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復讐者はこの世界でも頂点を目指す  作者: くまけん
第四章 〜俺達はもっと強くなりたい〜
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第49話 「やってみなければ分からない」

 ハナミさんが作ってくれた大量の料理を平らげて、俺とエムネェスは昼休みを終えた。会話もそこそこに、俺達は食堂入り口で別れる。

「こんなんで良かったのか?」

 ただ食事して雑談しただけだった。デートと呼ぶにはあまりに簡素で短い。それでもエムネェスは首を縦に振った。

「うん。満足したわ。おかげでもう寂しくないもの」

「そうか。ならいいけど」

 エムネェスが何を求めてたかは知らないけど、彼女が満足したならそれでいい。

 エムネェスは大きく手を振って去って行った。彼女も彼女なりに一歩を踏み出している。俺ももっと前に、前に進みたい。


「精神魔術……物体じゃなく精神に干渉する魔力……」

 エムネェスの研究について俺は思い出しながら呟いた。他者に感情を強制する魔術があるのなら、人術でも応用が効くかもしれない。グリミラズも少し話してた気がする。人の心に作用する、禁じられた人術があると。

 俺なりに解釈して、上手く人術として昇華出来ないだろうか。攻撃しなくても戦える術があれば、何かと融通が効くはずだ。


 またやってみたい事が増えた。誰かに協力して貰って実用化したい。

 そんな時、訓練場から爆音が聞こえた。それも一度や二度じゃない。戦争でも起きたのかと錯覚する程の衝撃が肌を震わせた。

「な、何だ!?」

 慌てて俺は訓練場の扉を開ける。その瞬間、突風が俺を吹き飛ばした。敢えなく壁に激突した俺の前では、ザハドとキョウカが戦っていた。


「ははははは! また強くなったねキョウカ!」

「偉そうにしないで準優勝サマ! 私は既に貴方より強い!」

 それはまさしく魔術師同士の戦いだった。実は初めて見るかもしれない。俺みたいな素人ではない、熟練の魔術師同士が一対一で戦う光景は。

 体育祭の時は自分の事で精一杯で、他の生徒はあんまり見てられなかった。だから他の魔術師同士……しかも、四つ星の天才同士が覇を競う場面となれば、なかなかお目にかかる事は無い。


 炎が荒れ、地面が揺れ、風は騒めき、岩石が飛び交う。天変地異にも等しい現象を、たった二人の学生が引き起こしていた。人の域を超えた神々の所業のような攻撃。それらを全て、ザハドとキョウカは防護魔術で防いでいる。まさに互いに譲らない接戦。この攻防は永遠に続くかのように思えた。


「おや? アレイヤじゃないか。アキマの研究室に行ったんじゃあなかったのかな?」

 ところが俺を見つけたザハドは戦いの手を止めた。水を差されて興醒めと言いたげに、キョウカも魔術の行使を止める。たちまち訓練場は静寂を取り戻した。

「色々あって。二人は何してたんだ?」

「見れば分かるだろう? キョウカと手合わせして貰ってたんだ。君とやった時みたいに、全力で暴れたくてね」

 ザハドはキョウカと実戦形式の訓練か。流石うちのクラスが誇る天才二人。魔術体育祭決勝戦をも凌駕するような激戦だった。

「何が全力よ。貴方まだ奥の手を隠してるくせに」

「バレてたか。でも勘弁。あれは隠しておきたいんだ。諸事情あってね。ごめん」

 キョウカの追求をザハドは謝罪でくぐり抜けた。ザハドの奥の手? 何だろう。気になるけど、答えてくれそうにはなかった。


「しかし凄かったな。訓練場が壊れそうな勢いの戦いだった」

「いやいや。心配無いよアレイヤ。この訓練場は五つ星クラスが暴れても耐える……気がする」

 気がするだけかよ。

 でも現に、二人の訓練の激しさにも壁や天井は屈していない。扉を閉じている限りは、第三者を巻き込む心配は無要そうだ。

「そうだ。アレイヤも一緒にやるか? キョウカがこの前のリベンジをしたげな顔だし。なぁ、キョウカ?」

 ザハドは俺も実戦訓練に誘ってくれた。キョウカは「別にそんな顔してない」と不満そうだけど。

「望むところだ! ちょうど試したい技があったんだ」

 最低限の魔力消費で撃つ具現化魔術。ベクトル変換による魔術無効化。人術を応用した精神魔術。みんなの協力で、新たな成長の可能性が見出せた。今度は実践してみる時間だ。


「あっそ。じゃあ私相手に試してみる? そんな余裕があればの話だけど」

 嫌々そうな口ぶりながら、キョウカはやる気だった。殺気の乗った視線を俺に向けてくる。

「……今日のキョウカ、いつもより怖くない?」

「はははっ! 正鵠を射てるね。この前の『決闘』は、慢心したからキョウカは負けたのさ。アレイヤが魔術で反撃するなんて思わずにね。でも今は違う。キョウカは君を認めた。警戒した彼女は強いよ? ラッキーは味方しないと思った方がいい」

 ザハドは警告した。キョウカの実力を評価してるからこその発言だ。

 確かに、入学当初の俺は魔力に乏しく、魔術での応戦は想定外だったろう。その油断が俺を勝利に導いた。ならば今は……魔術体育祭優勝という功績を得てしまった今は、運が絡まない。


「もしかして俺負ける?」

「十中八九。だって君、魔術の応酬で戦おうとしてるだろう?」

 ザハドに言われ、俺は頷いた。当然のように俺は魔術で戦う気だった。

「それじゃ無理さ。君はこの世界に来る前、つまり魔術師になる前は、具現化魔術のぶつけ合いなんて戦法は取らなかったはずだ。慣れてない戦法でキョウカに挑むなんて無茶だよ。しかもキョウカは具現化魔術の達人。不利な土俵が過ぎる」

 言われてみればその通りだ。前の決闘は、人術という俺の得意分野で挑んだから勝ちの目を掴めた。わざわざ不利な戦い方をすれば勝てなくなるに決まってる。


 でも、俺に有利な戦法ばかり練習していても、それは修行になるのか? 敢えて不利な条件で頑張るからこそ修行になるんじゃないのか?

「それでもいい。やらせてくれ、キョウカ」

 俺はキョウカにお願いした。彼女はその言葉を待ってたとばかりに小さく笑う。

「いいわ。徹底的に痛めつけてあげる」

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