6話
「湯を用意しております。着いてきてください。」
麻袋から出された途端、メイド服を着た金髪の女性にお風呂に連れていかれた。 黄ばんだローブとぼさぼさの髪をガン見され、眉を顰められた。
バルザックが首の抑制具のストラップ部分に鎖を付けてメイドさんに渡すと、ラガと共に去っていった。
おいおい、私は罪人ですか。
無表情で鎖を持つメイドさんに引っ張られながら、豪華な廊下を進むなんて、どういう嫌がらせなんだ。
すれ違う人がいないだけマシだが、散歩中の犬みたいじゃないか。もしくはそっち方面の人だ。
メイドさんと歩調がズレると、首についた抑制具が引っ張られて痛いので、歩調を合わせようとメイドさんの足を見ることになった。
抵抗して止まることもできるが、風呂に入りたい気持ちが勝った。なので、砂で汚れたローファーを赤い絨毯になすりつけながら歩いてやった。
長い毛足に砂利がついていく。
汚くてよかったと初めて思えた瞬間だった。
陰気なことをしていると、いつの間にかお風呂だった。長い廊下に繋がる角をいくつか曲がり、階段を下った先に、お風呂はあったようだ。
白い扉の奥に、白いツルツルの床が広がり、その延長線上に銭湯並みのでかい浴槽があった。
メイドさんが立ち止まって振り返ると、床に鎖をそっと置いた。
そして、目にも止まらぬ速さで全身を床に押し付け、平伏すると、「申し訳ありません!」と小声で叫んだ。
「申し訳ありません、女神様。一時的とはいえあなたに残忍な行いをしてしまいました。我が名は、タガ。ここならば誰も来られません。お辛かったでしょう。思う存分この矮小わたしめを、タガを打ってください、さあ!」
ずいっと頭を持ち上げたメイドさんに、息を飲んだ。
「さ、さぁって言われても」
あまりの展開の速さについて行けない。
確かに首輪付けられて、引っ張り回されて、不満が無かった訳じゃないけれど。なにもここまでして欲しかったわけじゃないし。
そう、若干、引く。
「なんと!さすがは女神様、慈悲深くていらっしゃる。いいのです、女神様。タガは役目とはいえ、貴方様にひどい行いをしたのですから。」
人から嫌なことをされたとき、謝れやって思ったことあるけど、髪と同じ金色の目をキラキラさせながら謝られると何故だろう。
なんかもう、絶対打ちたくない。
「あの、いいです。確かに痛かったけど、タガさんにそのつもりが無かったの分かったし。顔を上げてもらえませんか?」
「いいえ!なりません。神殿のものより仰せつかった役目とはいえ、お仕えする人に首輪を付け、挙げ句の果てに引っ張るなどと。」
だから、是非!とメイドさんは譲らない。
土下座する金髪美女と、それを見下ろすボロボロのわたし。
頭を抱えるわたしに、メイドさんがモザイクをかけたくなるブツを取り出そうとするのが視界に入り、慌ててストップをかけた。
「だっ、だったら、お風呂入らせてください!もう2日もお風呂に入れてないので早く入りたいんです!」
できる限り不愉快な顔をして、メイドさんを見れば
、はっと気がつきすぐさま立ち上がった。
なんか変態しかでてきてないですね。