楽しい冒険の始まり
「サタンおじさん!!待ってたよ!!」
立ち上がったレジアの前の魔法陣に、黒い角、そして翼を持った男が現れる。
「おうレジア!!待っててくれたのか!!」
「うん!!あのね!僕今日で十歳になったんだ!!」
「もう十歳になったのか!全く時が流れるのは早いなあ!!」
サタンがレジアの頭の上に手をぽんぽんと置く。
「それでなんだけどさ……」
「どうした?」
「ぼく"ぼうけんしゃいくせいがっこう"ってところに行きたいの!!」
「冒険者育成学校にか?」
「うん!!あそこって十歳以上なら入れるんでしょ!!僕お庭の外に出るのが夢で!!」
「でも普通は十七歳くらいで入るところだぞ?」
「そんなに待てないもん!!」
「はっはっは、レジアはせっかちだな」
「でもレヴィアタンの許可は出たのか?」
「それがね、お庭の外に出ちゃダメだって言うの。ずっと前から外に出たいって言ってるんだけどね」
「だからサタンおじさんから言ってくれないかなって!!」
「うーむ……」
「僕外に出てみたいんだ!!いい子にするから!!」
「よし!おじさんが説得してあげよう!レジアがこんなに熱心になってるんだからな!!」
「やったー!!早く戻ろ!!チヸゲ・ェフボ・ブザヂ・チョハ・ギアブ!!」
レジアが魔法陣を素早く描き、連続で空中を蹴り、凄まじい速度で洞窟を飛んていく。
「ははは!!待て待てー!!」
サタンは翼を大きくはためかせ、レジアにも負けないくらいの速度で洞窟を飛翔する。
「レヴィおばさん!!サタンおじさんがきたよ!!」
レジアが家の扉を勢いよく開け、言う。
「だからおねえさんって何回言えば……まあいいわ」
それから数秒後。
「おう!久しぶりだなレヴィアタン!」
「久しぶりね。今度はどこ行ってたの?」
「マモンがいるダンジョンにな。そうだ、今日はレジアから話があるみたいだぞ」
「レジアが?どうしたの?」
「僕ぼうけんしゃいくせいがっこうに行きたいんだ!!」
「冒険者育成学校!?」
「僕と同じ人間達が集まるって本に書いてあったから!!」
「よくそんなの知ってるわね……もしかしてルシファーが前来た時に借りた本にあったの?」
「うん!!」
「でもね、いつも言ってるけど流石に外に一人で出すのはね……」
「それなら俺がレジアについて行こうか!」
サタンが胸を張って言う。
「……うーん行かせてあげたい気持ちはあるんだけどねえ」
「それにサタン、いいの?あなたにもやりたいことはあるでしょう?」
レヴィが考え込む。
「レジアを見守る方が面白そうだからな!!」
「そう……?まあレジアもずっと外に憧れてたみたいだし、十歳になったわけだからサタンがいるなら……」
レヴィがしばらくうつむく。
「分かったわ。サタンと一緒にいるのよ」
「やったー!!!」
「でも何があるかわからないわ。これを持って行きなさい」
そう言った直後、レヴィの右上に黒色の穴が空間に開く。
その中からレヴィが大きなリュックサックを出し、レジアに渡す。
「中に何が入ってるの?」
「万が一のための転移結晶と超位ポーションと全属性の魔石と色々な魔道具と召喚魔石よ」
「でもこれまあまあ重いよ?10ドンくらいあるんじゃない?」
「空間を圧縮してるから当然よ。でもそれくらいなら持てるでしょ?」
「確かに100ドンくらいまでなら簡単だけどさ、僕転移魔法くらい使えるよ?」
「結晶は魔力がなくなっても使えるからよ。念のためよ」
「魔力無くなったことなんて今まで一回もないから大丈夫だよ!!」
「はっはっは!レジアは頼もしいな!!」
「あ、大切なことを今から言うわ」
「なあに?」
「くれぐれも、人間と遊んじゃだめよ?」
「えー?どうしてー?」
「(人間が) 危ないからよ」
「えー!遊んだら (僕が) 危ないの?」
「ええ。だからだめよ」
「はーい……」
「サタンの言うことはちゃんと聞くのよ?」
「はい!!」
「寂しくなったらいつでも転移魔法で戻って来ていいのよ?」
「わかったー!!」
「それじゃあ行って来まーす!!」
「気をつけてね!!」
「レジアは俺に任せろ!」
「任せたわ!」
レジアとサタンが家の扉を開け、洞窟に出る。
「レジアは庭の外に出るのは初めてなんだろ?」
「うん!!そうだよ!!」
「じゃあはぐれないようについてくるんだな!!」
サタンが翼をはためかせ、急加速する。
「うん!チヸゲ・ェフボ・ブザヂ・チョハ・ギアブ!」
レジアも負けずに加速する。
そしてすぐに、また巨大な魔法陣の前に着く。
「まずこの魔法陣の使い方だ!」
「うん!どうやって使うの?」
「これはな、魔法陣の上に対応した魔法陣を描くんだ!」
サタンが素早く空中に複雑な魔法陣を描く。
すると、その直後、突然魔法陣が光り、サタンの姿が消える。
「僕もやってみよー!!」
レジアが魔法陣の上に移動し、サタンが描いた魔法陣と全く同じ魔法陣を素早く描く。
すると、魔法陣が光り、気がつくと目の前にサタンがいた。
「やったー!!僕もできたー!!」
「レジアは飲み込みが早くてすごいな!!ちなみにダンジョンの3000階層以下は全部こうなってるんだ!」
「え?ここ外じゃないの?」
「まだここ3252階層だぞ?」
「そうなの!?」
「レジアは気付いてなかったのかもしれないが、お前がいままで住んでたのはこのダンジョンの最下層だぞ?」
「そうなんだ!!」
「じゃ、早速上を目指すか!!」
「うん!!!」
ーーーーーーーーーーーー
レジア達が凄まじい速度で階層を駆け上がっている頃。
同じダンジョンの25階層では。
「はあっ!!やっ!!えりゃっ!!」
長い金髪を持った少女が魔物を剣で攻撃している。
「くっ……」
魔物を倒した直後、心臓の辺りの服を左手で強く掴み、膝をつく。
その少女は不治の病、いや、呪いをかけられていたのだ。
少女が7歳の頃。
「やあっ!!はあっ!!」
少女は大人と剣を交えていた。
「くあっ!」
大人が負ける。
「すげええ!流石は剣聖!!」
「やっぱあいつすげえや!!」
同い年の子供達が騒いでいる。
その少女は小さいながら凄まじい剣の才能を持っていて、将来がとても有望だとされていた。
ーーーーしかし。
それから数日後のある日、少女の故郷が襲撃される。
そして、魔女と名乗る存在から呪いをかけられてしまう事になる。
それは、15歳の誕生日に死ぬという呪い。
その呪いのせいで少女は人々から避けられることとなった。
"呪われし剣聖"
それはそんな少女につけられた称号である。
「私は死ぬまでに50階層に行かなければならないと言うのに!!なんて無様な……」
少女はダンジョンで膝をつく。
少女の呪いが解けるかもしれない魔道具が50階層にあると言われているため、少女はダンジョンに毎日潜っていたのだ。
もちろんの事、今少女にかかっている呪いが解ける保証などどこにもない。
「もう猶予は一年しかない。にも関わらず冒険者育成学校に入って魔法を学ばなければこれより先の階層には行けない……」
少女が洞窟の奥にある、大きな扉を眺める。
ダァン!
少女が床を強く叩く。
「なんで、なんで私が……」
少女が頰に涙を流す。
「あと一年で、独りなんて絶対無理なのに……」
しかし少女は独りで戦うしかない。
なぜなら人々は皆、少女の呪いを恐れて少女から距離を置くからである。
「私、何年人と話してないんだろ……」
今日も独りで、少女は自分の体に鞭を打ちながらダンジョンに潜っていた。
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