17話
今回は久々の戦闘パートです。
上手く描けてるか不安なので、アドバイスを頂ければ幸いです。
「ソーゴ、無魔が出た!」
ソファに腰掛けてテレビを見ていると、2階からどたどたと音を立ててマリベルが駆け下りて来た。
「今しがたコイツに反応があった。恐らく今回のは虚空から飛び出して来た奴らだ」
そう言ってマリベルは、方位磁針のようなレーダーを総悟に見せた。
無魔探知機——無魔が出現した際にその位置を知らせる魔道具である。無魔の出現を知らせる他、他の魔法少女との連絡機能も搭載していた。
「反応が複数のポイントにあるが、そこは他の魔法少女が向かったそうだ。あたしらはここから最も近い公民館付近に向かう。準備はいいな?」
「はい、マリベルさん」
家を飛び出し数分後、無魔の出現場所に到着した。場所は総悟の自宅からそれ程離れていない住宅街だった。そこでは人型の大きさの無魔が4体程民家の屋根に陣取って人間の死体を貪り喰っており、その周囲では白い鳥達が人間の子供と思しきものを啄んでいた。
「酷い…」
その惨状を見て、総悟は拳を固く握り締めた。憤怒に駆られる少年の傍らで、マリベルは冷静に敵の数を分析する。
「Fクラスの群れが一群とCクラスが3、4体か。あたしらだけじゃ少し厳しいな。ん?あそこにいるのは…」
その人物はマリベルから見て左にある家の屋根にいた。恐らく彼女も敵を分析しているのだろう。
「お、アリエルじゃねーか。もう着いてたんだな」
見慣れた友人の姿を確認したマリベルは、彼女の元へと走って行く。
「マリベルとソウゴ君か」
2人を見るなり、アリエルは嬉しそうに微笑む。
「丁度良かったわ。1人であの数を相手するのは骨が折れるもの」
「1人…?」
総悟はきょろきょろと周囲を見回す。
「神楽ちゃんは…まあ昨日の今日じゃ無理か」
「まあね。ロクな訓練も出来ていないし、戦闘に出すのは危険だもの」
アリエルは杖を虚空から取り出すと、くるりと空中で1回転させた。
「さあ、行きましょうか」
3人は獲物を構え、叫ぶ。
「「ウェイクアップ!」」
「ライズアップ!」
眩い光が3人を包み込み、その姿を超人へと変えて行く。
「屋根の上にいる奴らはあたしとアリエルがやる。ソーゴ、お前は雑魚の群れを頼む」
「はい!」
マリベルが指示を飛ばす。ソーゴはそれに従って規律正しく飛ぶ鳥の群れに弾丸を撃ち込み、魔法少女2人は民家の屋根で死体を貪り食らっている人型無魔に強襲を掛ける。
屋根に跳び移るなり、生首に噛り付いていたアライグマのような顔をした無魔に、一発蹴りを入れる。
「そら。お食事の時間は終わりだぜ?ご退出願おうか」
生首を捨てて襲いかかってきたアライグマを、マリベルは剣と体術でいなしていく。両腕を交差させるような引っ掻きを繰り出すアライグマ。そいつに向けてマリベルは相手の身体を駆け上がりつつのサマーソルトで顎を蹴り上げ、怯んだ所に剣で斬撃を浴びせて行く。
「さ、お前の相手は私よ」
一方でアリエルは、鼬の顔をした人型の無魔相手に立ちまわっていた。そいつな爪で真空の刃を生み出し、アリエルに向けて放つ。しかし、アリエルはそれに対して土の魔法を詠唱。盾を瞬時に錬成し、ガードする。その盾をそのまま鼬人間に向けて投げつけ、衝撃に怯んだ所に火炎球を連続で当てて行く。反撃の隙も与えられない無魔は、体力をじわじわと削られつつあった。
きしゃあああああああああ…
しかし、そこで新手が現れた。アライグマと鼬とは少し離れた位置にいた鼠の顔をした人型の無魔が、アリエルに背後から襲いかかった。鋭い前歯で彼女の背中を抉ろうと2本の脚で跳躍し、彼女に飛び掛かる。しかし———
「お前如きの気配に気付かないと思って?この下等生物が」
既に気配を察していたアリエルは、地面から巨大な氷柱を隆起させた。それに胸元を貫かれ、呆気なく鼠は絶命する。
「ん?」
アリエルが鼠に気を取られた隙に、鼬人間は反撃に出た。真空を身に纏い、アリエルに向けて突貫する。直撃でなくとも真空の刃に触れれば、大ダメージは避けられない。
「あら。危ない危ない」
だが玉砕覚悟の特攻は、彼女に届くことは無かった。足場と虚空から無数の鎖が出現、鼬を拘束する。関節に負担がかかる体制で縛られ、鼬人間は苦悶の鳴き声を上げた。
「さあ、そろそろ幕を下ろしてあげる。お前の卑しい人生にね」
アリエルは杖を回転させ、地面を数度小突いた。すると鎖は鼬人間を折り畳むかのように動いて行き、関節を物理的には無理のある方向に折り曲げる。
そして、それは訪れた。鼬人間の体は鎖の束縛に耐えられなくなり、鈍い音と共に全身の関節が破壊された。それに伴って、口から白い粒子が鈍い音と共に吐き出される。
「汚い噴水ねぇ」
粒子を噴き上げて昇天するそれに、アリエルは残虐な笑みを向けた。
蠢く鳥の群れに爆撃を撃ちながら、総悟は残酷なショーの一部始終を横目で見ていた。
(エグいなあ…)
鳥型無魔との攻防は、大詰めを迎えようとしていた。爆撃であらかた斃された無魔達は残りの頭数を束ね、敵に向けて一斉に突撃する。その様はまるで、1本の矢のようだ。
「えーっと確かこういう時には…」
総悟は走り周りながら、銃床にマガジンを挿入する。セットが完了した所ですぐさま銃口を無魔達に向けた。
「当たってくれ!」
放たれた銃弾は群れの中の一体に直撃し、爆ぜた。爆風が群れごと焼き尽くし、まとめて昇天させる。
「よ、よし」
総悟は反動で尻餅をつきながら、ぐっとガッツポーズを取った。
超爆裂弾———爆裂弾よりも高威力の魔弾だが、その分反動も大きい。そのため、殆どは止めに用いられる弾丸だった。
「向こうも良い調子みたいだな」
一方でマリベルはアライグマに加えて、新に参戦した鹿型の無魔を相手取っていた。そいつは体こそ人間と同じ二足歩行だったが、首から上は無機的な鹿の顔だった。
鹿人間は頭部を掲げると、角から電流を放出する。
「よっ!」
マリベルはそれを側転で躱し、その勢いのまま近くにいたアライグマに蹴りかかる。アライグマを吹き飛ばし、魔導錬器をソードフォームからロッドフォームに変形。鹿に向けて小型の火球を連射する。
「さあ、終幕だ」
マリベルは再び魔導錬器をソードフォームに変形。刃に魔力を収束させる。渦巻く魔力は赤く染まり、炎と化す。
「『炎神の(オブ)薙ぎ払い(シープアウェイ)』!」
マリベルは剣を構え、一回転した。刃に纏われた炎が燃え上がり、巨人の腕のように彼女の周囲を薙ぎ払う。手負いの状態であった2体にそれが回避出来る筈もなく直撃。瞬時に絶命した。
巻き散らされる粒子を見て、マリベルは呟く。
「こんがり焼けました、と。いやむしろ炭化してるか」
先程まで命だったものが跡形もなく消失したのを見届けてからマリベルは2人の元まで向かう。
「そっちは片付いたかー?」
「はい。終わりました」
「ええ。こんなの余裕よ」
総悟は肩で息をしながら、アリエルは余力が有り気に答える。
「アリエルは…大丈夫そうだな。ソーゴ、怪我は無いかい?」
「あ、はい。大丈夫です」
アリエルの魔法少女としての力量は深く知っているため、敢えて負傷の有無は聞かないでおく。
「生き残りは…いないようね」
懐から取り出した無魔探知機を覗き、生存している無魔の有無を確認する。反応が皆無だったので変身を解除した。
同じくして変身を解いた2人に歩み寄って言った。
「2人ともお疲れ様」
それから、総悟に向かい直って言う。
「ねえソウゴ君。少しお願いがあるんだけど」
「何ですか?」
「ちょっと買い物に付き合って欲しいの。君みたいな男手が欲しくてね」
「あ、はい。いいですよ」
マリベルの方を向いて確認する。
「いいよね?マリベル」
「おう。構わないぜ」
パートナーの了承も得られたので、アリエルは総悟の手を取った。
「じゃ、行きましょうか。ソウゴ君」
突然異性に手を握られて、総悟は心臓がとくんと高鳴った。
「は、はい!」
そのままどこかへ歩いて行く2人の背中を見つめながら、マリベルは呟く。
「全く…ソーゴ(アイツ)もどうして手握られただけで照れるのかね。昨日もっとハイレベルなことやったばかりじゃないか」
呆れたように言ってから、マリベルはアリエルの方を見て苦笑する。
「アリエルは…テンション上がってんな。まあアイツソーゴみたいなのが好みらしいししゃーないか」
独り言を言っていても仕方が無いので、自宅に引き上げることにする。そこであることに気付き、既に遠くなった2人の背中を慌てて追いかけた。
「ソーゴー鍵渡してくれー!」
奈須山駅行きのバスは、閑静な住宅街を進んでいた。エンジン音が支配する静かな車内には20人程度の客員が乗車している。
物静かな日常の一コマを、フェンリルは遠方から観察していた。自らに隠密の魔法を掛け、超人じみた脚力でバスを追跡する。その様はさながら、血に飢えた獣。
「へへっ。コイツは…料理しがいがあるな」
フェンリルは塀伝いにバスの前方に踊り出た。運転手がブレーキを掛ける前に素早く手で陣を切り、巨大な円を出現させる。
「な、何だコレは!?」
突如出現した得体のしれないモノに運転手と前の座席に座っていた乗客は狼狽する。急いでブレーキを掛けるが、もう遅い。
バスは円に呑み込まれ、跡形もなく消失した。
後部が呑み込まれた所で、フェンリルは掌を右耳に当てた。虚将に生まれ持って備わる同族との交信能力である。
魔力の波長を交信する対象に合わせ、意識を集中させる。数分程度で、交信対象であるロキと繋がった。
「母ちゃん、材料は届いてるかい?」
「ええ、バッチリよ」
「へへっ。俺に任せてくれればこんなモンよ」
手短に話を切り上げ、交信を終了する。それからぐっと伸びをし、塀から飛び降りた。
「さーて仕事も終わったし飯にするか。良い飯屋はねーかな」
1人の粗暴な青年は、昼下がりの住宅街をぶらぶらと歩きだした。




