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かわいい常連「同居……しよ?」

最後の方に選択肢があるので感想?かなにかで番号書いてくれたらありがたいです!ついでに評価してくれたらとんでよろこびます。

 金物屋の朝は早い。

 日が昇る前からいつも通りの仕事に取り掛かる。

 仕事場に空しく響く金属音。

 今日はやけに耳をうちさらに体力を奪っていく。


 (最後、だからか。)


 納品に向けての最後の仕上げを着々と進めていく。

 日が窓から差す。焼けるような熱光線。

 すでに灼熱のサウナ状態となった室内で俺は汗をぬぐう。


(そろそろ休憩しようかな。)


 今日くるクライアントは唯一の大口お得意様。

 今回で最後の受注になるらしい。前回の納品の際、そう告げられたのだ。

 今までお世話になってきたのだ、汗臭いままおもてなしなんて非礼にもほどがある。


 吹き抜けの中庭に出て真ん中に敷設してある井戸に腰を掛け、水をくむ。

 お手製のポンプは今日も絶好調。桶に水をためる。


「っふぅ……。」


 水を豪快に頭から浴び、全身に回っていた熱が活力を失う。

 心身ともに爽快に。客前に出てもこれならば恥ずかしくないだろう。


 軽く、一伸び。全身からびきびきと小気味よい音色。

 体が軽くなったような錯覚さえ覚える。


「ふぃ~。すっきりした。やっぱ水浴びは……ッ!?」


 目があった。家のなかに何かいる。

 漆黒のフード。随所随所には金糸で美しい紋様が刺繍されており醇美さを湛えている。

 その間隙から見える碧玉の双眸は爛々と輝いていた。




「……おそい。」


テーブルを挟んだ向かい。来客用のソファーに腰を掛けている漆黒の彼女はどこか赤みの差している仏頂面をして、不満を垂れていた。


「スマンスマン、こんなに早く来るとは思っていなくて。」


 俺は平謝り。クライアントとのアポがあるのにゆっくりしていた自分に非があるのは明らかだ。藪から出てきた蛇をつつくようなマネはしない。

 客云々の関係性以前に、怒らせると怖い。


 彼女は「ん」と表情を緩め

「ノックしたのに。消えたかと、おもった。ワクワクしてた。昨日から。世界の意味が。生きててよかった。」

 悪戯っぽい瞳をこちらに向け、非難するように。意味はわからないが。

 チャドル形式のフードの下に隠れた口は多分ほころんでいる。


「悪かったな。汗臭いまま出てフェノに幻滅されたくなかったんだよ。つーかお前は暑くないのか?別にもっとラフにしてもいいんだぞ。」

「いい。熱くない。」


 そうは言いつつ、フードを外しているあたりやせ我慢なのだろうか。

 燦然と輝く彼女の銀髪からは全く汗の気配は感じられないが。

 ちなみに俺はもう額に玉の汗ができている。

 さっき水浴びしたのに……。


「ん、言ってなかったっけ。魔法。ひえひえ。モニもいる?」


 俺の怪訝な視線に気づいたのかフェノが明瞭に答えてくれた。

 たどたどしい言葉とは裏腹に表情はころころ変わって、見ていて飽きない奴だ。

 しかし魔法、か。


「いや、二人分もかけると大変だろ?それに一応、というか唯一の大事なお客さんなんだから手を煩わせるわけにはいかんよ。」


 ふと涼しくなる。


「ん、大丈夫。私、成長してるんだよ。それに、暑くて早く切り上げられるほうが、いや。」

「じゃあありがたくご相伴にあずかりまりますかね。」


 この店の唯一の常連である彼女の好意は無下にはできない。という大義名分のもとにただただ涼しさを享受する。

 涼しいことがこんなにも心地よいことだとは……。


「でもなんだってこんな早い時間に来たんだ?いつもの奴、とはいっても今回が最後だがアレまだちょっと準備あとちょっと残ってるぞ。」


 水浴びしたことなどを差し引いてもこの時間は平時に比べるととても早い。

 納品期限の日まで作業していた俺の自業自得ではあるが。


「問題ない。今はお客さんじゃない。引っ越し。挨拶。」

「なるほど。ご近所さんのあいさつ回りか。ってこの近くに引っ越してきたのか!?」

 たしか隣国に住んでいたはずだ。何かあったのだろうか。……紛争とか?

「隣。」

「隣か。」

 隣か。

「モニ、いつも商売、売り上げだめっていう。」

「まあそうだな。」

「だから、隣。」

「隣か。」

 隣か。

「うん。」

「うん。」

 ……うん。

 おととい、最後に外に出たときには何も無かったから冗談だと思うのだが……。


 いくらなんでもこの小柄な少女が一日で家を建てるなんて現実的に厳しいだろう。

 アイテムボックスとかそんな物理法則を無視したご都合アイテムなんてこの世にはないのだから。

 つまりは与太だろう。この子なりのウィットに富んだジョークなのだ。

 ならば、乗るしかあるまい。


「お隣さんか。遠慮せずにうちに住めばよかったのにな。金もかからないし一石二鳥だぞ。」


 フェノを一瞥する。彼女の目は、その綺麗なエメラルドの瞳は涙を蓄え、煌々と輝かせていた。


 一言で表すなら嬉し泣き。

 人が感極まって流す涙はきっとこのようなものなのだと理解できた。


「ほんと。うれしい。準備する。待ってて。荷物、持ってくる。ああどうしよう。うれしい。」


 なおも喜色を増していくフェノを前になんとなく申し訳なくなる。


(冗談……なんだよな……?)


 ただならぬフェノの様子から自分の認識が誤っていたことを悟る。

 俺は荷物をとりに、玄関口からピゅーっと光もかくやという速度で出ていった彼女の後ろ姿を呆然と眺めることしかできなかった。




「ただいま!」


 体感では幾星霜をこえ悠久の時が過ぎていたが現実では大した時間は過ぎていなかった。

 フェノは急いだのか少し息が乱れている。その背中には多いな風呂敷を背負っていた。


「おう、おかえり。」


 俺は祈ることしかできない。その背中の風呂敷の中身がドッキリ大成功の看板でありますように、と。

 しかし、どう見てもそんな単調な形状はしていない。

 何が入ってるんだこれ……。


 家財道具にしては少なすぎるし、日用品にしては多すぎる。

 まずもって風呂敷で引っ越しなんてそんなこと聞いたことも見たこともない。

 つまりまだどっきりの可能性は…。


 別に、同居という事柄についてはそこまでかたくなに嫌だという訳ではない。

 俺だって年頃の男だ。かわいい女の子との同居なんて誰もが憧れるシチュエーションではないか。だが、いざ身に降りかかってくると怖いのだ。関係性の変化が。


 俺とフェノは出会ってこの関係になってそこそこの時がたっている。

 この心地いい距離感を手放すことになるかも知れない一石となりうる今回の件はそう簡単に決めていいものか。


 そのような思考がぐるぐると俺のなかをうずめいていた。


「その背中の風呂敷にはなにが入ってるんだ?」

「引っ越しの品!どこにおいていい?」


 大輪のひまわりを思わせるその表情は誘蛾灯より蠱惑的で、俺に逆らうすべはなかった。


 変化を恐れていては、何も得られない。安寧と秩序に守られた温い肥溜めのなかで、やっとそんな単純なことに気がついた。


「本当に住むのか?大丈夫なのか?」

「大丈夫。」

「フェノはいいかも知れないけどさ。ほら、親御さんとか。俺男だぞ。外聞とかよくないだろ。」


 ちなみに俺は交流している人が少ないお陰で外聞もなにもない。


「モニ、嫌?やはりダメ?」

「俺は大歓迎だけどさ。男は狼っていうし。フェノはその……かわいいしさ。噂がたつと嫌だろ?」


 面と向かって容姿を誉めるのは照れ臭い。

 髪飾りがしゃらんと揺れる。吸い付くような白い肌。

 いつもローブを着用しているにもかかわらずわかるその双丘の膨らみ。背が低いお陰で背徳的な魅力も醸し出している。

 相貌はいうに及ばず。彼女の銀髪も相まって幻想的な美しさ。

 関係ないけどどことなくいい臭いもする。

 今までの客のなかで、いや生きてきてフェノ以上にかわいい女の子なんていなかった。


 そのような子と共に暮らす……。もっと仲良くなれるかもしれない。そのような期待が胸に芽生え始めた。


1,同居する。

2,同居しない。


感想欄とかで番号かいていただけると幸いです。次の選択肢は二万字くらい後です。

純粋に、文法ミスとかも指摘していただけるとありがたいです。

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