「第3回下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ大賞」参加作品シリーズ
同じ映画を二度見る理由
「第3回下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ大賞」参加作品です。
※ラジオ大賞ノミネート5作品に選ばれました~(*´▽`*)
声優さまの素敵な朗読もあるので、聴いてみてくださいね。
ご報告:大賞をいただきました~(*´▽`*)にゃっはあああ!!
「この新作映画、すごく面白そうなんだよ、週末観に行かないか?」
残念ながらデートのお誘いではない。
映画鑑賞部のれっきとした部活動の話である。
とはいうものの、なにせ実質二人だけしか活動していない部活動。二人きりで映画館に行くのだから、傍から見れば限りなくデート中に見えるはず。いや、見えてくれ。
「週末ですか? 土曜日はちょっと……日曜日なら」
「ああ、俺もその方が都合が良い。じゃあ日曜日で」
先輩と別れると、メッセージアプリを開く。
『例の映画、土曜日で』
『了解』
すぐに返信が届く。
土曜日。駅前のシネコンで待ち合わせ。
「ごめーん、待った?」
「ううん、今来たところ」
待ち合わせをした恋人同士のようなやりとりをする相手は我が親友。
目的は先輩と見るはずの新作映画を観ることだ。
「まったく……毎回よくやるよ。あんな兄貴のどこがそんなに良いのかね?」
「うるさいなあ。タダで映画が見られるんだから感謝しなさいよ」
親友であり先輩の妹であり、数合わせの幽霊部員。
我が校は映画観賞であれば部費が使えるので、色々制限はあるもの、裏技を使えば実質タダで映画を観ることも可能だ。
「面白かったね、『雪だるまの助手ジョッシュ』」
タイトルはともかく映画は普通に面白かった。
「ねえ……余計なお世話かもしれないけどさ、そろそろ兄貴に告白しても良いんじゃないの?」
ジト目を向ける親友からすっと視線を逸らす。
実は先輩との映画鑑賞、楽しいのだが内容がまったく頭に入ってこないのだ。
手が触れそうな距離感、闇にまぎれてついつい盗み見してしまう真剣な横顔。観終わった後に見せる少年のようなキラキラした瞳。
先輩の話に合わせるためにも予習するだけで精一杯。告白なんて絶対無理。
「それは無理、先輩の真剣な横顔を見れるだけで幸せだから良いの!!」
今が一番幸せ。第一、断られたらどうするのよ。
「はいはい、そういえば新しいお店出来たらしいよ、行ってみない?」
「いいね、今日は私のおごりだ我が義妹よ」
「先走り過ぎだよっ!? でもゴチになります義姉さま」
「ただいま~、あれ? 兄貴、今から出かけるの?」
「おかえり。ああ、ちょっと映画館にな」
「……行ってらっしゃい。例の映画でしょ? 明日行くのに馬鹿みたい」
「馬鹿言うな、緊張して内容が頭に入らないんだよ。わかれ」
慌ただしく出てゆく兄を見送り大きく息を吐く妹。
「あああ、焦れったいなあもう……早くくっつけバカップルども」
イメージイラストいただきました~(*´▽`*)
妹ちゃんと後輩ちゃん 作/四月咲 香月さま
せっかく大賞をいただきましたので、続編を書いてみました(´艸`*)
良かったらぜひ。
『桜が満開になったら』 https://ncode.syosetu.com/n9518hn/