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クローバー  作者: 瀬賀拓
7/11

第6章 沙紀の誕生日

その頃、茜は長山と池袋で昼飯を食べていた。


「沙紀から聞いたよ。」


茜は長山に問いつめた。


「ん?何を?」


茜はかなり不機嫌になっていた。


「ハヤケンと沙紀が知り合いって事よ。なんで教えてくれなかったのよ。」


「えっ!?言ってなかったけ?」


言ってたとばかり思っていた長山はかなり戸惑っていた。


「言ってない!!」


断言する茜に長山は記憶をたどっていた。


「あっ!?言ってないね。ごめんね。」


「全くもう。ハヤケンと沙紀ってどういう関係なの?」


茜は二人の関係に興味津々だった。


「アイツらは中学からの友人。中高ずっと同じクラス。しかもウチの高校は中高一貫校じゃないから凄い。」


「小学校6年間同じクラスも難しいのに中高一貫校じゃない学校で6年間同じクラスは凄いよ!!沙紀とハヤケンは高校ではどういう感じだったの?」


本当は恋愛関係を聞きたかった茜だったが、中高一貫じゃない学校で6年も同じクラスと聞き、驚いた。


「沙紀はモテたしスポーツ万能で優秀だった。特に数学と国語は凄かった。一方の早川はクラスのムードメーカーで典型的な三枚目キャラ。運動神経は中学の時野球やってたらしいく意外と普通。勉強は歌と現文ならクラスのトップだったけど数学はその逆。よく、沙紀に助けてもらっていたな。なんせ、数学は毎回進級危なかったから。」


その後も長山は健一の恥ずかしい過去を平気で暴露していた。いや、晃自身、健一に嫉妬を抱いてたのだろう。


その頃、健一は打球を頭に当て、慌ててホームに送球していた。


茜と長山は更に会話が弾んでいた。


「沙紀はやっぱりモテた?」


「そりゃあ、もちろん。」


「やっぱりね~」


「でも、沙紀ちゃんは高校時代、彼氏いないよ。」


長山の言葉に茜は驚いた。


「なんで!?」


「沙紀ちゃん曰く好きな人としか付き合いたくないんだって・・・・。」


「好きな人って……」


茜にはなんとなく察しがついた。


「早川に決まってるだろ。」


(やっぱり……)


「ハヤケンは沙紀の事をどう思ってるの?」


「あいつは親友と言い張っているけど多分好きなんじゃないかな~と俺は思うよ。」


「その根拠は?」


「男だけにしか解らない男の勘って奴かな。」


晃はそう言うとため息をつき宙を見た。


高一の夏、昼休みの向原高校屋上。


晃が、クラスメイトの沙紀を屋上へと呼び出した。


「長山君、話って何?」


そう言ったものの、沙紀は薄々感じていた。


「あのさ、後藤さん・・・俺と付き合ってくんない?俺、君の事、入った当初から好きでさ、・・・」


「長山君、嬉しいんだけど・・・ごめん。私、今、他に好きな人がいるの・・・」


中学、そして高校と女に苦労しなかった晃ではあったが、沙紀の時だけは唯一フラれてしまった。


「えっ、あ~・・・・そっか、・・・・」


あまりにも予想だにしなかった出来事に晃はショックを隠しきれないでいた。


「ごめん。・・・・これからも、友達として宜しく・・・・」


沙紀はそう言うと屋上から去っていった。




何も無かったかのように教室に戻り授業を受ける晃は沙紀の好きな人が直ぐ分かった。


(えっ、まさか、早川!?)


さっきから目の前の席に座る沙紀を見てると彼女はチョロチョロと早川の方を見ていた。


「・・・・・・」


それまでは、同中の仲間繋がりで互いに仲が良いと思っていた晃ではあったが、授業中沙紀が早川を見ている時の仕草は何となく違っていた。


一方の沙紀は野球の帰り道、健一の買い物に付き合い、自分も何か買おうと考えていた。


「そう言えば早川~何探してるの?」


「あ~浴衣だよ。」


「浴衣か~私も花火大会に向けて新しい浴衣なんか買おうっと。」


浴衣を探す二人、健一はおもむろに青の浴衣をとった。


「これにしよ。」


健一はそう言って試着室へと行った。


沙紀はまだ選んでおりピンク、赤、黄色の浴衣で悩みながらもとりあえず試着室に向かった。


そのとき、健一が浴衣を着てカーテンを開ける。


「沙紀どう?似合うか?」


浴衣を着こなしている健一に沙紀は惚れ惚れとして見ていた。


「早川にしては似合うんじゃん!!」


だが、素直にかっこいいよとは言わなかった。


「マジで!?じゃあこれ買おう~♪」


沙紀の言葉にはしゃぐ健一はこれに決めた。


「早川~私、3つの浴衣どれにしようか迷うから見て。」


高そうな浴衣に驚く健一は一瞬固まった。


「よし、見よう×2!!」


沙紀は隣の試着室に入り。着替える。


健一は私服に着替え浴衣をカゴに入れ、試着室をでた。


その時、隣の試着室のカーテンが開き沙紀がピンクの浴衣を着ていた。




「どう?似合う?」


「うん。良んじゃん?」


「本当に?次は赤ね。」


カーテンを閉め着替える沙紀。しばらくして着替え終わる沙紀。


「どう?似合う?」


「うん。良んじゃん。」


「ホントに!?じゃあ次は黄色着るね。」


またカーテンを閉める沙紀。


(早川の奴さっきから同じ返事ばっかり!)


「どう?似合う?」


「うん。良んじゃん?」


「本当に?てか、さっきから同じ返事ばっかり!」


「アチャーバレたか。」


アハハと笑う健一。


しかし、みなさんよ~く見ると健一は微妙に反応が一個だけ変わってますよ。


「もぉ~真剣に見てよ!!」


テキトーに言う健一に対し、沙紀は少々目くじらを立てていた。


「悪ぃ×2う~ん赤かな?」


健一は今度は即決して言った。


「テキトーに決めたでしょ!!」


「いや×3赤だとなんだろう?華やかさが際立って見えたからいいな~と思ってさ。てか、沙紀は着てみてどれが良かったんだよ?」


健一はなんだかんだでちゃんと選んでいたのだ。


沙紀は一瞬、顔が赤くなる。


「エッ!?・・・・私も…赤かな?理由は……早川と一緒。」


「よし、じゃあ早く着替えて買うぞ!!他のは俺が戻しとく。」


少し照れている沙紀から他の浴衣を渡させた健一は綺麗にたたんで元のあった位置に戻した。


レジでお会計しようとする沙紀を健一が止めた。


「いいよ、俺が払うから。」


沙紀は驚いた顔で健一を見た。


「えっ、でも・・・・」


「いいから×2。これ二つ会計一緒で。」


「あ、ありがとう。じゃあ、ちょっと先に待ってる。」


店の外のベンチに座る沙紀をよそに健一はレジでお会計をしていた。


「はい。2点で一万五千円になります。」


健一は財布から二万円を出した。


「赤の浴衣のほう何ですけど、誕生日用の包装出来ますか?」


「はい。かしこまりました。」


店員が手際よく包装する姿を健一はじっと見ていた。。


「二万円お預かりします。五千円のお返しです。袋は別々にお入れしますか?」


「あっ、そうですね。別で。」


「かしこまりました。」


店員は袋を別々にし商品を入れた。


「お待たせいたしました。ありがとうございました。」


品を受け取った健一は店を出て沙紀に浴衣を渡した。。


「えぇ!?」


綺麗に包装されている。何でこうなってるのか訳が解らず沙紀はただただ驚いていた。


「今日、お前の誕生日だろ?」


健一は照れているのか頭をかき、うつむいた。


「あっ、あ~!!よ、よく覚えてたね。ありがとう!!」


健一がまさか自分の誕生日を覚えているとは思っていなかった沙紀はかなり感動した。


「別に、行くぞ!」


強く言う健一はエレベーターへと行きボタンを押した。


「(早川、ありがとう)」


沙紀は小声で呟き、二人は駐車場へと向かった。



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