07
授業が終わり担任が教室から出ていくと再び瑞希の周りに集まってくるカラフル頭。
「やっぱオレの彼女に
「瑞希、俺に紹介して」」
「して〜して〜」
「してーしてー」
「だったら、ここでは何ですから、いつもの場所に行きましょうか?」
「うん! そうと決まれば行こー!」
『瑞希が楽しそうだ』と思っていると両側に同じ気配がした。
椅子に座ったまま後ろに下がった。
「あれ??」
ハモった。
どうでもいいが、この緑と紫さっきからよくハモっている。
気配も、よく似ている。
きっと兄弟なんだろう。
「あー無理無理!! 私の澪には、そう簡単には触れないから!?」
「え〜何で〜!?」
「えー何でー!?」
「もしかして潔癖症ですか?」
「それは、ないと思うよ!? だって、ほら! ね? 私は大丈夫だから!」
瑞希が抱き着いてきた。
好きなようにさせていたら、ついでとばかりにスリスリしてくる。
「では行きましょうか?」
「いや」
瑞希にスリスリされながら抱き締められてる今、声に出して言うしかなかった。
心底、驚いた顔をしている一同。
何故、了承すると思ったのだろう。
そもそも私が瑞希以外の誘いを聞く訳がない。
あと、この青に嫉妬心むき出しで何故か睨まれている。
すると瑞希は私を少しだけ解放した。
「澪に私の友達、紹介したいなぁ〜! ダメ!?」
芝居がかっていたが私の答えは、もちろん一つ。
「行く!」
断るという選択肢は、ない。
「えぇー!? 澪ちゃんも瑞希主義かいな!?」
「じゃあ今すぐ行こう!」
瑞希に今度は腕を引っ張られながら教室を出た。
赤以外のカラフル頭達も、それぞれ瑞希を守るように前後左右に等間隔になっていた。
そこに何故か私も含まれていたけれど。
ほどなくして一つの教室の前で止まった。
プレートがないから空き教室なのだろう。
だけど中には複数の気配があった。
躊躇う事なく中に入る赤。
挨拶もしないでスタスタ奥の方に歩いていく。
中の人達は突然の事なのに驚きもしないで挨拶をしていた。
返事がなくても気にした様子はない。
いつもの事なのだろう。
その後に青、瑞希、私が続く。
瑞希とそれ以外は挨拶をしていた。
それに一人一人に挨拶をして私を見た瞬間に警戒したような気配に変わった。
それが分かったのか瑞希が紹介してくれた。
「この子は澪!! これからも、ちょくちょく連れて来るけれど私の大切な子だからヨロシクね!?」
戸惑いながらも返事をする人達。えっ? 私もう来ないよ?
そう思いながらも瑞希の楽しそうな顔を見ると何も言えなくなる私であった。
そのまま連れられて奥の方に行く。
奥には扉があって今は開いていて中が覗えた。
ソファーがありテレビ、冷蔵庫、電子レンジなどがあり小さいながらもキッチンがあった。
さらに奥にはベッドまであった。
普通に、ここで人が生活できそうだった。
ベッドのカバーは瑞希の好きな水色で、ウサギやヒツジやイヌやクマなどのヌイグルミが鎮座していた。
今は開いているがベッドを隠すだろうカーテンも水色だった。もしかして瑞希専用?
ソファーは一人用が一脚と数人用が三脚、部屋の中央にあるテーブルを囲むようにして置いてあった。
一人用のソファーには赤が座っていた。
瑞希は私を連れてベッドに近いソファーに座った。
私は、いざという時のために立っていた。
だけど瑞希に座るように促され結局、瑞希の真横に座る事になった。
「何を飲まれますか? 瑞希と澪さん? で良いのでしょうか?」
「うん、そうだよ〜! 澪っていうんだよ! 可愛いでしょう! 私の妹だよ〜!」
私を紹介する時に、よく言っているので私は慣れていたけれど、それを知らない人達は皆ビックリする。
それもそのはず瑞希は身内の贔屓目を差し引いても可愛い。
今は大人っぽくなって綺麗な瑞希と、こんなちんちくりんな私では月と鼈だ。
だけど、それに気付かない瑞希は私に何を飲むか聞いてきた。
自分で作ったの以外は、なるべく口にしないので「いい」と答えると、やっぱりという顔をしながら「いつもの1つ〜」と頼んでいた。
始めから私が断るのを分かってたみたいだ。
さっきの発言から、いち早く立ち直った青から瑞希はイチゴミルクを礼を言いながら受け取ると飲み始めた。
甘いものが大好きな瑞希は前は毎日といっていいほど飲んでいた。
どうやら、それは今も変わらないらしい。
「聞きたい事は多々あるのですが、まずは自己紹介をしましょうか。初めまして私は芳野颯です。颯と気軽に呼んで下さい」
覚える気は更々なかったが青が勝手に進めていく。
「はいは〜い! ちなみに、はーちゃんは私の彼氏なんだよ!?」
だから、あの嫉妬心だったのだろう。
正稀さんには、ここを離れる時にでも報告しよう。
「あれ? 澪、驚かないの!?」と逆に瑞希が驚いていた。
性別もだけれど私では幸せにできないので応援はしないが反対もしない。
だから驚きもしなかった。
自分でも、いまだによく分からないのに私の喜怒哀楽が分かる一人が瑞希だ。
あとは正稀さんや百合さんや京さんや皐月さん。
「瑞希、認めてもらったと喜ぶところでは!?」
「私だったら澪に彼氏ができたら嫌だもん!! だから絶対に認めないよ!!」
そんな心配は一生しなくて良さそうだ。
「では一緒に反対しましょうか!?」
「うん、する〜」
正稀さんと百合さんのような、いちゃラブっぷりだった。
「おい! そこのバカップル! 自分達だけで盛り上がるな!」
「あれ〜もしかして桃ちゃんまた振られたの〜?」
「あれーもしかして桃ちゃんまた振られたのー?」
「煩い双子!!」
「そこの煩いのは、ほっといて紹介に戻りましょうか。そこに偉そうに座っているのが佐倉井皇」
「…………」
「好きなようにお呼び下さい。あちらで騒いでいるのが桂木兄弟の兄の陸」
「は〜い。ヨロシクね〜」
「弟の海」
「はーい。ヨロシクねー」
「そして人一倍、煩いのが柏原桃矢。本人のためにも煩い時は相手にしないであげて下さい!」
五月蝿くなくても相手にしない。
「颯!? その紹介、酷くない!?」
「でも本当の事だよ!? ね!?」
「ね〜!?」
「ねー!?」
「えっ!?らオレって、そんな可哀想な扱いやってんなぁ……。まあ、何となく分かってたけど改めて言われると、ちょっとショックやわ〜。でも気を取り直して桃って呼んでな!?」
「桃ちゃんは、ほっといて! これで皆、紹介できたかな!? って桃ちゃん鬱陶しいから隅でキノコ栽培しないで!!」
「瑞希も相手しないで良いですから!」
「うん、分かった〜。ところで私の澪どう!? 可愛いでしょ!?」
「聞いていたイメージと少し違うような気もしますが……。皇は、どう思いますか!?」
「可愛い!」
「皇君、見る目あるけれど私の澪は、そう簡単にはあげれないよ!?」
「皇が気に入るなんて珍しいですね!?」
「そうだね!? でも、はーちゃんは気に入らなかったの?」
「私は瑞希が一番ですから!!」
「も〜はーちゃん
「そこでいちゃラブしてるお二人さん!? 何でオレ達には聞かないの!?」」
黄、緑、紫が来た。
けれど周りの空気が少し下がったのを察知した緑、紫が避難した。
けれど、それに気付かない黄は何やら瑞希と言い合いを始めた。
結果、黄が青に怒られていた。
終始、笑顔だった。
青は怒らすと怖いタイプのようだ。
そう、まるで京さんのように……。ブルッ、急に悪寒が……。