08
未来の京さん候補を止めたのは瑞希だった。
それは、まるで正稀さんが京さんに怒られているのを止めている時と似ていた。
今は、おとなしくソファーベッドに座っている黄。
そして今度は瑞希にしか話さない私をどう扱っていいのか皆が困っているみたいだった。
瑞希が困ってたら助けるけれど知らない人達を助ける義理もないので、そのまま黙っていた。
すると瑞希に青が聞いていた。
それに瑞希は悩みながら答えていた。
「いつも、こんな感じだから気にしないで! って言われても無理だよね!?」
「そもそも、どうやったら私達の話を聞いてくれるのでしょうか?」
「こうみえても話は聞いてるんだよ! ね!?」
コクンと瑞希に向かって一つ頷く。
「だったら私達が質問しても何故、返答してもらえないのでしょうか?」
「うーん? それは分からないけれど……。そういえば私も会話ができるようになるまで時間が掛かったんだった」
「ちなみに、どの位ですか?」
「半年くらい?」
「何かコツみたいなのは、ありますか? 機嫌が悪い人が約一名いますから」
「あぁ……。うーん?? どうしたら良いんだろう?? 私も、いまだによく分からないんだけど真似しない方が良いと思うよ!?」
「そもそも瑞希は約半年の間、何をしていたのですか?」
「私!? 私は、あの時は……毎日、澪を探し回るために病院を抜け出して……動けなくなったところを澪に発見されて病院まで送ってくれている時に一方的に話してたかな? 何が良かったんだろう??」
そういえば毎回毎回、行く先々に倒れてた。
始めは、いつものように気にしてなかったのに、それがいつの間にか気付いた時には病院まで送ってた。
きっと、それが瑞希の魅力なんだろう。
「それは確かに真似できませんね!?」
「でしょ!?」
「だったら毎日、会えばええんとちゃうの!?」
「あー、それをして逆に鬱陶しがられて、さらに半年くらいかな話してもらえなかった人がいたから、それはあまりオススメしないよ!?」
「そうですか。ちなみに、それは誰ですか?」
「ん!? 私の父親だよ!? 私も鬱陶しくなる時があるよ!?」
あれは確かに、ただ鬱陶しかっただけだ。
「そうですか……一年は無理でしょうね」
「だったら、どないするん!? 八つ当たりは嫌やで!」
「澪の中には【味方】【敵】【それ以外】の区分があって、ほとんどが【それ以外】に分類されてるみたいなの!? ちなみに【それ以外】は道端に落ちている石とかと同じ扱いだからね!?」
「それは、つまり一つ一つ認識していないという事ですか?」
「………………」
「うん。たぶんそういう事だと思うよ!? ね!?」
瑞希に聞かれた時だけ頷いた。
「今の私達は【それ以外】という事ですね!? だから返事をしてくれないと。なるほど。だけど【敵】にだけは認識されたくないですね!?」
「今のところは大丈夫だと思うよ!?」
「【敵】認定されると、どうなるのか瑞希は知っているのですか?」
「うん。昔【敵】認定された人は澪を見て気絶した」
あれは瑞希に危害を加えようとしてたから手加減なしの殺気をお見舞いしただけで泡吹いて倒れたんだよ。
「なあなあ瑞希!? ちなみに、その後どうなったん!?」
「さあ? 私は知らないけど澪は知ってる??」
首を左右に振った。
「澪も知らないんだって」
もし知っていたとしても瑞希は闇の部分を知らなくてもいいので教えないけれど。
「変なプレッシャーがあるので、あえて聞きますが今【味方】は何人いるか瑞希は知っていますか?」
「たぶんだけど……」
指を降りながら数えていた。
「5人くらいかな!? 男性もいるけど全員、40歳以上の既婚者だから大丈夫だよ!?」
「だそうですよ!? 良かったですね!?」
「チッ!!」
この会話に何の意味があるのか分からないけれど、それ以降も他愛のない会話が続いた。
私への質問が多かったが、それらは全て瑞希が答えてくれていた。
何故か瑞希と青の、いちゃラブ空間になっていたけれど。
だけど帰ろうと思っても瑞希に腕をガッチリ捕まれていたので無理だった。
少し力を加えれば振り離せる事が可能だが瑞希が傷付いたり怪我をするような事は論外だったので、体力温存のために警戒は解かなかったけれどボケッーとしていた。
ここの気配は瑞希に害を加えようとする感じがなく、また瑞希も楽しそうだった。
だけど私のボケッーとしている姿は周りには変なプレッシャーを与えるらしく瑞希に「どうかしたのですか?」と聞いている姿を見た。
それに対して瑞希は「いつもの事だから気にしないで」と返していた。