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女の中で男が一人  作者: 零位雫記
7/25

07

その翌朝、ぼくはカーテンの隙間から差し込む早朝の光をベッドの上で感じ目が覚めた。


 昨夜は、ワインボトル一本を飲み干し、多少酔ったのが原因かよく分からなかったが、ソファでそのまま眠ってしまった。


 午前1時に目が覚め、ぼくはテーブルにそのまま置かれている食器やグラスを洗い、そのあと自室に戻ってまた眠った。


 カーテンの隙間から射る眩しい光を避け、ぼやぁとした視界でベッドの枕元にあるデジタル時計を見ると6時と確認できた。


 もう少し寝ようと思ったが、ぼくはゆっくりと上体を起こし、しばらくぼぉとした。


 意識が鮮明になりつつあるのと同時に、今日がオフ会開催日という認識が脳内を徐々に満たしていき、その認識がMAXになるとぼくは眼鏡をかけベッドから飛びおり、下の階へと走った。


 今日のオフ会の待ち合わせ時刻は、神戸三宮駅のおっぱい山に午後4時半となっている。


 ぼくの住む家の最寄りの駅は、幸運なことに今回待ち合わせに使われる阪急電鉄のとある駅。自宅から自転車でその駅まで十分足らずで着く。その駅から神戸三宮駅までは、電車で一時間ほどかかる。ぼくは3時には家を出ようと思っていたので、それまでにやらなければならないことをやっておきたかった。


 ぼくは朝食を準備しそれを平らげると自分の部屋に戻り、今日着ていく服の選定を行おこなった。


 オフ会開催が四日前に決まってからどんな服装で現地に赴こうかあれこれ悩んでいたが、ついに決めきれずに今日まで至ってしまった。


 普段着用する服は、ジーンズと今の季節なら長袖のボタンシャツ。が、今日はちょっと大人びて見えるように、ジャケットを羽織ってチノパンでもはこうか。いや、それは気負い過ぎか。しかも今日は日中の気温が25度以上になると予想されている。暑がりのぼくとしては、半袖のTシャツでいいかもしれない。でも夜になると気温は下がるからやっぱり長袖? ぼくはここ数日やってきたことをまた繰り返し、あれこれ考えながら少ないなりにある何種類かの服やズボンを着たり脱いだりして時間を経過させた。


 一時間後、ぼくは結局いつもよく着ている上下の服(青と白のチェック柄の長袖のボタンシャツとジーンズ)でオフ会に臨むことに決めた。


 服装が決まったのが昼過ぎ。ぼくは決まった服をたたんで室内着に着替えると、昼食を軽く摂り、あとはまた自室に戻って、待ち合わせの目印となる頭に巻くモノを決めるため、候補の布三枚を持ち1階にある洗面所まで移動した。洗面所には上半身を写す大きな鏡があり、その鏡を利用して今日自分の頭部に巻く布を決めようとしていた。


 頭に巻く布もこの三日間で色々思案していて、その期間で選抜した布は三枚。一枚は、黒のスポーツタオル。一枚は、母親のタンスから探し出してきたひまわりが描かれた黄色地のスカーフ。もう一枚は、白の手ぬぐい。手ぬぐいはタオル置き場の一番下にあり、ぼくは今までそれを見たことがなかった。なんでこんなものが家にあって誰が何の目的でこれを使用していたのか不明だったが、ぼくはこれを候補にあげた。


 ぼくは、黒、黄、白の順に頭部に巻いて吟味した。


 黒のスポーツタオルはぱっと見髪の毛と思われ目立たないかもしれない。


 黄色のスカーフは、目立つが、今日着ていく服と色合いがあっていないのでは・・・・・・。


 白の手ぬぐいは、よじって細くしそれを頭の周囲に巻けば気合いの入った祭り人のようで勇ましく良いと思うのだが、垂れた前髪に隠れ気づかれないかもしれない。手ぬぐいを広げて頭部を覆うこともしてみたが、頭を怪我した人みたいだし、インパクトに欠ける気がする。


 昨日まではいいなと思っていた三枚のどれもが良いと思えなくなっている。




(どうしよう?)




 結局は優柔不断なのだ。


 ぼくは優柔不断。


 何かと難癖をつけて、決める理由を曖昧にして「決めきる」ということから逃げているだけ。


 ぼくは、布の件は、運に任せようとした。外出するときいつも背負うリュックに三枚とも入れて、おっぱい山に到着したらそこでリュックに手を突っ込み、最初につかんだ布を頭に巻く。


 ぼくは三枚の布を持って自室に戻りそれらをリュックに入れた。




「さて」




 ぼくは次にシャワーを浴びた。大量のボディーソープをタオルにつけ泡立ててそれで全身を隈無く拭って洗い流した。


 ドライヤーで髪の毛を乾かし、今日着ていく服に着替え時計を見ると午後2時半。


 出掛けるにはまだ早い。今創作している小説の続きを書こうかと思ったが、集中して書けそうにない。


 ぼくは家を出ることにした。もう、家を出たかった。

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