楽しいお庭遊び
不定期でちまちま上げようと思います。
ダンジョン。
それはこの世界に無数に存在する、地下迷宮の総称である。
ダンジョンは複数の階層に分かれていて、その階層の深さに応じて貴重な資材や、魔物が存在する。
この世界では今日もその魔物を倒し、ダンジョンに隠された宝や資源や、魔物を倒すことで得られる強さを求めて冒険者と呼ばれる若者たちがダンジョンに潜っている。
しかし、人々はまだ、最も深いと言われているダンジョンは32階までしか攻略出来ていない。
その最も深いダンジョンは他のダンジョンとは住んでいる魔物の強さが比べものにならなく、苦戦しているからだ。
これは、そんな世界にある、最も深いダンジョンの最下層から始まる物語である。
水色に淡く輝く壁に囲まれた、天井に埋められた石の照明が照らす部屋の中。
「ねえレヴィおばさん、もう僕十歳になったんだから、お庭の外に出てもいいでしょ!!」
ある少年が、20~30代ほどの成人女性に話しかけている。
しかしその女性には黒い翼、そして黒い角が生えていた。
「こらレジア!レヴィおねえさんでしょ!!」
「あんま変んないじゃん!」
「変わるの!!」
「それで、外でちゃダメなの?」
「いつも言ってるけど、庭の外には危ないことがいっぱいなのよ」
「それは知ってるけど!どんな危なさがあるの?」
「もし冒険者に会ったら危ないわ」
「ぼうけんしゃ……それって人間の強い人たちだよね!!本に書いてあった!!」
「よく知ってるのね。でも絶対に遊んじゃダメよ。危ないから」
「へー、そうなんだ」
「……!!」
突然レヴィが斜め上を見る。
「どうしたの?」
「サタンが来たみたいね」
「サタンおじさん?さっきからずっとこっちに向かって来てたけど?」
「あら、気付いてたのね。まったくレジアは成長が早くてびっくりだわ」
「えっへん!!それじゃあサタンおじさんと遊んでくる!!」
レジアが広い部屋の中を、扉に向けて駆けてゆく。
「ええ。庭から出ちゃダメよ!!」
「うん!!」
レジアが扉を勢いよく開け、外に出る。
そこは高さ20メートルくらいの巨大な洞窟で、壁に色々な色に輝く鉱石のようなものが埋まっていて、虎に似た魔物や、牛を人型にしたような魔物が大量にいた。
「みんなー!!遊びに来たよ!!」
レジアの声に魔物達が反応する。
「グアアアアアッ!!!」
「グルルルルルル!!!!」
魔物達がレジアに駆けてくる。
「あははは!!みんな元気だね!!」
レジアは人型の牛、バフォメットと呼ばれる魔物が振るった斧、そしてフレイムウルフと呼ばれる魔物の吐いた火の弾を華麗に躱し、バフォメットの腹部を素手で殴る。
「グバアアアアアアッ!!!」
バフォメットが吹き飛ばされ、壁に激突したのち、絶命する。
「エヨギ・スドブ・インロ!!」
レジアが空中に魔法陣を素早く描き、フレイムウルフに腕を振ると、フレイムウルフが吐いた火の弾より一回り、いやふた回り大きい火の弾がフレイムウルフに飛んでいく。
「グルアアアアアアアッ!!!!!!!」
フレイムウルフが一瞬で灰になる。
「ジパヲ!!」
魔法陣をまた素早く描いたレジアの手に土の塊が出現する。
「やあっ!!」
少年が土を遠くのバフォメットに投げると、頭に直撃し、絶命した。
「はっ!」
少年が跳ねたかと思うと、空を飛んでいる巨大な鳥型の魔物、ケツァルコアトルに向けて一直線に迫る。
「やあっ!!」
「キエアアアアアアッ!!!」
素手で殴ったかと思うと、凄まじい角度に曲がった後勢いよく地面に墜落し、絶命する。
「やっぱお庭で遊ぶの楽しい!!」
レジアは魔物達を笑顔で次々と蹂躙していく。
「あははは!!」
そしてレジアがちょうど洞窟の曲がり角を曲がった直後。
「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
他の魔物よりも格段に低い声が聞こえる。
そこには、高さ10メートルほどの紅いドラゴンがいた。
「今日はドラゴンくんもいるんだね!!やったー!!」
レジアがドラゴンに飛びかかる。
ボワアアアアッ!!!
ドラゴンが勢いよく火を噴く。
「ヸヨヵ・ヒッエ・ョギグ!!」
凄まじい炎がレジアを包もうとするが、レジアが魔法陣を描いた直後、前に透明の壁のようなものができ、炎が消滅する。
「ョヮグ・ポモギ・ェイホ・フャホ!!」
少年が再び魔法陣を描き、手をピシッとして上に挙げたかと思うと、手から真っ黒の光が剣のような形になって出てくる。
「やあっ!!」
少年が腕を振ると、ドラゴンが真っ二つにされた。
「グアアア……ァァ…………」
ドラゴンが絶命する。
「チヸゲ・ェフボ・ブザヂ・チョハ・ギアブ!!」
レジアが大きめな魔法陣を描いた空中を蹴ったかと思うと急に加速し、手から出ている剣でケツァルコアトルを真っ二つに斬る。
「はあっ!」
もう一度空中を蹴ったかと思うと、今度は別の方向に加速し、目の前のバフォメットを真っ二つに斬る。
「やあっ!!」
再び別の方向に加速し、フレイムウルフを真っ二つに斬る。
その調子でレジアは洞窟を勢いよく飛び抜け、何体も連続で魔物を斬り続ける。
そしてしばらくすると洞窟の端、巨大な魔法陣の前まで来た。
「ふう、急いだから思ったより早く着いた!!」
「サタンおじさんまだかなー」
レジアが地面にあぐらをかいて座り、目の前の巨大な魔法陣を眺める。
「グアアアアッ!!」
「キエエエッ!!」
あぐらをかくレジアを魔物達が襲う。
「カノヸ・ヒッカ・ョギグ・エヨギ・インロ」
「グアアアアッ!!」
「キエアアアアッ!!」
レジアが空中に魔法陣を描くと、近くにいる周りの魔物が燃え尽きる。
「グルルルルルアッ!!」
フレイムウルフが遠くから火の弾を放つ。
しかし、その火の弾は見えない壁に消される。
「グルルルアアアアッ!!!」
フレイムウルフがレジアに走ってくる。
「グルァアアアアアァッ!!!」
ちょうど火が消えたあたりの場所でフレイムウルフが燃え尽きる。
「あー、サタンおじさんまだかなー。もう29ギロ先くらいにいるんだけどなー」
レジアがあぐらをかきながら左右に揺れる。
今もレジアに接近する魔物が燃え尽きていくが、レジアは気にも留めない。
この時既に、レジアは先ほど家を出てから百体を超える魔物を屠っていた。
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