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The Great War of the Electronic World  作者: 大鳳小鼠
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第一章 プロローグ


 重機関銃の射撃音が轟き、頭上数センチの地面が弾ける様に砂煙を上げた。


 顔を上げれば、塹壕の壁で狭められた空を無数の曳光弾が飛び交っている。

 少しでも顔を出せば、瞬く間に蜂の巣にされているだろう。


「早く近接航空支援を寄越せ!……そうだ!何でも良いから機関銃を黙らせろ!」

 新兵の背負った無線機の受話器を掴み、小隊長が何やら怒鳴り散らしている。

 無線の相手の声は聞こえないが、何か言い争っているらしい。


 小隊長は「Scheiße(クソッタレ)!」と吐き捨て、受話器を地面へ叩き付けた。


 その数分後、空に浮かんだ複数の黒点がゆっくりとこちらへ向かって来る。


 空気を切り裂く甲高いサイレン。

 ドップラー効果による唸りが上空からの恐怖を想起させる。


 逆ガル翼と固定脚、一目で判別できる特徴的な機体が逆さ落としに急降下し、数百メートル先の建物に爆弾を投下した。


 サイレンが幾つもの風切り音に代わり、着弾と同時に戦場を震わせる。


 機関銃座が吹き飛び、黒い煙が立ち上ると同時に鋭い笛の音が響く。

 突撃の合図だ。


 小隊長を筆頭に、気合の籠もった雄叫びを挙げて兵士達が塹壕から飛び出した。

 俺もシュマイザー(MP40)を片手に、それに倣って塹壕を飛び出す。


 しかし、敵の陣地は数百メートル先、一息で駆け抜けることはできない。

 無理に突破しようとすれば、功を焦って倒れた先人達の後を追うことになる。


 数十メートルずつ進み、瓦礫の影に身を潜ませていると、次の航空支援が陣地に降り注ぐ。

 しぶとく生き残っていた最後の銃座が沈黙した。


「行くぞ!」


 小隊長の号令で、俺達は再び戦場へと身を躍らせる。

 だが、もうここはキルゾーンではない


 残りの距離を全力で疾走し、積み重なった土嚢の向こう側を、引き金を目一杯引いて掃射する。

 悲鳴がいくつか上がり、周囲は静まりかえった。

 

 ボロボロになった建物内部の掃討も終え、俺達はその屋上へと上がり、戦場を一望する。

 敵陣地の占領には成功したが、ここで終わりではない。

 むしろ始まりである。


 上空で花開く無数の落下傘、その美しさに俺達は言葉を失う。


 小隊長が振り返る。その背後、遥か遠くのトーチカ群が無数の砲弾の雨を受けて爆散した。

 無慈悲な大口径砲弾の応酬、艦砲射撃だ。


 立ち上る黒煙、吹き抜ける爆風。

 握り締めたシュマイザー(MP40)の冷たさ。

 切れた皮膚から流れ出る血の温かさ。

 肩を上下させる荒い息遣い。

 

 全てが……そう、まるで現実リアルだ。


 小隊長は歯を覗かせ、にかりと笑った。


「ようこそ、戦場へ」





▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼




『……おい………れ…ぐ…!』


 誰かの声が耳元で聞こえ、俺は飛び起きた。

 咄嗟に耳元を払うと、ヘッドセットが床に落ちる。


 机の上に顔を向けると、モニターの向こうで見知った顔が喚いていた。


『おい零軍!いつまで寝てんだよ!もうすぐ始まるぞ!』

「あ……」


 そして思い出した。

 今日は熱中しているゲームの超大型拡張コンテンツのリリースが行われる日だと言うことを。


 俺は凝り固まった筋肉を伸ばしながらモニターの前に座る。


「大丈夫だ、今起きた」

「おう!起きたな!じゃあ先に行ってるぜ!」


 瞼を擦りながら返答すると、彼はそれで満足したらしく、モニターの電源を落とした。

 暗くなった通話アプリのウィンドウを見て嘆息する。


 まだ聞きたいことがあったのに……

 まったく、アイツはいつも人の話を聞こうとしない。


 時計を見ると、針は午後三時四十分を指していた。

 そろそろ俺も向かうとしよう。


 パソコンの電源を切り、部屋の一角に鎮座する装置の電源を入れる。

 

 こいつは最新式のVRゴーグルだ。

 正確には、次世代全身没入型VRインターフェース『ミラージュ・ゼロ』、であるが、細かいことはどうでも良い。

 見た目は、直径三メートルもある巨大なガラスの球にしか見えないだろう。


 だが、専用のベルト状の装置、専用の靴とグローブ、そして忘れてはならないVRゴーグルを身に付ければ世界的な大発明へと変貌する。


 球体のハッチを開け、中へと入る。

 しっかりとハッチを閉めたことを確認して右手のリモコンを操作すると、機械が小さな駆動音を鳴らし始めた。


 部屋の中が透けて見える半透明のゴーグルに、映像が流れ始める。


 しかし、それだけでは無い。

 足の裏と腰に少し圧迫感を感じたかと思えば、球体の中で身体が浮遊する。

 超音波とか、超伝導のピン止め効果とか、いろいろな技術を結集しているらしいが、詳しいことは設計者では無いので分からない。

 

 身体の中心点は、腕を伸ばしながら背伸びをしても手足が内側の何処にも当たらない様に調整してあるため、この空間の中であれば、どんなことだって可能だ。


 プロボクサーとなって並み居る強敵と互いの限界へ挑戦することも、寡黙な暗殺者として多彩な技術を駆使して目標を暗殺することも、宇宙船に乗り込んで広大な宇宙とそこに点在する惑星の調査をすることだって出来る。

 まるで、夢の様な空間だ。


 早速、メニュー画面から目的のゲームページを開く。


【Welcome back to battlefield !!】


 軽快なBGMと共に映像が流れ始めた。


 “戦場へようこそ”


 これこそがこのゲームのキャッチコピーであり、内容を端的に表した言葉である。


 俺はキャラクターセレクト画面からメインキャラクターを選び、パスワードを打ち込む。

 すると映像が空挺降下する直前の兵士の視点に切り替わった。


 機内乗務員がこちらに向けてサムズアップを見せる。

 準備が完了した合図だ。


「よし、行くぞ!」


 自分なりに気合を込め、俺は一歩を踏み出した。




最後まで読んで頂きありがとうございます!

初めての投稿なので未熟な箇所が多々見受けられると思いますが、温かい目で読んで頂けると幸いです。

感想やご意見など大歓迎です!


投稿は不定期になりますが、最初は毎月投稿を目指して頑張りたいと思います。

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