序章
「おい起きろ刀」
真っ暗の中声がした、少し目に入ってくる光が朝だと実感させる
「ふぁ〜おはようございます。親方」
俺は起きたばかりで焦点の合わないめでその声の主の姿を確認してお決まりのあいさつをした。
「おう、おはよう…じゃない!今何時だと思ってるんだ!」
「え?」
そう言われた俺は壁にかかっているデジタル時計を確認する
「えっと…11時32分です」
時計に表示されたままの数字を言うと
「そうだもう11時半だ。ということは、おはようじゃないだろ?」
「そうですね。では改めてこんにちは」
「おう、こんにちは。じゃない!お前いつまで寝てるんだ!もう昼だぞ!さっさと支度して手伝いやがれ!」
ヘッドホンならすぐ外すぐらいの大音量で叱られた俺は急いで身支度を整え鍛冶場に向かった
「親方!今日の仕事なんですか!」
「藩主からの依頼だ。"孫が生まれるから、記念に刀を1本こさえてほしい"だそうだ」
「とんだジジ馬鹿ですね」
「コラ!事実だからってそんなこと言っちゃ藩主に失礼だぞ!」
「そう言っている親方が一番失礼じゃないですか!」
そんな他愛もない話と金属を叩く音が響いているここは、人里離れた森にある刀を専門として作っている鍛冶場である。
この物語の主人公にして刀鍛冶見習いをしている俺は、文月刀刀って書くのに"けん"って読むのはおかしいだろ?
俺達は、君たちの住んでいる世界とは1つ違う次元にあるシン・日本って国に住んでいるんだ。
町並みは教科書に書いてあるような江戸時代の町並みに酷似しているが、所々高層ビルやら煉瓦造りの家やら非常にミスマッチっな建物が建っている。
え?なんでそんなものが建ってるかって?
この国は"暮らしはそのままに技術は未来に!"っていう政策を昔掲げた結果である。
周りを見れば○ックカメラもあるしア○メイトだって□ーソンだってある。
家を見れば使っているものも変わっている。
箒じゃなくてルンバだし釜戸だってIHだしとにかくもう、ぎん○ま見たいな世界なのよ。
付け加えると将軍もいるし総理大臣もいる。
どっちが偉いかって?そんなもんどっちも偉いに決まってる。
ついでに紹介すると、俺の刀鍛冶の師匠にしてこの鍛冶場"蓮華堂"の頭領がこの人、蓮華力である
「おい、ついでってなんだよついでって!」
親方は俺の紹介の仕方に、気に入らなかったらしく手を止めて不満を言うが
「そういうわけで、これからよろしく!」
「無視かよ!」
小さくため息をして親方はまた刀を打ち始めた。
高く澄んだリズミカルな音がまた里に響き始めた。
俺はこの音が好きだ。
小さい頃から聞き慣れたこの音が。
「親方なんで今の時代、全自動刀作り機があるのにウチは手作業なんです?」
何回も聞いているが答えに未だに理解できない質問をする
「前にもいっただろ、量産型は作りは均等だがすぐ錆びるし強度は脆い、その分手作業だと作りはまちまち変わるが硬くいよく切れる!分かったか!」
ドヤ顔で答えた親方に俺は更に質問を返す。
「それならもっといい機械を作ればいいじゃないですか?なんで作らないんですか?」
これは多分はじめての質問だ。
その初めての質問に親方は
「そんなの簡単だ、作らないんじゃない。作れないんだ、どれだけいい機械作ろうとも刀は職人の腕と経験が一番なんだ。その腕と経験は機械じゃ再現できはせんよ。せめてできるのは、包丁の生産技術を応用した刀の生産ぐらいだよ」
親方がいつの間にか真剣な顔になって答えてるのに気がついた俺はつい
「親方…親方の真剣な顔って気持ち悪いですね」
と、思うままいってしまった
「今それ言うとこじゃないだろぉ!」
今日も森に親方の叫び声が木霊する。
そんな平和な俺の日常がこの後、簡単に崩れ去るなんて今の俺には予想すらもできなかった。
初投稿作品
私は可能性の獣になりたい