出会い2
人混みをかき分け何とかパフォーマンスが見える位置まで滑り込む。
サッサッと空気を切る小気味よい音が耳に入ってきた。
目には、使い込んだんであろう乳白色の稽古着が。
空に向かって拳が何度も繰り出される。
と、思ったら次は足が綺麗に正面に上がる。
男子空手部のパフォーマンスなんだ。
カッコイイな。
そう言えば、他の先生がここの大学は空手部は全国レベルだって言ってたな。
練習がきつすぎて女子はついてけないから、結果的に男子のみの部になってしまったとか。
でも、何でこんなに人だかりが出来てるんだろ。
強いって言っても空手って今の日本じゃマイナーなスポーツなんじゃないの?
私は怪訝に思いつつも、パフォーマンスにちゃんと目を向ける。
あ!
なるほどね。
そっか。そりゃ、こんな人も集まるわ。
完全に理解した。
(☼ Д ☼)
何だこれ、全国から誰かスカウトして選りすぐって来たのか?
何っだ、このイケメン達。
え、ドラマの撮影とかじゃないんだよね?
あたしは、きょろきょろとカメラを探す。
ない。
うわーうわー、まじでか。
一昨日の天女と言い、ここの大学本当にレベル高いな。
あたしの自分の美貌に対する鋼鉄の自信が、果てしなく揺すぶられているよ。
あたしは、じとーっと目の前でパフォーマンスを繰り広げる6人のイケメン達に右から順に目を向ける。
恨めしい視線だって分かってても、止められない。
一番右端のが主将かな。
ガタイいいなぁ!
胸板ぶ厚っ。
短い髪をワックスで立ててる。
すっごい爽やか。真剣な顔から滴る汗がセクシーだな。
正統派スポーツマンだ。
見てるこっちも清々しくなる。
順番的に次のが副主将か。
わー、これはまた、クールビューティだな。
肩まではあるであろう漆黒の長髪を、後ろで一つに束ねてる。
え、いいの、それ?スポーツとしてありなの?
でもね、繊細な顔立ちにすっごい似合ってる。
簡単そうに技を出してるけど、きっとすっごく高度な技達なんだろうな。
次の二人は、組手のパフォーマンスか。
・・・うん。
何か、この二人は入る部を間違えたんじゃないかな。
なぜって。
まず、目に入るのが素晴らしくアレンジされた稽古着だよね。いくらパフォーマンス用とは言え、稽古着を改造するのはアウトなんじゃないか?
いや、めちゃめちゃカッコいいけどね。
古より伝わる無形文化財が、果てしなくポップなものに様変わりさせられてるよね。肩のドラゴンの刺繍とか、首や耳、足首についたアクセサリー。
髪も、何て美しい赤と紫。例えるならば、林檎色と葡萄色ってとこか。極甘だな。
お御顔の方も、極甘だ。
林檎は大きめの垂れ目に高い鼻、悪戯好きが予想される笑いをかみ殺してる形の良い唇。
葡萄の方は、切れ長な目元がよだれが出るほどセクシーだ。スッと通った鼻筋に…あ、舌なめずりした。薄い唇がちょっと光ってる。やばい、悩殺されるじゃん。
組手を披露しているはずなんだけど、ちょこちょこ、え、違うよね?って動きが混じってる。真面目にせんかい、とか突っ込みたくなるわ。