33話
少し間が空きましたが投稿したいと思います
最近twitterで小説のことしか呟いていない…
あとそろそろ感想が欲しい
翌日。その日は平凡で、無魔の出現要請が全く下りない日だった。しかし空はどんよりと曇り、重苦しい雰囲気を醸し出している。今にも盛大に雨が降りそうな空を見上げながら、マリベルは言った。
「そろそろかな。捜査の開始時間」
日曜の昼下がり。2人は都心にいた。暖簾を下ろした飲食店が連なる道を、傘を片手に歩く。
「様子見に行くって話でしたけど…こんな所にあるんですか?」
内心で彼女の意外な野次馬根性に驚きながら、総悟は彼女と並んで歩く。
「ああ。確かこの辺に…」
マリベルは、寂れた雑居ビルに入った。そして階段の横にあったロッカーを開き、奇妙な仕草で印を結ぶ。
すると、ロッカー内の空間が陽炎のように揺らめき、ピンク色の異空間が出現した。マリベルは総悟に、ロッカーの中に入るよう促す。
彼女に連れられてロッカーに入ると、そこには広大な空間が広がっていた。グレーの無機質な地面。天井に聳える巨大なシャンデリア。そして空間の中心部には———
「はえーすっごい大っきい…」
この空間の大半を占める程のサイズをした、円形のドームがあった。横には無機質な材質で作られた、長方形の建物が幾つも隣接している。
「ここがビフレストですか?」
「おうよ。お、そろそろかな」
ドームの周囲には、数十人程度の少女が集結していた。みな手に得物を携え、露出の多いドレスのような衣装を身に纏っている。
集団を見渡していると、ふと顔見知りの顔を見つけた。手を振り、声を掛ける。
「おーい、2人ともー」
「お、マリベルとソウゴ君じゃん」
「見に来たんだ」
双子が走り寄ってくる。走る度に衣装から際どい部分が見えたような気がして、総悟は思わず眼を反らした。
「アンタも暇ねえ。こんな所うろついてたらまた始末書もらうわよ?」
レムに皮肉を言われ、マリベルはぽりぽりと頭を掻く。
「まあ顛末を見届けたら仕事に戻るさ。で、あとどれぐらいで突撃するんだい?」
「それがね…」
レムの歯切れが悪くなった所で、サナが会話を引き継ぐ。
「連中、一向に出てこようとしないのよ。だから今扉破壊して立ち入ろうとしてる訳。そろそろ本部から許可が下りる頃だと思うんだけど…」
そこまで言った所で、ドームに最も近い位置にいた隊員から声が上がった。
「魔導破壊兵器の使用許可下りました!」
「お、噂をすれば」
「さて、行きますか」
双子が集団に戻って行くのを見ながら、総悟はマリベルに言う。
「魔導破壊兵器って何です?」
「建造物の中には魔法やら加護やらで守られているモンがあるんだが、それらを引っぺがして無力化する兵器さ。ものによっては通用しないがね」
前を見ると、何やら巨大なクリスタルが、建造物に向けて極太の光線を放射していた。光が放射された壁面は、何かが焼けるような音を放っている。
「防衛魔法、並びに結界等施設内部の防衛システム、無力化完了しました」
「よし。爆裂魔法用意!」
合図と共に、施設の扉は派手な音を立てて破壊された。爆発の余波に、総悟は眼を瞑る。
爆発により、煙が立ち上る。風魔法でそれらを薙いでから、隊長格と見られる少女は得物の剣を掲げ、号令を掛けた。
「総員突撃!」
勇敢に瓦礫が四散する場所へ突撃する部隊を、総悟とマリベルは見守っていた。
大理石の冷たい床に、数十人の足音が響き渡る。捜査部隊は拠点内の最奥を目指し、駆けていた。突入して数分。隊長が、すぐに異変に気付く。
「おい」
「何でしょうか」
「やけに静か過ぎるとは思わないか?人の気配が全くしない」
拠点の中は、不気味なほどの静寂に包まれていた。聞こえるのは、隊員の息遣いと足音のみ。
「すでに逃亡してしまったんですかね?」
「それは有り得ないだろ。ここに入るためのゲートの通過記録をチェックしてみたが、私たちがここに来るまで誰一人も通ってはいなかった。それに加えて記録装置は魔法界にあるからここに引き籠っている奴等には改窮出来る筈が無い」
そう話しているとドームの最奥部に到着したので、扉を破壊する準備に入る。施設そのものが倒壊しないよう調整されて放たれた魔法は鉄の扉を打ち破った。
煙が部屋の中に吹き込み、霧のように周囲を包む。剣を一振りし、分散させる。
「おい!誰かいないのか…」
剣を片手に乗り込んだ隊長は、その端正な顔を歪め、口を抑えた。そうでもしなければ、この惨状に耐えきれず吐いてしまいそうだったからだ。
最初に出迎えたのは、酒粕のような甘い香りと鼻を突く腐敗臭だった。仕事場だったホールには何十もの、人型の腐敗した肉塊が捨て置かれており、大理石の床に黒い染みを作っている。
「一体…どういうことだ…?」
薄暗い大広間を、虫の群れが甲高い羽音を立てて飛び回っていた。




