表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

異世界転生装置

作者: チャンドラ

「できた!」

 俺は喜びのあまり声を上げた。

 俺の名前は平賀工。RSFラボという研究所に勤める科学者である。今年で二十五歳になる。

 自慢じゃないが俺は天才だと自負している。ありとあらゆる発明品を作り上げてきた。

 身体能力を何十倍にも引き上げる身体能力倍増装置や好きな夢を見られる夢幻装置など俺の功績は計り知れない。


 今日は家で発明品を作っていたのだが俺はとんでもないものを作り上げた。

 その名も異世界転送装置である。

 異世界ーーその名の通りこの世界とは異なる世界のことである。

 しかし、ここではもっと論理的に説明しようと思う。

 この世界とは少し違う世界、平行世界パラレルワールドが存在する。それは世界においてある時点から分岐し、分岐前の世界と並行に連なる別の世界のことである。

 例を上げれば織田信長が本能寺の変で生きていた世界、これもパラレルワールドとして上げれれる。あくまでパラレルワールドはこの世界と同じ次元に存在している。

 しかし、異世界の場合は自分たちが住む時空や世界そのものも異なっているのである。それゆえパラレルワールドよりもアクセスするのが難しい。ちなみにパラレルワールドは平行世界転送装置で行ったことがある。


 俺は異世界に行く方法を導きだした。そのヒントが『死』だった。

 人が死んだ時、肉体から発する周波数が一瞬だけ急激に変化する。その周波数が異世界に行く方法なのではないかと考えたのである。

 そしてついに異世界転送装置に開発することに成功したのである。

 早速、使ってみることにした。 

 俺は必要なものを用意し、異世界転送装置に乗った。この装置の見た目は大きなカプセルという外見である。

「異世界転送装置発信!」

 ポチッとな。俺は起動スイッチを押した。

 すると、激しく装置は浮かび、激しく回転し気分が悪くなった。

 目を開けるとぐにゃぐにゃとした暗いところ景色になっている。おそらくここは時空の狭間。

 ここを抜けると異世界にたどり着く。


 一分後、到着した。着陸場所は山であった。

 装置から出ると、山の麓にはヨーロッパにありそうな立派なお城が目に入った。空の彼方には大きな赤い竜が飛んでいる。

 ついに来た。ここが異世界のようだ。

 俺は異世界転送装置を人目のつかなさそうなところに移動させた。

 これには発信機がついているためどこのあるかスマホですぐわかる。


 早速、街に向かうことにした。

「おう! 痛い目に会いたくなかったら金目の物をだしな!」

 向かう途中で山賊のような風貌の三人組に遭遇した。痩せ型の背の高いやつ、デブで背の低いやつ、体格のいい筋肉質であった。

 ちなみに後ろには馬車があった。

 まぁ、多分体格のいい筋肉質が頭だろう。

 俺は淡々と身体能力倍増装置を取り出し、スイッチを押した。倍率は十倍で大丈夫そうだな。

 体が強くなっていくのが感じられた。スッと三人の前に移動した。

「え? いつの間に......」

 俺は三人に腹パンして気絶させた。

 馬車の中を見ると、ドレスを着た金髪の女性二人が縄で縛られていた。俺は縄を解いてやった。

「あ、ありがとうございます。私はソフィアと言います」

「助けてくれてありがとうございました。私は姉のリリーと言います」

 二人ともとても美人だった。若々しくとても初々しい。

「平賀工と言います。礼には及びません。私は麓の街まで行きますので気をつけてください」

「あ、あの! 良かったら一緒に行きませんか?」

 そう提案したのはソフィアだった。

「良いんですか?」

「もちろんです!」

 俺は好意に甘えることにした。一人で街の探索は少し不安だから助かった。


 街に着くと、いろんなお店が目に入った。果物屋さんや武器屋、占い屋のようなところまである。

 歩いている人には魔法の杖を持った人や二足歩行しているトカゲ人間のようなのもいた。

 すごい、これが異世界かぁ。

「二人はこの街出身なんですか?」

「はい! 薬草を取りに向かったら突然山賊に襲われて......本当、ありがとうございました」

 リリーは頭を下げた。

「いえいえ、たまたま通りかかっただけですから。ちなみにお二人の職業はなんですか?」

「薬剤師です。病気を直す薬や魔力を増大させる薬を作ってます」

「へーすごいですねぇ」

 俺は素直に感心した。薬剤師は現実の世界でも待遇の良い職業だと思っている。

「そういえば平賀さんはどちらからいらしたんですか?」

 ソフィアが俺の出身地を訊いてきた。

「えーっと東の国の方からです」

 そう言っておけば多分間違いないだろう。

「あの、侍がいる国ですか?」

「そ、そうです」

 この世界にも侍がいるのか。たまげたなぁ。

「私たちのお店に案内します」

 ソフィアがそう言ったので俺はお店に向かった。


 到着したのは古い木でできたお店だった。看板が掲げられているが何て書いてあるか読めない。

 これは勉強する必要があるな。そんなことを考えてるとリリーが訊いてきた。

「平賀さん、良かったら今日は泊まって行きませんか?」

「いいんですか? 助かります」

 俺はソフィアとリリーのお店に泊まることにした。

 夕食の時間になると、料理が運ばれてきた。

「どうぞ食べてください」

 運ばれたのはコッペパンみたいなパンと肉だった。

 俺はパンをかじった後、肉をつまんだ。肉はローストビーフみたいな味だった。

「美味しいです。この肉はなんのお肉なんですか?」

「これはワイバーンの肉です。美味しいと評判なんですよ」

 ソフィアが説明してくれた。いやぁ、異世界生活もいいな。研究所勤務は忙しくて嫌になることも多いからな。ずっとここにいたい気分だ。

 まぁ、1週間くらいしたら帰るけども......


 次の日、俺は二人の薬草探しに手伝うことにした。

「平賀さん、本当に手伝ってもらっていいんですか?」

 ソフィアが申し訳なさそうに訊いてきた。

「特にやることもないし、大丈夫です。ただ、お願いというかお金も泊まるところもないので今日もそちらに泊まらせてもらってもいいですか?」

「もちろんです! いいよね? お姉ちゃん」

「ええ!」

 二人とも快諾してくれた。


 早速、三人で薬草を取りに向かった。

 薬草は昨日のやまの頂上に生えているらしい。ちょくちょく、でかいイノシシのようなものと、イエティに出くわしたがその都度、俺が身体能力倍増装置を使いワンパンで追い払った。

 そして、頂上についた。

「あった! あれです!」

 ソフィアが叫んだ。キラキラと虹色の輝く草が目に入った。

 すごい綺麗だなぁ。

 俺たちは薬草を取りに向かった。すると、大きな黒い竜が立ちはだかった。

「あ、あれはヴリトラ!」

 リリーが驚愕というような顔をしている。

「ヴリトラ? やばい竜なんですか?」

「はい! それはもう! 悪竜と呼ばれていてそれはもう、危険なやつと言われています! 神をも殺したと伝説で言われています」

 そうか、なら身体能力倍増装置は十倍じゃ勝てないかもな。

 俺は最高倍率である百倍に設定し、起動させた。百倍にする場合、時間制限が設けられる。

 一分以内に倒さなければならない。いけるかな......


 俺はヴリトラに近づいた。ジャンプして奴の頭に近づき、思いっきりパンチした。

「ギャオー!」

 悲鳴のような叫び声を上げた後、ヴリトラは倒れて動かなくなった。

 ツンツンとつついてみたが動かない。ただの屍のようだ。

「し、信じられない......お姉ちゃん、たった一撃でヴリトラを倒しちゃったよ」

「うん! 平賀さん、あんなに強かったんだね!」

 二人が俺の方へ向かってきた。

「すごいです! 平賀さん!」

「最高です! 平賀さん!」

 二人は俺に抱きついてきた。

「うわ! ちょっと抱きつかないで!」


 そして、俺たちは街へ戻った。俺は薬草をすりつぶしたりと二人のお手伝いをした。

「平賀さん! もうずっとここに住んでいいですからね!」

 笑顔でソフェアが言ってきた。随分気に入られたもんだ。

「いや、それはさすがに悪いですよ。ね? リリーさん」

「いえいえ! どうぞここに住んでください!」

「......」

 まぁ、一週間くらいはこの家にお世話になってもいいかな。

 さーて、明日はどこを探索しようか。

 俺は異世界巡りに心を躍らせたのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ