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ラヴ・アンダーウェイ(LOVE UИDERW∀Y)  作者: 囘囘靑
第6章:神の子は都(みな)沓(くつ)を履く(Каждый ребенок Божий носит обувь.)
151/165

151_自分らしさ(личность)

 クニカは扉を開いた。


 カイ、シュム、チャイハネ、リン――。仲間たち(キャラバン)が、“花嫁の間”の前で、クニカを出迎えていた。


「やっぱ、ここだったんだな」


 立ち尽くしているクニカに、リンが真っ先に声を掛ける。


「どうしたの?」

「偶然なんだよ」


 煙草を片手に、チャイハネが答える。


「クニカに会おうと思ったけれど、部屋にいなかった。それで、シュムと一緒に、なんとなくここに来た。そしたら、カイも、リンもいた」

「カイも、たまたまなんですよね?」

「ン!」


 シュムの問いかけに、カイもうなずく。


「よく分かんないけどさ、ここなんじゃないかって、何だかそんな気がしたんだよ」


 リンが答える。


「そうだったんだ」

「なあ、クニカ。これからどうするんだ? オレたち、それを訊きたいと思ったんだ」

「ええっと……」


 ウルトラまで、一緒に旅をした四人に、クニカはまず、訊いてみたいことがあった。


「あのさ、わたし、救世主になれると思う?」

「まだそんなこと考えてたのか?」


 リンがあきれ気味に言った。


「来世に期待だな。ガラじゃないよ」


 チャイハネも答える。


「はい。クニカは今のままで十分です。ですよね、カイ?」

「ハ、ハ!」


 シュムの言葉に、カイが笑う。


「そ、そっか……」


 どう反応すればいいのかわからず、クニカはまごつく。四人の反応は遠慮のないものだったが、それでも、四人ならばそう答えてくれると、心のどこかで、クニカは期待していた。


 その期待が、クニカの中で確信に変わる。今はただ、みずからの感情を四人に、仲間に素直に伝えるべきときだと、クニカはそう思った。


「あのさ、笑わないでほしいんだけど」

「だれも笑いやしないよ」


 短くなった煙草を、チャイハネは投げ捨てる。


「リン……怒らないでね?」

「ばか。怒るわけないだろ」

「怒ってるみたいですよ、リン!」

「アハハ!」


 シュムが茶々を入れる。カイが手を叩いて笑う。


「わたし、“竜の魔法使い”で……、みんな、“竜の魔法使い”に会うために、わたしのところへやって来たと思う」


 クニカは続ける。


「だからさ、今度は……その逆をやってみようと思うんだ。今度はわたしが、“霊長の魔法使い”に、会いに行く。それで何が変わるのか、わからないけれど」

「それが答えですか?」


 シュムが尋ねる。


 クニカは黙ってうなずいた。


 四人は互いに顔を見合わせる。


 クニカは不安になる。


「変かな?」

「ぜんぜん」


 チャイハネが首を振る。


「というか、シュムと話してたんだ、『“霊長の魔法使い”に会いに行こう』って、クニカなら言いそうだ、って」

「素敵です、クニカらしいと思います」

「ニンゲンを捕る漁師だゾ、クニカ!」

「カイの言うとおりだな」


 最後に、リンが言った。


「カイの言うとおりだよ。オレも、クニカならそう言うって思ったんだ」

「ありがとう」


 クニカは言った。自分の前に、世界が再び開かれようとしている。クニカはそんな気持ちになった。

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