表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
刀旅~とうた~  作者: 夜富 陽太
4/4

道中油断禁物

夕暮れ時

森の中へ帰るカラスたちの群れとその下を歩く二人の少年少女を沈みゆく太陽が照らす

彼らは街を出て北へと向かった。

目的地は図書館、もちろんただの図書館ではない。この国で出版されたありとあらゆる書物が保管されている。もちろんこの場所を提案したのは燈瑠である

虱潰しに場所を回るより少しでも場所が特定できる情報を収集し効率的に刀を探しだせれば最良である。

最良であるのだが


「つーかーれーたー!やーすーみーたーいー!」


言い出しっぺが駄々をこね始めたのである

旅に一緒に行くといったのは彼女であるが、数日前何かを決めた人間が今はこれなのである


「もうちょっと我慢してくれ、日が昇ってるうちに次の町につきたい」


呆れながら喚き散らしながらそれでもついてくる律儀な同行人(仮)にぼやく

現在は夕刻、次の町まであと一息である

ここ数日野宿ばかりでそろそろまともな寝床で眠りたい

そうしたいのだが


「女の子はか弱いの!一日中歩けないの」


さらに謎の言い訳が加速する


「はぁ…どっか休憩する場所はないものか」


ため息を吐き出しつつ仕方なく休憩できそうな場所を探すことにした。

別に現在絶賛騒いでる隣の同行人(仮)を置いて行っていいのだが、後が怖い絶対なにか仕返しされる

そんなことを考えて身震いしていると道の先に民家らしきものが見えてきた。


「あれは!」


同行人(仮)が砂漠でオアシスを見つけた旅人のように顔を輝せながらオアシスに走り出す


「疲れてるんじゃないのかよ…」


燈瑠のビルドアップっぷりに唖然としつつ彼女の背中を追う

建物のそばまで寄ると扉の前に『甘味処』と書かれたのれんが掛かっていることに気づく


「もうすぐ次の町につくんだから我慢を」


刀が呼び止めようとしたが


「うるさい、すいませーん」


即拒絶され人を呼んでしまった

(今日も野宿か)

と思いつつガラリと開いた扉の前に立つ人を見る

女性だったそれも奇麗な女性

世間ではこうゆう人のことを美人というのだろう


「あららかわいいお客さんが来たわね」


女性はニコニコしながら二人を眺める


「お団子ふたつください!」


間髪入れず燈瑠は注文をする


「はーい、ちょっと待っててね」


パタパタと女性は民家へ駆けていく

少し待って女性が戻ってきた


「お待ちどうさま、焼きたてどうぞ」


「ありがとう!」


燈瑠は嬉しそうに団子を一つほおばる。

幸せそうに一つの団子を飲み込むと刀のほうにもう一つの団子を差し出す


「はい、あんたの分」


二つとも燈瑠が食べると思っていた刀は急なことで驚きつつ団子を受け取る


「お、おう、ありがとう」


ふたりで団子を食べていたら店主の女性が声をかけてきた


「二人とも仲良さそうだけどカップルなの?」


とんでもない爆弾を落としてきた

その言葉に動揺し燈瑠は団子を詰まらせた

刀は燈瑠にお茶を差し出しながら女性に告げた


「ただの旅仲間だよ」


そういわれると女性は残念といった顔になった


「あらそう、お似合いだと思ったのに」


すると燈瑠がお茶で激しくむせた

それを見て女性はニコニコしている、そして妙にてテカっている

さらに女性は続けて質問した


「旅ってことは今日の宿はもう決まってるの?」

「いや、野宿だよ。誰かさんが休みたいとか言うから」


と燈瑠のほうを見る

燈瑠はそっぽを向きながら最後の団子を口に運ぶ


「なら今日はうちに泊まる?少し狭いけど」


女性は刀たちに提案する

すると丁度団子を食べ終えた燈瑠が身を乗り出して女性に迫った


「ホント!泊めてもらってもいいの?」


女性は微笑みながら肯定した


「ええ、いいわよ上がって」


と、手招きした

燈瑠は大喜びで民家の中へ駆けて行った


「やったー!あっ!」


玄関に入る直前そばに立てかけてあった杖につまずき転びそうになったが、倒れる寸前に刀が燈瑠の肩をつかみ止めた


「気をつけろ、危ないぞ」


「あ、ありがとう…」


礼を言いさっきの落ち着きのなさが嘘のようにゆっくりと中へ入っていった

それを見送ると刀はさっき燈瑠がつまずき倒した杖を拾い上げ女性に渡した


「騒がしい同行人ですまない、これいい杖だな」


謝罪をしつつ渡した杖を褒めた


「いいのよ賑やかな子は好きよ」


女性は刀に近づき持っていた杖を受け取ったそして赤子をめでるかのように優しくなでた

その杖は全体的に赤く漆のような光沢を帯び所々に金の装飾が施されていたいかにも職人が作った名品である


「ありがとう、これ特注品なの」

「きっとそれを作った人はいい腕をしてるんだろうな」


杖をなだめながらこれの製作者を想像する


「そうねとても扱いやすくて馴染でくるもの…さっ立ち話もおしまい!中に入って夕飯の支度をしましょう、お風呂もね」


と刀と家の中へと入っていった


「これおいしい!」


燈瑠はそう言いながら夕餉のおかずをバクバクと食べていた


「あらよかった山菜ばかりで味気ないかと思ったけど口に合ってよかった」


女性はニコニコしながら二人が食事しているのを眺めていた


「お風呂の準備しておくからご飯食べ終わったら入ってね」


そういって風呂場のほうへと女性はある言っていった


「優しい人ね」


女性が消えていった通路を見ながらポツリとつぶやいた


「そうだな」


刀は素っ気なく返した


「私こんなに人にやさしくされたの初めてかも」


そんなことを言いながら幸せそうにおかずに箸を伸ばした

刀は味噌汁をすすりながらチラリと燈瑠のほうを見て


「…そうか」


聞こえるか聞こえないかわからないような小さな声で返し、残りの味噌汁を飲み干した

夕餉を食べ終えた後それぞれ順番にお風呂に入り家主の女性と談笑した

旅の理由を聞かれることがあったが燈瑠がうまいこと話をはぐらかし別の話題にすぐ切り替えた

燈瑠が培ってきた話術に感心しながら刀は女性との話を楽しんだ

気が付けば燈瑠は横になっており半分眠りに入っていた


「あらあら相当疲れてたのね、布団は引いてあるから連れて行ってくれる?」

「あぁ、おーい起きろ寝床に行くぞ」


肩を揺らしながら起こそうとするが「あと五分」といいながらも目覚める気配がない

しょうがないなと思いつつお姫様抱っこをするような形で抱きかかえると思っていた以上に


「少し重いな」


そうつぶやくと一瞬、燈瑠が震えたような気がするが気のせいだったようで女性に言われた部屋に向かう

部屋につくとそこには布団が一つしか敷かれておらず刀は、来客用の布団が一つしかないのかと思いつつ燈瑠を布団に寝かせ

自分は荷物と明日の順路を確認し眠りに入った

二人が深い眠りに入ったころ部屋の戸がゆっくり開き、何か長いものを持った人影が入ってきた

そうして布団のほうへ向かいの寝息を確認し持っていたものから何かを抜き布団めがけて振り下ろした


ガキンと金属と金属がぶつかり合う音が部屋中に響きを振り下ろしたものを止められた主は後ずさtta

「あぶねぇ!もうすぐで止め損ねるとこだった!」 


暗闇の向こうからこちらのほうへ人影が近づいてくる

馬鹿なと内心で動揺しつつ手に持っている獲物を構えなおす


「暗いなちょっと明るくするか」


そういうと男は部屋の戸を薙ぎ払った

廊下の窓から月光が差し込み少しずつ部屋の中を明るくしていく

両者の顔がお互いに見えるころ女性が口を開いた


「驚いたねよく気付いたわね」


どこでしくじったかと考えつつ間合いを開け目の前の少年の回答を待つ


「山育ちなもんでね、出された山菜がどんなものか知ってたし食い慣れてる。ま、その前にあんたが握っているものを拾った時に怪しいと思ったのさ」

「あら残念そんな早い段階で怪しまれてたのね」

「あんたの杖以上に重い。一度仕込み刀の依頼を受けたとき作った者が大体重さも形そんな感じだったからなピンと来たってやつだよ」

「そう、経験に救われたのね。だけどここからはそうはいかない命がけの真剣勝負あなたは一度しかないけど私は山ほどこなしてきた」

「やってみないとわからないぜ?俺強いし」


挑発交じりに刀を左右に振って見せた


「ずいぶんな自信ね、じゃあ行くわよ」


少年へと一気に距離を詰めていく

得物の間合いに入ったところで脇腹めがけて一気に右に払う

しかしこれはあっさりと防がれ弾かれた

弾かれた反動を利用し今度は左斜め上から首筋を狙うがこれも止められ今度は刀を上えと弾かれた

そのまま少年は刀の根元めがけて叩き込んだ

衝撃とともに自分の持っていた刀の刀身が砕け散り残った切っ先は刀のほうへ飛んで行った


「勝負あり、俺の勝ちだ。あんたには一飯の恩があるここで引いてくれれば何もしない」

「強気な割にずいぶん甘いのね」


両手を肩の位置くらいにあげ降参の意を示す


「いいわ、今回は引きましょう。私の目的はあなたの刀じゃなくてこのぐっすり眠ってる子羊ちゃんだから」


燈瑠を蛙を見た蛇のように見つめ少し残念な顔をしながら部屋を出ようとした


「おい、なんでこの刀のことを知っている!」


この女は何者だとさきの戦闘よりも警戒を強める

自分の反応が面白いのか女性は笑みを浮かべながら振り返る


「そうね、次会ったときにわかるわ、あなたがその刀を持って生きていたらね」


そう言い残すと部屋を出ていった


「まてよ!」


追いかけて外に出るも出て行った女性はもういなかった

家の外に出てあたりを見回すも人の気配はすでになかった

部屋に戻ると燈瑠はまだぐっすりと眠っていた


「のんきに眠りやがって…まぁそっちのほうが良かったかもな」


朝日が昇り刀の顔を照らす

まぶしいと片手で顔を隠す

こんなことがこの先も起こるのかと、自分に旅を手紙を書いた輩を呪いつつ今度会ったときに何発か殴ろう、顔面にと心に誓うのであった


誰かに追われる夢を見た、誰かに助けてもらう夢を見た、誰かといっしょに歩いていく夢を見たそんな夢を見ながら、何かに揺られている自分を感じながら目を覚ます

目を覚ますとそこは昨日泊めてもらった家ではなく見渡す限りどこまでも木々がひろっがっている森であった

そしてなぜか少年が自分を背負って歩いていた


「んあっ!」


驚きのあまり出た声に自分を背負う少年が目覚めたことに気づき声をかける


「おう、起きたか」

「起きたか、じゃない!なんであの家で起こしてくれなかったの!お礼も言ってないのに!」

「んーお前があんまりにも幸せそうに寝てたから起こすのも悪いと思ってたそれにあんま長居するとおばさんに迷惑かけちまうからな」

「でも…」

「旅が終わったら改めて礼を言いに行けばいいさ。今は一分一秒でも探す時間がほしい」

「わかったわよ、じゃあ下ろして自分で歩けるから」

「もう少し手上り坂が終わるからそこからな、どうせここから歩かせるとすぐ休むしな」

「なによそれ!ま、あんたがそういうならお言葉に甘えてもう少しおぶさってあげるわ」

「おろすぞ!」


少年があきれた様子でこちらを見てくるが気にせず山の向こうを見つめる

自分がこれかあどんなことを体験するのか胸を躍らせながら


「冗談よ、さぁ刀探しへレッツゴー!」


私がこのときの、刀の優しさを知るのはそう遠い未来の話ではなかった






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ