楽しい洞窟探索
「あはははははは!!!」
ダンジョンの奥深く。
少年が空を飛びながら、いや、空を蹴りながら魔物を一刀両断していく。
「やっぱりレジアは強いな!!」
「えっへん!!サタンおじさんとかレヴィおばさんがいろいろ教えてくれたからだよ!!」
「レジアは自慢の教え子だぞ!!」
「わーい!!」
レジアとサタンが会話しながら洞窟を飛翔する。
その速度は凄まじく、本来人間が全力で進んで一時間程度かかるほどの距離をわずか数十秒ほどで通り過ぎるほどである。
「ここが次の魔法陣だな!!いくぞ!!」
サタンが巨大な魔法陣の上で、一つ前の階層で描いた魔法陣とはまた違う複雑な魔法陣を一瞬で描き、消える。
「僕もやるぞー!!」
レジアがすぐにサタンが書いたものと全く同じ魔法陣を描き、消える。
もちろんサタンが描いた魔法陣をレジアは知らない。
ただレジアは見たままを描いているだけなのだ。
「普通初めて見た魔法陣はこんな簡単に描けないぞ!やっぱりレジアはすごいな!!こっから一気にどんどんいくぞ!!」
「うん!!」
サタンとレジアが凄まじい速度で洞窟を移動する。
そして端に着いたら素早く一つ上の階層に巨大な魔法陣で転移し、また移動を始める。
ちなみに、レジアが通る前にいたはずの魔物が、通った後の洞窟には一匹も存在しなかった。
それから約二時間半後。
「ここで最後の魔法陣だな!!」
レジア達は3000階層に到着していた。
「ここからはどうやって上がるの?」
レジアが手から出ている剣の形をした黒色の光を消し、言う。
「ここからは階段で上がるんだ!!」
「階段……あ!あのギザギザの坂道か!!本で出て来た!!」
「そうだ!よく知ってるな!!」
「でもどうしてギザギザなの?」
「そっちの方が人は上がりやすいんだよ」
「なんで飛ばないの?」
「はっはっは!レジアはやっぱ面白いな!!人は普通飛べないんだよ!!」
「えー!!飛べないのー!?」
「そうだぞ!!」
サタンが魔法陣を描き、次の階層に転移する。
「どうして飛べないんだろー」
レジアもすぐに次の階層に転移する。
レジア達が着いたのは2999階層。
その洞窟は今までの洞窟とは違い、周りの壁や天井が赤色だった。
そして、洞窟自体が少しだけ小さかった。
「よしレジア!」
「なあに?」
「ここから先は一人で行ってみろ!!お前ならできるはずだ!!」
「えー!?サタンおじさんはー!?」
「ここから先は何も知らなくても上に上がれるからな!俺は一階層で待ってるぞ!!他の冒険者に見つからないように来るんだな!!パルコ・ダコヘ・ムテァ・ミェチ・カドザ!」
サタンが大きい複雑な魔法陣を素早く描いたかと思うと、消えた。
「もー!!一階層に行ったことがあるからって転移はずるいよー!!」
誰もいない洞窟でレジアが不満を言う。
「うーん、まあいいや!色んな子と遊びながら行けるからね!」
ヴゥオォォォォン
手から黒い光の剣を出す。
「いっくぞー!!」
レジアが少し跳ね、空中を蹴り出す。
「あははははは!!!」
「グアアアアアッ!!!!」
サタンが消えて十数秒後、少年の笑い声と魔物の断末魔が洞窟に響き始めた。
ーーーーーーーーーーーー
レジアがサタンと別れてから数時間が過ぎた後、25階層では。
「はあっ!!やあっ!!」
少女が魔物を倒しながらゆっくり洞窟を進んでいく。
「はあっ、はあっ」
少女が息を切らしながら鎧の隙間から自分の左胸を見る。
大きな胸の上面には黒い紋章のようなものが刻まれていた。
「くっ……」
これは呪いの紋章である。
少女が呪われている証だ。
少女が洞窟の端に着き、そこにある階段をゆっくり降りていく。
「魔法が使えなくたって、今日こそ倒す……!!」
少女が階段を下りきったところにある洞窟は、先ほどまでの水色の洞窟とは違い、少し周りの壁に黄色っぽさがあった。
また、洞窟の高さは25階層では3メートルくらいだったのが、ほんの少しだけ大きくなったように感じる。
「グルルルル……」
狼の獣が少女を睨む。
この魔物はシルバーウルフという魔物で、物理攻撃耐性がとても高いとして知られている魔物である。
それが、魔法を会得していない少女が先に進めない原因だ。
「はあっ!!」
少女がシルバーウルフを剣で斬る。
「グルアアッ!!」
しかしあまりダメージが通っていないようで、すぐに少女に反撃をする。
だがその反撃を少女は華麗に躱す。
「はあっ!!やあっ!!」
少女が連撃を当て、反撃を綺麗に躱していく。
「グルアアアアッ!!」
しかしやはりシルバーウルフにダメージは通らない。
「やあっ!!はああああっ!!」
少女が必死に魔物を斬りつける。
「私だって呪われたくて呪われたわけじゃないのに!!!」
魔物に不満をぶつけるように魔物を連続で斬る。
その時。
「グルアアアアアアアッ!!!!!」
突然横から、他のシルバーウルフより一回り大きい、少女が戦っていた個体とは違うシルバーウルフが頭突きをして来た。
「きゃあっ!!」
頭突きは少女の右脇腹を捉え、少女が洞窟の壁に叩きつけられる。
「グルルルル……」
他のシルバーウルフが黒色の目を持っているのに対し、赤色の目を持ったシルバーウルフが少女を睨みつける。
「シルバーウルフの変異体!?何故こんな階層の入り口に……!!」
少女が壁に追い詰められる。
「ははは……私だって分かってるよ……」
少女が涙を流す。
「いくら剣の才能があったって一人で50階層なんて行けやしない。それに呪いで体だって日に日に弱ってる。もうすぐきっと私は立つことすらできなくなる」
「私、早く諦めればいいのに、どうして私は最後まで諦めなかったんだろうなー」
「……剣、もう少し握ってたかったな……」
少女が目を瞑ったその時。
「わーーーい!!!」
どこからともなく、少年の声が聞こえてきた。




