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復讐者はこの世界でも頂点を目指す  作者: くまけん
第六章 〜迫り来る四つの色〜
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第96話 「その『本心』を信じるな」

 先手必勝。逡巡する時間すら必要ない。《(しつ)》で偽ミリーナの前へ近付き、首を掴んだ。後は《(あく)》でその首を握り潰すだけだ。

「っ……!? アレ……イヤ……!? やめ……て」

 偽物は苦しげな表情で俺の腕を掴む。俺の情に訴える作戦か? そんなものに俺は絆されない。絶対に。

「い……たい、よ!」

 偽物は俺を蹴飛ばして俺から離れた。俺の《(あく)》に耐え、腕を引き離すなんて。とんでもない力だ。


「かはっ……かはっ……! どうしたのアレイヤ!? 私だよ! ミリーナだよ! 忘れちゃったの!?」

 首元を押さえ、息を整えつつ偽物は言う。黙れ。お前はミリーナじゃない。俺を騙そうとするな。

「『サンダー・グローブ』

 俺の両手に電気が走る。人殺しに適した雷魔術だ。

「アレイヤ……なんで」

「うるさいな。偽物のくせに、俺の敵のくせに、ミリーナのふりをするな!」

 消えろ。消えろ消えろ! 俺の前から。


「……もしかして、これがグリミラズ先生の言ってた『魔術』? アレイヤ、魔術師に何かされたの?」

 何を言っているんだ。俺が誰に何をされたって? 俺は何もされていない。俺は正常だ。

「そっか。そうだよね。そうじゃなきゃ、優しいアレイヤがこんな事する訳ないもん。大丈夫だよ、アレイヤ。私が今助けるから。少し大人しくしててね」

 偽物は立ち上がる。何だこいつは。俺を心配している? ミリーナの偽物のくせに。

 それにしても首を絞めたのにダメージが薄いな。人術の強化の効力か。四色はグリミラズの《姿植(ししょく)》で才能を植え付けられている。こいつも例外じゃない訳だな。


「先生! グリミラズ先生! 先生ならアレイヤを元に戻す方法を知ってますよね? 私がアレイヤを抑えておきますから、その隙に……」

 偽物は背後に向けて叫んだ。しかし視線の先にグリミラズはいない。

「ってあれ!? 先生どこ行ったの!?」

 グリミラズは『アブダクト・ブラックミスト』で何処かへ転移した。俺達だけを残して。

「もー、こんな時に! 仕方ないな……私一人で何とかするっ!」

 偽物は腰を低くして構えた。スマートな繊維が鋭く光る。

 さっきからこいつの所作がミリーナと瓜二つだ。偽物なのに真似事の完成度が高すぎる。

 何故だ? どうやってミリーナの印象を学んだ? ミリーナは死んだのに。

 おかしい。いやおかしくない。おかしくない、はずだ。


「行くよ、アレイヤ! 《(しつ)》!」

 偽物はぴょんと床を蹴り、目にも留まらぬ速さで走り出す。《(しつ)》は人術の基本中の基本だ。そして、そのスピードについていくために《光追眼(こうついがん)》はある。

 俺の目なら対応出来る。人術対決で負ける訳にはいかない。俺はあの教室で一番の人術使いだったんだ。

「《(ごう)》!」

 偽物の腕が俺を襲う。腕力強化の《(ごう)》を上乗せしたパンチだ。だが、遅い。

 俺は眼前の腕を掴んだ、物凄い力だが、押さえきれない程じゃない。握った箇所が袖だったから『サンダー・グローブ』の電流が流れていないが、少し手をズラせば電気が届く。


「流石だねアレイヤ。でもっ!」

 偽物はニヤリと笑い、手首をくるりと回転させた。そして俺の襟を掴む。そのまま腕を曲げて、俺の体を引き寄せた。

「せーのっ!」

 偽物は俺を背負い投げした。打撃かと思いきや投げ技。完全に意表を突かれた。受け身は何とか間に合ったが、思いっきり背中を打ってしまった。

 そして、体勢が悪い。倒れた状態で上を取られた。これでは攻撃され放題だ。


「もっと行くよ!」

 畳み掛けるように偽物は腕を振るう。流石に何度も食らってやる気は無かった。

 体を転がして、俺は追撃を避けた。すぐさま立ち上がり、体勢を整える。

「調子に乗るなよ」

 これ以上、ミリーナの姿でミリーナのように戦うな。目障りだ。偽物なのに。偽物なのに。偽物の……はずなのに。


 『ファイア・バレット』。魔術名は名乗らない。言葉より先に殺意を乗せて火球を放つ。

「!?」

 偽物は大振りな動作で火球を避ける。魔術に慣れていないのか、所作に動揺が混じっている。

「何、今の……? 魔術!? アレイヤが!?」

 偽物は震えた声で言った。何を驚いている? 俺が魔術師である事はグリミラズから聞いてるんじゃないのか? 敵である俺の情報だぞ。知らずして戦えると思っているのか。


「…………」

 もう一度だ。指先に魔力を集中させて、『ファイア・バレット』を撃つ。弾速は上げたつもりだったが、今度は向こうが的確に対応してきた。炎の軌道を見切り、余裕を持って回避される。

「アレイヤ……いつの間に」

 偽物は俺から距離を置いた。俺を観察するように見つめ、深呼吸する。

「そっか。やっぱり凄いねアレイヤは。何でも出来ちゃうんだ。昔からそうだったよね。人術でも結局、私はアレイヤに届かなかったな……」

 黙れ。黙れ黙れ黙れ。ミリーナみたいな事を言うな。お前が俺の何を知っている。

「でも、今だけは負けない! 今度は私がアレイヤを助ける番だから!」

 やめろ。

 その懐かしい優しさを、俺に向けるな。

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