序章
初投稿です。
全体的に誤字・脱字など拙い部分が多々ありますが、どうかご容赦下さい。
夕暮れの住宅街を、如月総悟は歩いていた。春の街は黄昏に沈み、オレンジ色の斜陽が辺りを照らしている。
苦手科目の課題や、中間考査等について考えながら歩いていると、不意に総悟は左側から何者かの強い視線を感じた。それはさながら値踏みするかのようだった。
左側に振り向くと、その視線の先―コンビニの駐車場に、視線の送り主と見られる一人の少女がいた。
服装は総悟の通う高校―星友学園の制服を着用しており、背丈は総悟よりも十数センチ下―おおよそ一三0後半に見えた。髪型はセミロングの茶髪で、頭頂部に猫耳のような癖毛があった。そして顔立ちは鼻筋が通っており、美少女というに相応しい容姿であった。
(音川先輩…)
総悟は彼女を知っていた。
音川魔理。最近一つ上の学年に転入して来た転校生で、その容姿から学園の男子達の間では持て囃されている。何人か彼女に告白したが今の所は全員撃沈したと、総悟は友人から聞いたことがあった。
しかし、総悟は音川と知り合ったことはなかった。精々一度か二度、遠目で見かけた程度である。
何故こちらを見つめるのか疑問におもっていると、彼女は総悟に駆け寄り、言った。
「なあ、あんた。初対面で悪いが、頼みがある」
「な、何ですか…」
同じ学校の人間とはいえ、ほぼ初対面の人間に一体何を頼むのか、と内心疑問に思っていると、音川はこう言った。
「明日の放課後、屋上に来てくれないか?あんたと話したいことがあるんだ」
―唐突な話に、総悟の思考回路は一瞬フリーズした。そして、話の趣旨を理解し、途端に顔が熱くなった。
「…何か都合が悪いことでもあるのか?」
「い、いえ!大丈夫です」
手をぱたぱたと振りながら、彼女の誘いに肯定の意を示す。今の自分の姿はすごく情けなく、先輩の目に映っているだろうと総悟は頭の片隅で思った。
「あ、そうだ。お前さんの名前を聞き忘れていたな。あたしは音川魔理っていうんだが」 「如月総悟、です」
「ソーゴ、か」と、名前を口の中で反芻した後、音川は「じゃあな」と、別れの挨拶を残し、コンビニの右側の道へと去って行った。
(マジですか…)
夕暮れの道に一人取り残された総悟は、寸刻の間茫然としていたが、徐々に嬉しさが込み上げて来ることに気付いた。やっと来た…俺にも春が来た…
沈みけた夕日に向けて、少年はスキップ交じりに歩き出した。
この時彼は気付かなかった。少女との出会いが自らの運命(Fate)を大きく変えたことに
翌日の昼休み。星友学園の1―Bのクラスで、総悟は友人である加賀美鋼牙と談笑していた。
「ねえ、鋼牙」
「何だ?如月」
「音川先輩について、何か知ってることある?」
彼、鋼牙は学園内でも屈指の色男であり、何人もの女子生徒を侍らせていることでも有名である。そのため、学園内の女子生徒の情報に関しては、男子の中では誰よりも博識なのだ。
「ん?まぁ知ってる限りのことなら教えてやるけどよ…珍しいな、お前がそんなこと聞くなんて。」
「うん、実は…」
総語は、昨日のあらましを鋼牙に説明した。説明している間、鋼牙は神妙に、頷きながら聞いていたが、話し終えると、破顔し、総語の肩を力強く叩いた。
「良かったじゃねえかよ!音川先輩っつったらこの学園有数のカワイコちゃんだぜ?そんな娘から告られたとか男冥利に尽きるってヤツだろ?」
このこのと頭を小突く鋼牙に、総語は反論した。
「で、でも呼び出されたってだけで告白って決まったわけじゃ…」
帰宅語、冷静に考えてみたのだが、そんな旨い話がある訳ない。ドッキリか何かだろうとの結論に、総語は至ったのだ。しかし鋼牙は頭を振った。
「いーや告白に決まってる。お前そこそこ一部の女子から人気あるんだぜ?だからあの先輩もお前に一目惚れしたに違ぇねぇ。自分にもっと自信を持てよ」
友人の激励に、総語は少し胸の中が熱くなるのが解った。
「そう、なのかな…」
「そうだよ。まぁもし嘘だったらそんときゃ飯でも奢ってやるさ」
好い友人を持った、と総悟は思う。異性を引き付け、しかし同性からは嫌味だと思われない、小ざっぱりした男。それが、彼の親友だった。
「ありがとう。何か自信出たよ」
「いいってことよ」
教室のスピーカーから、予鈴が響く。どうらや、昼の休憩は終わりらしい。
「おっと。次は教室移動だったな。放課後、しっかりやれよ?如月」
「うん、大丈夫さ」
会話を交わした後、二人は各々の机に向かい、授業の準備を始めた。
放課後。総悟は約束に従って、屋上に来ていた。眼下のグラウンドでは、運動部が練習に明け暮れている。
沈み行く太陽を背に、目的の人物は直立していた。
小学生程度の身長で、頭頂部に猫耳のような癖毛がある少女。間違いなく、音川だ。
彼女はどこか儚げな顔で立ち尽くしていたが、総悟を見つけると、彼の元へと歩みよった。
「約束通り来てくれたみたいだな。」
「あ、あの、話というのは・・?」
総悟は頬を紅潮させ、ごくりと唾を飲む。加賀美から自信を持てと言われたが、いざその場に立つと、それは容易でなかった。
顔が火照り、心臓が激しく脈打つ。総悟は、極度の緊張に押し潰されてしまいそうだった。
不安に。しかし、それを期待しながら音川の返答を待つ。しかし、彼女が口にしたのは、彼の想像を超えたモノだった。
「お前、あたしと契約してくれないか?」
「ふぇ?」
唐突で、意味が不明な話に、総悟は妙な声が出てしまった。
「え?あの・・・セールスですか?」
思わず、間抜けな質問を口に出してしまうが、音川は頭を振った。
「残念ながらあたしは物売りじゃないぜ。あんたに売り付ける商品は持ってない。むしろ買い取る側さ。」
「買い取る?」
「そう。お前さんをな」
新手の告白か、今時の女子は告白の事を契約と呼ぶのか、等と総悟は思った。――突如
ぶおおおおおおおおおおぉ…
―ソレは咆哮だった。地獄の底から響くような、巨大な怪物が吠えるようなソレは学校中に木霊し、総悟の鼓膜を激しく叩いた。
「―っ!?」
咆哮と共に訪れた悪寒に、総悟はへたり込む。喩えるならソレは、何百匹もの虫が全身を這い回るような感覚に近い。
しかし、眼下の生徒達は咆哮が聞こえなかったかのように各々の活動を続けていた。最も、今の総悟はそれを気にするだけの余裕も持ち合わせてはいなかったが。
「ほら、しっかりしろ」
音川が、掌を総悟に向けて翳す。すると、たちまちの内に悪寒が消え失せた。
「―丁度良い所においでなすったな。説明する手間が省けたぜ」
音川はニンマリと笑うと、何やら印のようなものを結び出した。―刹那
「なっ!」
二人の体を白い光柱が包み込んだ。眩く、しかし、目に痛くないそれは、二人の体を浮遊させ、遥か上空へと上昇させた。
数分と掛からず、雲海へと到達する。刹那、全身を強く投げ出されたかのような衝撃と、紫の閃光に襲われ、総悟は気絶した。
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