27話
大学の新学期が始まるので、投稿ペースがまた落ちるかもしれません
アリエルをキャリヤー付きベッドから、彼女の自宅のベッドに移し替えた所で、フローレンスは溜息を1つ吐いた。
「怪我は完治しましたけど今日の所は安静にして下さいねー。万が一のことがありますから」
フローレンスはマリベルに回復魔法をかけながら、アリエルに言う。暗く俯いた顔で、アリエルは頷いた。
「ええ。解ってるわよ」
彼女の顔色を窺ったフローレンスは一瞬顔に憂いを浮かべた後、部屋の扉へ向かった。
「…では、お大事に」
白衣の取り巻きを引き連れて、フローレンスは退却した。扉が閉まってから数刻の間の後、アリエルは拳を壁に叩きつけた。
「……クソッ!」
掛け布団を強く握り締めながら、彼女は身を震わせていた。身を焼くほどの怒りが、彼女の胸中を支配する。
彼女は自身が許せなかった。憎い相手に遅れを取り、なおかつここまでの傷を負ったことは、彼女のプライドを酷く傷つけた。
「師匠…」
「よせ」
声を掛けようと彼女に近寄ろうとした神楽を、マリベルは引き留める。
「今は独りにしてやるべきだ。ほとぼりが醒めるまであたしらの家にいな。良いよな?ソーゴ」
「あ、はい」
家主の確認を取った所で、マリベルは2人の契約者を連れて玄関へ向かった。
「じゃあな。暫くの間神楽借りるぞ」
「…ええ」
夕暮れの中で幽鬼のように佇む少女から逃げるようにして、3人は部屋を後にした。
「なあお前ら」
総悟の自宅。リビングでくつろいでいる2人に向けて、マリベルはおもむろに口を開いた。
「何でアイツがあんなに無魔を憎んでるのか知ってるか?」
「…知りません」
「どうしてです?」
「あいつ、幼い頃に家族を殺されてるんだよ」
絶句する2人に向けて、マリベルは続ける。
「10年前、魔法界で大規模な無魔の侵攻があってな…その当時街の護衛をやっていた母親と後方支援に回っていた父親を眼の前で殺されたんだ。町の防衛には成功したが…失っちまったモンは二度と元に戻らねえ」
灰皿に煙草をぐりぐりと押し付け、新しいものに火を着ける。
「それからさ。あいつが無魔に対して異常なぐらいの憎悪を向けるようになったのはな」
「そんなことが…」
口から紫煙を吐き出し、マリベルは神楽に向けて言った。
「なあカグラ」
「何ですか?」
「今回はそうじゃなかったが…あいつ、無魔の凶行を見ると脇目も振らずに暴走しちまうことがあるんだ。そん時は契約者であるお前が止めてやってくれないか?」
「止める、ですか…」
「ああ。偽装錬器の弾薬に麻酔弾があるんだが…あいつが我を忘れているようならそいつを撃ち込んでやってくれ。それぐらいしかあいつを止める術はねえ」
マリベルは灰皿に押し付けて煙草の火を消すと、立ち上がって言った。
「そろそろあいつも落ち着いた頃だろう。送ってくぜ」




