30話
今回も性描写があるため、閲覧注意です。
あれから約2時間。すっかり絞り尽くされた総悟は、ふらふらとよろめきながら帰路に着いていた。
急に神楽が豹変したのはどうやらアリエルが間違えて渡した薬による影響だったようで、事が終わった後神楽は非常に申し訳なさそうに身を縮こまらせていた。
『ご、ごめんなさい…』
『い、いいよ気にしないで。俺も、悪くは思わないからさ』
落ち込む彼女を必死にフォローし、どうにか落ち着いたのを見計らって、総悟は彼女の家を後にした。
「ただいまー」
もたれかかるように扉を開け、玄関を潜ると、台所からコンソメの良い香りが漂ってきた。
「お、お帰りソーゴ。夕食、今出来た所だぜ」
「ありがとうございます。遅くなっちゃってどうもすいません」
エプロン姿のマリベルが、台所から顔を出して出迎える。総悟は洗面所で手洗いを済ませてから、台所に向かった。
「久々に作ったんで上手く出来たかは解らねえけどよ」
そう謙遜しつつ、スープが盛られた皿を食卓に並べる。入っている具を見るに、どうやらポトフを作ったらしい。
合掌をしてから、一口具を口にする。野菜の旨味とコンソメの風味が絡みあった旨味が、口内に溢れる。
「…美味しい!」
「へへっ。そうか?喜んでもらえたのなら何よりだぜ」
ある程度舌鼓を打った所で、マリベルは真剣な顔つきで総悟に語り掛けた。
「なあ、ソーゴ」
「何です?マリベルさん」
「今日の戦いで思ったことなんだけどよ…お前、何か思い詰めてることないか?」
ぴたりと、箸が止まる。
「今回の戦いに限らないが、お前は人が殺されている所を見て対して強く憤っている。まるで何かの強迫観念に憑りつかれているみたいにな」
「…人が殺されているのを見て怒るのは当然だと思いますけど」
「確かにそうだが、お前さんの場合は何か強い信念のようなものを感じるんだよ」
翡翠色の瞳が、じっと総悟を見据える。全てを悟られているかのような感覚に陥り、総悟はそっと彼女から眼を反らした。
「お前、昔何かあったのか?答えたくないなら答えなくても良いけどよ」
「…鋭いんですね、マリベルさん」
「アリエルから指摘されてな。相方として聞いておきたいと思ったんだよ」
総悟は少し間を置くと、どこか憂いを帯びた表情で語り出した。
「まだ俺が小学生だった時のことです。家族と旅行に行った時に交通事故に巻き込まれてしまったんです。俺は運良く助かったんですが両親は車の下敷きになって身動きが取れなくなって…。泣きじゃくる俺に向けて父さんはこう言いました。『お前は必ず正義の味方になれ』って」
「正義の…味方?」
「はい。父さんいつも言ってたんです。人の生命や財産を守ることが出来る人こそが正義の味方だって。だからマリベルさんと契約した時は本当に嬉しかったです。人を守る力を手に入れることが出来たんですから」
どこか遠い目で、総悟は語る。家族と過ごした幼少期の光景が、彼の脳裏に浮かんでいた。
「…なあソーゴ」
「何ですか?」
「お前が背負ってるもんは解った。良い人だったんだな、お前の親父さん」
微笑んでいたマリベルだったが、語気を切り替えて続ける。
「けどなぁ。だからって危険を冒す理由にはならねぇ。何度も言うようだが、絶対に無茶だけはするな」
「…解ってますよ」
口では釘を刺していたが、内心では彼の在り方に賛同していた。
(こいつ、そこらの魔法少女よりも戦士として出来てやがる…)
こいつと契約したのは正解だったな、と思った所で、マリベルは次の話題に移行することにした。
「話は変わるが、お前さっきまでアリエルに呼び出されてたよな?」
「あ、はい」
「えらくげっそりとして帰ってきたが一体何やってたんだ?お前ら」
「い、いや。それは…その」
歯切れが悪く、しどろもどろになる総悟に、マリベルは自身の予想を言った。
「もしかしてだけど…お前、アリエルとヤったのか?何かお前さんからうっすらと生臭い臭いもするしよ」
すると総悟は顔を真っ赤にし、早口で捲し立てた。
「ちちち違いますよ俺別に2人とヤってなんか」
「2人…?2人ってことは神楽も含まれてるってことだよな?何でそこであの子が出て来るんだい?」
にやりと悪戯げに笑うマリベル。失言してしまったことを察した総悟は、思わず手で口を覆っていた。
「い、いや…その、これは…」
「お前、2人まとめて美味しく頂いちまったのか。いやーお前さんも男だねぇ」
「ま、まあ頂いたというか頂かれたというか…」
「あー確かにお前そういう雰囲気出してるもんな。被食者って感じがする」
彼女の機嫌を損ねたのではとマリベルの顔色を伺う総悟だったが、マリベルはそれを一笑に伏した。
「ま、気にすることはねえぜ。セックスなんてやりたい奴とやりたい時にやれば良いんだ。相手を誰か一人に縛るなんてナンセンスだぜ」
けらけらと笑いながら、マリベルは総悟に言う。
「てな訳でお疲れの所悪いが今晩も魔力供給頼んだぜ。今回の戦いも消耗が激しかったんでな。早いトコダメージを回復したい」
「…精力的な意味でちょっと今日は…」
「精力剤やるよ。ドラゴンの肝の成分抽出して作った奴なんだが、一粒飲めばたちまち体力もアソコもギンギンになる優れものだぜ」
(色々な意味で奔放だよな、この魔法少女たち)
ポトフを口に運びながら、総悟は内心で溜息を吐いた。
「裏切り者がいる?」
ベッドに裸身を横たえながら、総悟はマリベルに問い掛ける。煙草を蒸かしながら彼女は言った。
「ああ。あたしらの中に情報を無魔側に横流ししている奴がいるらしいんだ」
マリベルは推測も交えつつ、集会の内容を総悟に説明する。
「今日みたいに無魔が大量発生した時に限って、この世界の住民が大量に失踪する事例がここ最近何件も起きているんだよ。まるであたしらの動きを陽動しているかのように、な
「失踪事件、ですか。そういえば以前からそういった事件が何件も起きてますね。今晩のニュースでもバス一台と乗ってた乗員乗客全員が失踪したって報道してましたし」
先日バスで地方に行くと言っていたクラスメイトの安否が、ここに来て心配になってくる。
あれからどうにか説得出来ないか努力はしたが、「今更ライブをキャンセルして、地方の先輩に迷惑を掛ける訳にはいかない」と一蹴されてしまい、総悟は黙るしかなかった。
「けど色々と不自然なんだよな、これ」
「何がです?」
「最近になって発覚したって話だったがどう考えても遅すぎる。本腰を入れて調べりゃすぐに解ることだろうに」
マリベルは煙草を灰皿に押し付けて消火すると、ベッドに裸身を横たえた。
「もしかしたらその裏切り者が今まで情報を握り潰していたのかもしれねぇ。そう考えりゃ色々と納得が行く」
マリベルの心には、本部への不信感が募りつつあった。情報の掌握、これだけの悪事を実行出来る人間は、自ずと限られる。
「諜報班、或いは上層部の人間が臭いな」
「…マリベルさんはこれからどうするんです?」
裏切り者が所属している部隊に目星を付けた所で、どのような方法を用いて調査するのか。下手に関わった所で、尻尾を掴めないのは明白だった。
「あたしなりに調査を進めるさ。不信感抱いてんのはあたしだけじゃないだろうし、声掛けりゃ協力者も何人かは集まるだろう」
「だったら俺も協力しますよ。声掛けするんなら1人でも多い方が良いでしょ?」
マリベルは軽く笑い、総悟の頭を撫でてから言った。
「ありがとう。学業にさしつかえない程度に協力してくれ」
マリベルはベッドから起き上がり、バスタオルを体に巻いた。
「お前明日学校あるし、今日の所はこの辺にしとくか」
シャワーを浴びるために一階へ向かった彼女を見届けた後、総悟はマリベルの話の内容を整理していた。
(裏切り者、か)
これからは彼女の言う通り無魔に通じている者を炙り出すことになるのだろうが、魔法界に見知った人間がいない総悟にはどの人物が怪しいか全く検討もつかなかった。
どう炙り出すか算段を立てていた所で、マリベルが部屋に戻ってきた。
「言い忘れてた。お前も一緒に入れ」
「はい?」
「ほら。この世界にゃ裸の付き合いっつーもんがあるそうじゃないか」
「いや、それ同性同士に限った話ですから…」
「今時そんなのに拘ってる奴はモテねーぜ?批判の対象になっちまうこともあるらしいし」
「はあ…」
「ほら。良いから来いって」
マリベルに唆され、総悟は渋々立ち上がった。
「ま、さっきも言ったように怪しいのは諜報班か上層部の連中だな」
総悟に背中を洗ってもらいながら、マリベルは言う。
「非魔法界の情報は大体が諜報班から伝達される。情報の中には当然無魔の最近の動向も含まれているんだが、今回はその部分が歪曲されていた可能性がある訳だ」
そこまで説明した所で、彼女は総悟に交代するよう促した。入れ替わった所で、説明を再開する。
「諜報班以外で無魔の情報を知ることが出来るのが、上層部の人間だ。収集した情報はまず本部の方で取捨選択される。つまりは意図的に情報を捻じ曲げることが出来ちまう訳だ」
マリベルは手慣れた手付きで、総悟の背中を洗って行く。大方洗い終わった所で、彼女は彼の股間に手をやった。
「ちょ…!」
「前者ならまだ何とかなるが後者だとそうも行かねえ。何せ上級の方々だからな。権力で全部握り潰しちまう」
「いやいやいや。普通に説明しながら何洗ってんすか!」
「何って…ナニだが?」
「ナニだが?じゃなくて!」
「ベトベトになってるからな。モノは清潔に保っとかないと駄目だぜ?」
そう言ってマリベルは丹念に総悟のソレを洗い出した。入念に揉みしだき、上下に漉く。
「あっ…ちょっ…マリベルさん…そこはっ…」
「とはいえ、どこの部署の連中が怪しいかは検討はつくんだが、どの個人が怪しいかは解らん。他の部署の連中とはそこまで交流がある訳じゃないからな。よし、この辺で良いだろう」
そう言ってマリベルは総悟のそれから手を離したが、彼のそれは未だ衰えていなかった。小さな体の割には大きな男の象徴は、熱を持って脈打っている。
「…すっかり元気になったな。もう一回戦、する?」
「あ、はい。宜しくお願いします」
マリベルは床に寝そべって、股を開いた。




