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美女と天女  作者: 美貝
空手部勧誘から逃げきれ!--WEDNESDAY
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WEDNESDAY- A Day Off 12

気まずい。


非常に気まずい。




夕方の混みいった電車の中。





あたしと湊人君は車内のど真ん中に陣取ってる。



湊人君があまりにも麗しい姿をしているからか、その醸し出す流麗なオーラからか、混んでいるはずなのに彼の周辺には一定の人が立ち入れない空間が出来上がってる。



そのお陰で、あたしまで中々快適な車内空間を与えられてる。




いつもは、人の発する生暖かい熱気とむわっとした何とも言えない臭いに僅かながら不快感を覚えるんだけど、今日は周囲に人が少ないから空気が爽やかで快い。



肩にかかる書類やMacBookちゃんの入った重い鞄も、今日は乗客に押し潰されないからいつもより軽く感じる。





チラッと左側に立ってる背の高い彼の顔を見上げる。



綺麗に整った中性的な横顔が一点に焦点を定めて、その目は些かも動きもしない。



その均整のとれた体内を巡る適度な緊張感が伝わって来るよう。


美しい烏の濡羽色の髪の毛の先にまで意識が巡らされているみたい。



何の経験のないあたしにでも感じ取れる。





武道家なんだなぁ。



こんな何気ない仕草にも、あたしみたいな一般人との違いを感じる。



イケメンってのが、たちが悪い。



もう少し人並みな姿かたちをしてくれていたら、一緒にいてこんなに緊張しないだろうにね。


しかも・・・




湊人君が、あたしのささやかな視線を感じ取って、綺麗な横顔をあたしの方へ動かし正面真上からあたしを見下ろす。



顔も良くて背も高いとか反則。



あたしの知る限り、眉間には常にしわが寄ってるんだけどね。


常にキレてるみたいな。





そんな毎日プリプリしてて、疲れないのかな?


オージーは基本みんな陽気だからなぁ。


何か正反対すぎて面白い。




でも、細かい事気にせず、伸び伸びと生きた方が人生絶対楽しいよ?


あたし、どっちも知ってるからより楽しい方を教えてあげたい。






少しでも快い気持ちにさせてあげたくて、にかっと歯を出して湊人君に笑いかける。


見て、この悩みなんて何にもないとでも言うような能天気な笑顔!



シドニーで編み出した、あたしの秘技の一つ!


悩んでる事がバカみたいに思えてくるでしょう?






これね、シドニーでは抜群の威力を誇ってたんだ。


落ち込んだらナズナのバカ笑いを見に行けって言われるくらいにはね。


でも、国民性の違いかしら?





湊人君の眉間のしわがね、更にね、深くなったって言うかね。





うふ、うふふ。



何が気に障ったのか、皆目見当つかじなんだけどね。





湊人君は怒り顔のまま首を傾けて、口を開く。



その口が、三度形を変えた。





え、何?



何て言ったの?




電車の音が大きいから、全く聞こえなかった。



もう一度言って、とあたしは耳に手を当てるジェスチャーで伝える。






湊人君が顔をぐいっとあたしに近づけた。



少し顔を動かせば、キスが出来ちゃいそうな距離だ。



美麗な御顔に、あたしの頬がカァッと燃え上がる。






完璧な形の唇が、再度開かれる。



でも、やっぱり声が聞こえない。



彼、声を出してないんだ。


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