36話
就活でいよいよ執筆する時間が無くなってきたのでもう少ししたら暫く筆を置くことになりそうです。
翌朝。総悟が学校へ行く準備をしていると、マリベルが何やら深刻な顔をして携帯を耳に当てていた。携帯を閉じた所で、総悟はマリベルに言う。
「何かあったんですか?」
「レムとサナが…昨夜何者かに殺された。遺体がこの地域のゲートを通って、昨夜レーラズに転送されてきたそうだ」
「な…!?」
絶句する総悟に、彼女は言う。
「夕方に官長を探す。あの人に、詳しい話を聴かなきゃならねえ」
(昨夜殺された―つまり、俺と別れた後に何かあったってことだよな…)
昨夜の状況から、何が起こったのかを推理する。2人は内通者の情報を探っていて、ウートガルザが怪しいと突き止めた。つまり、2人を殺害したのは—
「ソーゴ」
マリベルがいつになく真剣な面持ちで、総悟を見据える。
「あいつらの仇は討つ。お前も力を貸してくれ」
総悟は、無言で頷いた。
夕方。総悟が学校から帰って来ると、アリエルと神楽がやって来ていた。どうやら、マリベルが招いたらしい。
一方で2人を招いた主は、廊下で電話を掛けていた。アリエル曰く、ヴァルハラにウートガルザの行方を聴いているらしい。
廊下から戻ってきたマリベルに、総悟は言った。
「ただいま、マリベルさん」
「お帰り、ソーゴ」
それから4人で机を囲い、ヴァルハラの事務員から聞いた情報を話す。
どうやらウートガルザはゲート付近の山中に潜伏しており、1時間前からそこに留まっているそうだ。
「職員さんたちは直接ウートガルザさんに会いに行かないんですか?一応容疑者な訳ですし」
「いや。あの人今日休暇取ってるそうでな。無暗にプライベートには踏み込むべきじゃないってのがウチのしきたりなんだよ」
変な所で腰が重い連中だよウチの組織、と愚痴を零す。
「…やっぱり、行くの?」
真剣な顔つきで、アリエルがマリベルに問い掛ける。
「ああ。本当にあの人が内通者なのか、問い詰めなきゃならねえ」
マリベルは席を立ち、総悟たちに向けて言った。
「これからあの人が潜伏している場所に行くが…準備はしっかり整えておけ。万が一
戦闘になった時に備えてな」
夕日が差す部屋を、重い緊張感が包んでいた。
日が西に傾き、空が紫に染まる時刻。総悟たちはゲート付近にある山の麓に来ていた。昔はホテルが営業しており、人で賑わっていたとされるそこは、人気がなく静寂を保っている。
「ここにいるんですか?」
「…どこかに移動していなければ、恐らくな」
街灯が照らす中、眼を凝らして人影を探す。マリベルの眼は、叢の中に細長い物体が刺さっているのを見つけた。
「あれは…?」
駆け寄って、携帯の明かりで照らす。それは、一本の剣だった。宝石のような装飾が散りばめられ、刃に赤い線が入っている。その武具に、マリベルは見覚えがあった。
「マリベルさん、それは?」
「官長の武器だ。何故こんな所に…」
思わぬ物の存在に、4人は首を傾げる。魔導錬器には発信機としての機能が据付られているのだが、この場所に放置されていたということは…
「やーやーこんばんは、皆」
不意に明朗な声で挨拶され、一同はぎょっとして背後を振り返る。そこには、白いゴスロリを着た少女、ウートガルザその人がいた。
ウートガルザは、満面の笑顔を浮かべて言う。
「こんな所で会うなんて奇遇ねぇ。どう?遊んでる?」
朗らかに笑うウートガルザだったが、今のマリベルたちにはその笑顔が大変胡散臭いものに見えた。
「官長…」
「あらら。どうしたの?そんな深刻そうな顔しちゃってさ。遊ぶための余裕は常に持っとかないと」
フランクな口調で語り掛けるウートガルザに、マリベルは懐から携帯を取り出し、ディスプレイを見せた。
「ん?どうしたの?それ」
「ビフレストに繋がるゲートの通過記録と、記録装置の操作ログです。何者かに改竄されてしまっていたんですが、先日復旧が終わりました。その結果、事件が起きてから記録を弄ったのは貴女だけであることが解ったんです」
「…私が件の内通者だと思ってるの?」
満面の笑みで、ウートガルザが反論する。口調こそ明るいものの、それにはどこか重いプレッシャーが掛かっていた。
「確かに私が装置を弄ったのは認めるけど…それだけじゃ私が犯人だっていう証拠にはならないよね?」
「それだけなら、ね」
マリベルは、剣のような鋭い眼差しで、ウートガルザを見据えた。
「貴女も知っているかもしれませんが…改竄された記録の復旧は着々と進んでいる。つまり、もう時間の問題な訳ですよ」
どこからか、小さな笑い声が聞こえた。やがてそれは洪笑、そして爆笑となって夕暮れの街に響き渡る。
笑い声の主は、さながら演劇の席の観客のように多大な拍手をして、にやりと哂った。
「ああ。その通り。私が—内通者よ」
「声が変わった!?」
急に声色を変えたウートガルザは肩の辺りを掴むと、上に向けて放り投げた。
「あ、あれ…!」
「皮とマスク、ね…」
脱ぎ捨てたのは、服だけでなかった。白いゴスロリと一緒に、肌色のラバースーツとウートガルザの顔のマスクが放り投げられた。それはまるで、人の皮を剥ぎ取り、服と一緒に着ていたかのようだった。
「始めまして。虚将ロキよ」
黒いゴスロリを着た黒髪の少女は、怪しく笑った。




