06
一際、騒がしい部屋の前に到着した。
プレートには【1−A】。
どうやら、ここが教室のようだ。
瑞希と担任が先に教室に入っていった。
「呼んだら入ってきて下さい!」との事だったので私は今、廊下で待機中だ。
担任が入った瞬間、静かになった教室。
「皆さんおはようございます。今日は転校生を紹介したいと思います」
「男? 女?」
「カッコいい?」
「可愛い?」
「女の子ですよ! 私は可愛いと思いました!」
「うおぉー−−−!!」
「男じゃないのー!!」
など、いろんな声が聞こえてきた。
「入ってきて下さーい!」
無視しようかと思ったが、たくさんの気配の中、瑞希の楽しそうな気配があり中に入る事にした。
「おおー−えっ!?」
戸惑いの声に変わった瞬間だった。
それらを無視して担任の横にいった。
「それでは自己紹介して下さい!」
「澪」
「…………」
「…………」
「えっ!? そんだけ!?」
小さく頷いた。
習志野って名乗る気はなかったし目立ちたくはなかったがヨロシクする気もなかった。
困っているみたいだが、そんなのは私の知った事ではない。
「席」
「澪の席は私の隣だよ〜!?」
横からではなく後ろの窓の席辺りから返答があった。
返答の主は自分の席を左側の空いている席に、くっつけて椅子をポンポンと叩きながら「ここだよ!! ここ〜」と笑顔で言っている。
その主というのが言うまでもなく私のよく知っている瑞希なのだが。
やっぱり約束は無駄に終わったか。
無視しようかと思ったけれどスゴく嬉しそうな表情の瑞希には勝てなかった。
私も大概、瑞希には弱かった。
担任を見ると頷いたので私の席は、どうやらそこで決定らしい。
その時にザワザワしていたが気にしなかった。
それよりも瑞希を中心に円を書くように前後左右、空いている席の方が気になった。
それは、まるで瑞希を囲むようにして空いていた。
『こんなに空いてるんなら、どこに座っても良いのでは? そういえば、どこに座っても瑞希の近くだ!』という事に気付いてからは、おとなしく席に着く事にした。
もちろん瑞希を無視したままだ。
すると気配が変わった。
ほとんどが私に対する妬みだったし害はなく問題を起こせなかったので無視する事にした。
瑞希に迷惑をかないようにしなくては。
だけど瑞希は知ってか知らずか私が無視しようが瑞希は瑞希だった。
いつもの事と判断したみたいで私が答えなくても一人で話していた。
担任は、そのまま出欠を取り教科書を広げ黒板に問題を書き始めた。
どうやら一時間目は数学みたいだ。
瑞希が教科書を真ん中に広げ嬉しそうだ。
教室内の空気も下がった。
そんな時、不穏な気配が廊下からした。
気配は5つ。
警戒していると前のドアが開いた。
そして中に赤、青、黄、緑、紫のカラフルな頭が5つ入ってきた。
「遅刻ですよ!!」
「………………」
「亮太さんおはようございます! 遅刻してしまって、すみません!」
「やっぱ瑞希、先に来てんじゃん!」
「本当だ〜。瑞希ちゃん僕ら待ってたんだよ〜」
「危ないから一人で行動したらダメって、あれほど言ったのにー」
「あれ!? 私、言ってなかった!?」
「聞いていませんね!?」
「皆ゴメンね!? でも一人じゃなかったから大丈夫だよ!?」
どうやら瑞希は彼等とも知り合いのようだ。
心配されるほど心を許している相手がいるのなら私は、いらないな。
少し寂しいけれど私は、また元の生活に戻れそうだ。
最後に人気者の瑞希が見れて良かった。
こちらに近付いてきていたが彼等からは不穏な気配も消えていたし大丈夫と判断して席を立とうとした。
「あれぇ〜。知らない子がいるよ〜」
「本当だー。もしかして転校生かなー」
空いている席に鞄を乱暴に置いた。
「君カワイイやん!? カレシおんの!? もし、おらんかったらオレ立候補するー!!」
「桃ちゃん私の澪に、いつものように軽々しい事、言ってると叩くよ!?」
「澪ちゃんっていうんや!? オレ桃の矢で桃矢っていうねん。よろしゅうな!? なんや瑞希の知り合いかいな!? だったら紹介してーなー」
黄に手を振り上げる瑞希。
「瑞希、ゴメン、冗談やさかい。でも瑞希にやったら一回、はた……かれたくないですゴメンナサイ!! ちょっ冗談だから本気にしないでマジで怖いから!! 颯君、お願いだから睨まないで下さい!!」
「ソコ煩いですよ!? 授業、受ける気がないのなら迷惑ですから出ていって下さい!!」
「桃ちゃんのせいで怒られたんだからね!!」
「そうだ〜そうだ〜」
「そうだーそうだー」
黄に怒っている瑞希に腕を掴まれ結局、授業を受ける事になった。
変なところで勘がいい瑞希だった。
私にとっての初めての授業は内容が簡単すぎて退屈だった。
いろんな気配の中、瑞希は楽しそうだったから、よしとしよう。