34話
また書きだめがつきそうなのと就活が始まったのとで暫くしたら投稿に間が空きそうです
夜の酒場。ワルキューレ本部による強制捜査の顛末を、マリベルたちは黙して聞いていた。レムが語り終わった所で、サナが推論を述べる。
「これは私たちなりの推測だけど…恐らくビフレストの連中は内通者と協力関係にあった、あるいは内通者から脅迫されていた。そして何らかの理由で用済みと判断され、始末されてしまった」
机が波打つかのように揺れ、酒が入ったグラスが倒れる。
「魔法少女でありながら無魔に味方して、挙句の果てに同胞までっ…許せない…!」
アリエルは肩を震わせ、激怒していた。瞳には、憤怒の炎が煌々と燃えている。
「何か手がかりはないのか?
腕組みをしつつ、マリベルが言う。声音は平静だったが、強い怒りを感じる声だった。
「本部にあるゲートの通過記録もチェックしたんだけど…そこにも何の手がかりはなかったわ。初めて事件が起きた日から記録装置を操作した人のデータも洗ってみたんだけど…」
「通過ログすら弄られてるんだもの、記録装置の操作ログも装置がある部屋の入室ログも改竄されてるでしょ」
双子の推理に、マリベルは腕組みをして言った。
「…だが、これでハッキリした。内通者は上層部の誰かだろう。記録の改竄はあたしらみたいな使い捨ての兵にゃ許されていないからな」
そう断言するマリベルに、総悟は疑問を投げ掛けた。
「でも、これからどうするんです?」
「地道に聞き込みをしていくしかないな。それも内通者に嗅ぎ付けられないように」
マリベルは、酒を飲み干し思案する。本部勤めの人間がおおよそ数千人。その中でシステムへの干渉が許可されている身分が千人程度。それに加えて出張で地方、或るいは別国に移転している者にも聞き込みを行わなければならないと考えると、気が遠くなる思いだった。
「ねえ。思ったんだけど流石に団長が内通者ってことはないわよね?」
黙々と酒を飲んでいたアリエルが、口を挟む。
「確かにそうね。もしあの人が黒ならビフレストの調査自体許可しなかっただろうし」
「なら先ずはあの人に話を聴きに行かない?明らかに白い人の情報なら信頼出来るだろうし」
レムはグラスに入った赤色の酒を一気に飲み干し、「決まりね」と言った。
「明日酒場にでも誘って聞いてみるわ」
それから適当な世間話をして、酒場での集いは解散となった。勘定を済ませ、外に出た所でマリベルは自嘲気味に笑って言った。
「なーんか。あたしら何もしてねーよな。ただあいつらと駄弁ってるだけじゃねーか」
「お、俺たちには俺たちなりの役目がありますって」
総悟がフォローを入れる。神楽も、それに続いた。
「ま、まあ平常業務サボって聞き込みする訳にも行きませんし…」
更に窘めるような口調で、アリエルは彼女に言う。
「私たちは私たちに出来ることをやるだけよ。戦闘に備えて鍛錬に打ち込みなさいな」
「あ、戦闘と言えば」
神楽が、何か思い出したかのように手を打った。
「私、あれから師匠に稽古つけてもらったんです」
「え、そうなの?」
総悟は、興味津々に彼女に聞いた。
「はい。まだ武器の扱い方とか基本的なことですけど…」
神楽はガッツポーズを取り、眼を輝かせて総悟を見つめた。
「私、皆さんの役に立ちますから!先輩も見ていて下さいね」
無邪気に笑う彼女の顔を見て、総悟は胸がとくんと高鳴った。
(男って女の子の笑顔に弱いよなぁ…)
総悟は内心で、男の性をしみじみと考えた。
高校の教室で、総悟は授業を受けていた。教師の高説を聞き流しながら、内通者について考える。
ビフレストの連中が怪しいと踏んでいたが、今回の捜査によって1カ月前にメンバーが全員殺されていたことが明らかになった。そしてよりによって拠点に通じるゲートを通た人数は0。このことから、消去法で総悟たちは内通者は上層部にいるとの結論に至った。現在レムとサナが団長に話を聴きにいっているそうだが…
(何か良い情報あれば良いけど…)
そう考えている間に、授業が終了する。チャイムの鳴るのと同時に、総悟の携帯に着信が入った。
(この番号は…マリベルさんか)
「どうかしました?マリベルさん」
「おう。レムとサナが何やら情報を掴んだそうでな。今夜こっちに来るそうだ。時間、空けておいてくれよ?」
「はい。それで情報って…」
「詳しくはあたしもまだ聞いていないが…2人とも上機嫌だったよ。良い収穫があったみたいだぜ」
それから通話もそこそこに切り上げ、席を立った。
先日のこともあってか、教室にはどこか暗い雰囲気が漂っていた。いつもの昼休みの喧噪が、落ち着いたものに聞こえる。
鋼牙と一部の取り巻きの女子は学校に来ていなかった。ショックの余り、登校する気になれなかったそうだ。
(…早く元気になってくれれば良いけど…)
1人で食事をしながら、総悟は窓の外を見上げた。




