出会い5
「お、お前先生なのか?高校生にしか見えないけど。すっげー!!今、何歳なんだ?俺と大して変わんないだろ」
おいおいお前さん、女性に年齢と体重を聞くのは地球崩壊を招くほどのタブーだって幼稚園で教わらなかったのかい?
あたしに年齢を聞くんじゃないよ。
でも、可愛いからな…ヒントくらいあげてもいいけど。
「20代だけど」
「20代じゃ分かんねーよ。実際、何歳なんだよ」
はるかちゃんは食い下がる。
くっ、どうしても知りたいか。
あたしの年を。
ってか何でそんなに聞きたがる。
「おい、はるか。そんな年増の鼻血ブーちゃんは置いといて、ちょっとこっち来いよ。新入生の実力チェックしたいから、お前ちょっと相手しろよ」
あっれ~?後ろから、すっごくムカつく言葉が聞こえるぞ?
ピクピクとひきつった笑いを後ろに向けると、さっきの林檎頭がこっちに歩いて来るのが見える。
女の子たちの熱い視線を一身に浴びながら、それに見向きもしてない。
ってか、その距離でさっきの会話聞こえたの?
どんだけ地獄耳だよ。
さすが、体育会系。
「おい、響、お前失礼な事言うなよ。ってか、俺、今会話中なんだから邪魔すんなよな」
「あぁん、お前いつから俺様にそんな口きけるようになったんだ?」
林檎は、はるかちゃんの後ろから腕を回し首を締め上げる。
おいお前、それは空手じゃなくてプロレス技だ。
ってか、あたしのエンジェルに触るな。
はるちゃん、まじで苦しそうにあんたの腕をたたいてるから。
これ以上、あたしの怒りを煽るんじゃないよ、お前。
「ちょっと、ひじき君」
ひじき君は、軽く10人はやっちゃえそうな目であたしをギロッと睨んだ。
ひぃっ!
何なの、あんた。あたしまだ何もしてないんだけどぉぉ。
「おい、お前今何て言った」
「ちょっと、ひじき君」
「俺は、食いもんじゃねぇ!ひびきだ、ひ・び・き!」
「あ、ごめん」
「おいサラッと謝んな。怒りにくくなるだろうが」
ひじき、もとい、響君は目を細めて、あたしをジロジロ上から下まで舐めるように見て吟味する。
はんっ(・´∀・`)
おい。
その笑いはどういう意味だ?
何だ、その勝ち誇ったような顔はよ?
こいつ殺したろか。
「はるか、こいつの年が知りたかったんだろ。20代だって?100歩譲ってこいつの顔を立ててやって、せいぜい29だろ。こんな年増じゃなくても、今年も可愛い子いっぱい入って来てんぜ」
「おいいいいい!あんた!それは、いくら何でもあたしが可哀想だ!あたしはまだピッチピチの24歳だ!」
「へぇ、お前24歳なのか。それで先生なのか?!すごいな!な!!何教えてんだ?」
はるちゃんが、首を締め上げられながら、キラキラした目であたしを見つめる。
ああ、エンジェル。
こんな林檎だかひじきだか分かんないようなバカと並べると、よりあなたが神々しく見えるよ。
「あぁ?お前、先生なのか?こんなのに教わらなきゃならないなんて、世も末だな」
・・・響君。
あたし達、今日が初対面だよね?
何で、そんなに敵意満々で食いついてくるのかな?
そんなに、あたしが気に入らないの?
あ、あたしが可愛いから嫉妬してんのかしら?
バカね。
あたしほどじゃないけど、あんたの顔も悪くはないわよ。
「お前、何か失礼なこと考えてんだろ」
Oops!
危ない危ない。
ちょっと顔に出るところだった。
あたしとした事が。
もう先生なんだから、こんな些細な事で感情を振り回されてたらプロ失格だわ。
「あたし、初級英語と通訳演習を教えてるの。初級は基本的に新入生が対象だし、通訳演習は専攻の子が取るから、あなた達が受ける授業を教える事は無いと思うわ」
プロっぽくキリッと答えてやったわ。
ははん、見たか。
あたしはこんなに可愛くて、頭も良いスーパーウーマンだっつの。
馬鹿にすんじゃないよ。伊達に24年生きて来てないんだ。
ちょっといい気分でモデルみたいに髪をかき上げる。
こんなに綺麗な先生がいるなんて信じられないんだろ。