)を起こしそうな様子である。



「隊長貴方という人は! まさか魔物と魔族の違いも知らないなどと仰らないでしょうね?」



 カイルからジットリとした視線を受け、ダンケは咳払いをした。



「ん? ああ、それは知ってるぞ……おい本当だと言ってるだろうそんな目で見るな。 ……コホン。


 理性や知性がなく魔素溜りから突発的に発生するのが魔物で、一般に言われる魔物やスタンピード等の魔物はこれらを示す。動く物や生き物は見境なく襲う。


 一方で、魔族は国家を樹立し、他種族の様に生殖によって子孫を残す。勿論、理性や知性があり、特に魔人は、その名の通り人型に似た魔族であり、魔族の頂点に君臨すると。これで合ってるだろう?」



 タンケの説明にカイルが頷く。



「ええ、その通りです。

 そして、魔物は魔族の庇護下にはありません。

 完全に、別の生き物なのです。

 ですが、その違いが明確化されたのは約2千年前。

 歴史上最も醜い争いとされた、魔族とエルフ族と人間による三つ巴の大戦の後からなのです。

 当時人間が、魔物と魔族をごちゃ混ぜに狩っていた事から、時の魔王が出した声明が問題で...」


「魔物を狩るは我ら、我らを狩るは死のみ」



 咄嗟に口から出た言葉に、部屋にいた全員の目玉が一斉にこちらを向いた。

 カイルも一瞬驚いた様子で目を見張っている。


 養父が生きていた頃に口癖のように言っていたのを思い出したのだ。

 今でも冒険者達の宣誓として伝わっている言葉だったが、どうやら元は、昔の魔王が言った言葉だったらしい。


 ビックリしたのを顔に出さないようにしつつ、俺は記憶の引き出しを漁るようにゆっくりと話し出した。



「魔族は魔物を狩り、魔族を狩ることが出来るのは死のみだから、魔族に手を出すものは何人たりとも死者でなければならない。つまり、魔族殺しは死をもって償えって意味だろ? 冒険者の間では、魔族殺しは禁忌なんだ」


 俺の説明にじっちゃんが満足した様子で頷く。



「その通り、魔族殺しは禁忌とされている。

 禁忌を犯した者を、彼らは赦しはしない。十中八九、古の大戦が今度は人間族と魔族との間で起こるだろう。

 当時大戦の終止符となるは、一人の人間族の乙女であった。しかし、帝国が召喚したという者が、聖なる乙女だという保証はどこにもない。何としても、阻止せねばならないのだ」



 じっちゃんの話が終わると、室内には重い沈黙が横たわった。


 それはそうだろう。

 遠い場所にある帝国が、魔族相手に馬鹿をやらかそうとしている。放っておけば、人間族と魔族との種族レベルでの大戦が起こる。

 しかも、その余波で各地でスタンピードや魔物の活性化が誘発されて.......。



 《ん?》



 俺は、頭の中で引っかかった違和感に気が付いた。



 《待てよ?

 帝国が馬鹿って言う事と、魔族を止められる聖女をその帝国が従えているらしいから、近隣諸国に横暴してることも分かった。

 でも、それが直接魔物の活性化に関係してるわけじゃないよな? ...まさか》



「あの、じ...御館様」


 俺は意を決して、口を開いた。

 じっちゃんがスタンピードと魔物の活性化の背景に帝国の影ありと称した理由を聞く為に。


 じっちゃんと目が合う。



「まさか.....。まさか、帝国が、魔物の活性化やスタンピードを引き起こしたんですか。魔族殲滅という目的に、反対する者が減る様に。

 魔族と魔物の違いなんて、普通に暮らしていれば知る機会も無い。それこそ冒険者や、カイルみたく歴史に詳しい人しか知らないはずだ。

 魔王の言葉だって、言葉自体は聞いたことがあったとしても、魔物と魔族を区別する意味があると知っている人は、殆ど居ない」



 ムースやケビンが思わずといったように、深く頷く。


「確かにその通りかもしれない。私はてっきり、冒険者達の合言葉か何かかと思っていた」

「俺も同じです。魔族殺しが何故禁忌なのか、理由は知らなかった」



 俺も頷いた。


「だからもし、魔物が人を襲ったり、スタンピードが街や村を襲ったら、人々の恨みは魔族に向けられる。それも、魔族を総べる魔人達に。

 そうやって、魔族の殲滅に同意する様に仕向けた。そうですよね?」



 じっちゃんは、頷かなかった。

 だが、否定もしなかった。



読んで下さり、ありがとうございます!

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