05
瑞希の話では登下校は車だそうだ。
8時30分に門が閉まるらしいので、それまでに登校したらいいらしい。
いつもは7時30分に皐月さんが起こしに来てくれるらしい。
先程、確認の電話があった。
「今日は転校初日だから8時までに登校して校長室に行ってほしい」と。
それから「瑞希が私に話すと言っていたのですが聞きましたか?」という確認の電話だった。
「同じクラスになると良いなぁ〜。楽しみだなぁ〜」などは聞いたが、その事は聞いていなかったので、お礼を言ってから今日は私が起こす事を伝えて電話を切った。
いつものように短時間で身支度を終わらせ朝食を作り瑞希の制服を皐月さんに持ってきてもらってから瑞希を起こした。
低血圧な瑞希は起きるまでに二度寝、三度寝は当たり前、起こす人によっては一時間以上掛かるらしいのです。
私は、てこずった事はありませんが瑞希を遅刻させる訳には、いかないので起こす事にした。
いつも通り瑞希の名前を呼びながら揺すると寝ぼけながらも私の名前を言い私を抱きしめスリスリする瑞希。どうやら、まだ夢の住人のようだ。
好きなようにさせていると数分も、しないうちに起きる。
◇◇◇
瑞希の送迎用の車に一緒に乗り登校する事になった。
瑞希が車に乗ってから後ろをついていく形で登校しようと思っていたのに。
瑞希と急遽決まった今日の送迎の京さんの二人によって、それは阻止された。
私に関わると瑞希にとってマイナスになると思ったから「学校では他人の振りだよ!?」って言ってたのに返事だけして聞いてなかったな。
この分だと「学校では私に関わっちゃ駄目だよ!?」も返事だけで聞いてないな。
京さんには車内で昨日の新入りの事で謝られた。誰だっけ?
気を許した相手と仕事相手以外は名前と顔を覚える気はないので覚えていなかった。
今まで、そうしていたけれど特に不自由していない。
これからも、それは変わらないだろう。
その新入り君は日頃は瑞希の送迎などの運転をしていたらしい。
それが昨日は私の迎えに行く事になって落ち込んでいたのに、瑞希の見た事もない嬉しそうな顔を見た瞬間、憎しみに変わったらしい。
一々気にしていたらキリがないので、その事を言いながら教育し直す事も伝えておく。
これからも瑞希に関わる仕事をするなら自分の感情に振り回されないようコントロールできるように。
瑞希が寝ていたから話せた内容だった。
◇◇◇
学校の門の近くで私だけ先に降ろしてもらおうと思い京さんに伝えると笑顔で一蹴された。
瑞希も横で不満そうだった。
結局、瑞希と一緒に降りた。
少し時間が早いのか周りには歩いている生徒が5人もいなかった。
そのまま建物を見た。
これが瑞希が通ってる学校らしい。
いたって普通の高校だった。
京さんに礼を言ってから校長室に向かった。
場所は知らなかったので瑞希に聞くと校長室まで案内してくれた。
中には気配が二つあった。
瑞希がノックをして名前を言った。
返答があり中に入ろうとした時、一つの気配が動いた。
それと同時に気配が何やら不穏なモノに変化した。
ドアは廊下側から部屋の方に開くタイプだったので瑞希がドアを開けた瞬間、すぐに瑞希を護るように私の方に引っ張り抱きしめた。
「瑞希ー−−−!!」
中から知らない茶髪の男の人が飛び出てきた。
今まで瑞希が立っていた場所を通り過ぎて、そのままの勢いで壁とキスをしていた。
警戒していると、もう一つの気配も動いたかと思うと笑い声が聞こえてきた。
「亮太さん笑いすぎですよ!? それに瞬さん何してるんですか!?」
「瑞希ちゃん避けるなんて酷いよー!? いやーもう少しで壁さんにキスするところだったよー」
「いやいやいやいや!! 瞬、今のは壁にキスしてるからな!?」
今度は知らない黒髪の男の人だった。
「澪こんな二人だけど一応ここの理事長兼校長の鷹田瞬さんと私の担任の河上亮太さん! ちなみに担当は数学だよ! だから警戒しなくても大丈夫だよ!?」
どうやら瑞希は、この二人と知り合いのようだ。
瑞希が言っているけれど今の私は警戒したままだ。
「やあ君が噂の澪ちゃんだね!? 瑞希から、いろいろ話は聞いてるよー!? 想像以上に可愛いねー!! 変装してても分かるよー!! 元の色は分からないけどね!? よし、今日からは気軽に瞬さんって呼んでね!? はい、決定ー!!」
ちなみに今の私は目立たないように髪と目の色をスプレーとコンタクトで変えている。
今まで初対面の人に指摘された事はなかった。
どうやら観察力は、あるようだ。
「はぁー。こんな馬鹿ほっといて下さい。むしろ相手にしないで、やって下さい。本人のためですから。じゃないと調子に乗りますから。初めまして今日から澪さんの担任の河上亮太です。よろしくお願いします!」
「やったぁ〜澪、私と同じクラスだよ!? 亮太さんありがとうございます!!」
「いえいえ、これくらい気にしないで下さいね!? ちなみにクラスは1−Aですよ!」
「瑞希ー!? 礼を言う相手、間違ってるからー!?」
「あ〜はいはい瞬さんも、ありがとう」
「軽っ!? 何この差!?」
「日頃の行いですね!? さてチャイムが鳴る前に案内がてら教室まで行きましょうか!?」
瑞希が返事をして部屋を出ようとした時に後ろから声が聞こえてきた。
「授業なんか、ほっといて皇達も呼んで、お話ししようよー!?」
けれど皆、無視をして校長室をあとにした。
教室に行くまで部屋を案内されながら瑞希の様子を窺うと笑顔で話していた。
時折、冗談も言っていた。楽しそうで何よりだ。