01
――キャンプをひらく――
たちゃね 「みんな、あともう一息だ。この奥にボスモンスターがいる。今のうちにダメージがある者は灰我の回復魔法・・・・・・・名前忘れた。まぁとにかく回復魔法受けといて。それとしるヴぃあ、攻撃強化魔法・・・・・・・名前何だっけ? まぁいいか、その魔法をわたしとSOWとアーロによろしく」
しるヴぃあ 「リょうかい」
SOW1008 「しるヴぃあさ~んお願いしま~す」
たちゃね 「アーロは、いつも通り遠方から弓矢で射撃。わたしとSOWがモンスターと接近戦になればあんたも弓矢から剣に装備を変えて戦いに加わって」
アーロ 「わかりました」
しるヴぃあ 「はいまほうをかけます」
灰我 「みなさま、奥にいるボスモンスターはコッズドラゴンです。コッズドラゴンの弱点は、尻尾です。でも、尻尾に近づくとコッズドラゴンは尻尾を振り回してきて、痛恨の一撃をお見舞いされるおそれがありますのでご注意ください。」
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たちゃね 「準備はいいねみんな」
灰我 「はい。」
SOW1008 「OKで~す」
しるヴぃあ 「いいよ」
アーロ 「はい」
たちゃね 「それじゃあ、突撃ぃ!」
こうしてぼくたちの戦いは再開された。その十数分後、ぼくたちは、強敵ボスモンスター「コッズドラゴン」を撃破することができた。
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――キャンプをひらく――
たちゃね 「みんなおつかれ」
灰我 「お疲れ様でした。」
SOW1008 「おつかれさまで~す」
しるヴぃあ 「おつかれさま」
アーロ 「おつかれさまでした」
たちゃね 「やっぱり苦戦したね」
SOW1008 「でもだれも死亡してないし、ましてや昏倒もせず倒せましたよ~」
灰我 「獲得アイテムは今から識別し、正体が何か確認します。」
アーロ 「得たお金は、金貨が3500枚、銀貨が6261枚、銅貨が9954枚です」
しるヴぃあ 「コッズドラゴンはおかねもち」
SOW1008 「コッズドラゴン、おっかねもち~」
たちゃね 「銅貨は全部ここに置いていこう。持って運んだら移動速度が遅くなるし、何よりみんな持ち物がもういっぱいだろ?それに価値もない。金貨はもちろん全部街まで持って帰る。銀貨もいらないかな」
アーロ 「もったいない気がしますけど仕方ないと思います」
たちゃね 「アーロ、あんたどれぐらい金貨持てる?」
アーロ 「ぼくは、2000枚は持てます」
たちゃね 「そう。じゃあ2000枚もって。あと1500枚か。わたしは500枚が限界」
SOW1008「わたしも500枚~」
灰我 「では残りの1000枚は、わたしとしるヴぃあさまで半分ずつ持ちます。いいですか、しるヴぃあさま?」
しるヴぃあ 「りょうかい」
たちゃね 「ところでアイテムの識別できた?」
灰我 「はい。獲得アイテムは全部で五つ。ブルーメイルとコッズソードとカーテンマントとユニコーンの角、あと呪縛の鎖です。」
たちゃね 「コッズソード!そりゃダメージポイントがプラス120のSクラスアイテムじゃない!」
SOW1008 「わぁ~お!」
灰我 「ブルーメイルは飛行能力がある鎧です。これを装備していれば水の上も歩けますし、落とし穴にも落ちません。」
たちゃね 「コッズソードはSOWが装備しなよ。ブルーメイルはわたしが装備していいかな?」
SOW1008 「えっ!コッズソードもらっていんですか~」
たちゃね 「ああ。この前のクエストでは、わたしが猛者の刀を貰ったからね。今回はあんただよSOW」
SOW1008 「ありがとうございま~す」
たちゃね 「ブルーメイルは貰うね」
アーロ 「そうですね、ブルーメイルを装備できるのはウォーリアーのたちゃねさんだけですし」
灰我 「カーテンマントはソーサラーであるしるヴぃあさまが装備すればいいかと。」
しるヴぃあ 「ありがとう」
灰我 「ユニコーンの角と呪縛の鎖は、わたくしが持ちます」
たちゃね 「了解!じゃあ街に戻るか」
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僕は今、あるオンラインゲームに夢中だ。
オーバー ザ クエスト
これがぼくが今ハマっているゲームの名前。ジャンルは3Dアクションロールプレイングゲーム。
日本で180万人がゲームソフトを購入して、そのうち100万人がIDを取得しインターネットを介してゲームを楽しんでいるとネットやゲーム情報誌でいわれている。
このゲームは、ハード機の付属品である専用のキーボードを購入することが必須で、十字キーでキャラを操作、エンタキーで武器攻撃、魔法を放つ等をやり、またそれに加え文字キーで他のユーザーとチャットしながらゲームできるのが売りだ。
ゆえにプレイする全員がキーボードを購入して自由に会話をしながらゲームを楽しんでいるのだ(一説では、売れ行き不調のキーボードのテコ入れ策としてこのゲームを制作したともいわれている)。
だがその自由さゆえ、プレイヤー同士が罵詈雑言を掛け合うこともままあり、ゲーム以前にチャットで口喧嘩ならぬ文字喧嘩をし、パーティー解散なんてこともあるようなのだ。ぼくも実際、何回かそういう場面に出くわしたことがあった。
現在ぼくが所属するパーティーは「日和見部隊」という。このパーティーはプレイヤー同士の仲がとても良く、実に二年間誰も入れ替わることなくここまできている。
OTQ(オーバー ザ クエスト)には、パーティーランキングという指数表記があり、ぼくたちのパーティーランキングはさっきまで「105位」だった。でも今回、コッズドラゴンを討伐したことによってランキングは「103位」となった。
「103位かぁ」
ぼくは部屋で独り呟く。
コッズドラゴン討伐後、ぼくら日和見部隊は街へと戻り、次回のゲームプレイの日にちを確認しあって、その日のゲームを終えた。
「みんな覚えているかなぁ」
二年前、ぼくが日和見部隊に所属したての頃のパーティーランクは、大体90000位だったと記憶している。パーティーは二人からでも認定され、今では20万ものパーティーが存在するといわれているこのゲームでさっきそのランキングが103位となったのだ。
ぼくら日和見部隊は、チャットをしながらゲームを進めていき、快調にランクを上げていった。
そのチャットの中でだれが発信したのかはもう忘れてしまったが、
「ランクが100位以内に入ったらお祝いにみんなで顔を合わせない?」
というようなことを画面に表示させたのだ。
その当時でランクは50000位ぐらいだったから、だれもが実現は難しそうということで、各々軽く了承の返事を発信し、ぼくもOKと返事したと思う。
しかしここへきて、その100位以内が現実味を帯びてきたのだ。もっともぼくとしては、ランクが1000位以内に入ったとき、みんなと現実世界で逢うということが頭をよぎり、それからも順位が上がるにつれ、その思いは強くなっていった。
今度みんなとゲームするのは、二日後――祝日の前の日の夜だ。
「みんな覚えているかな」
黒くなったTV画面を見ながらぼくは呟く。
ぼくはその後トイレにいき、眼鏡を外してベッドに入った。でもその日は中々寝付けなかった。眠れなかった。