WEDNESDAY- A Day Off 8
クールビューティは学外でも健在なのね。
や、情報として知ってはいたんだけどね。
実際に自分の目で見ると・・・
うん、想像以上にすごいわ。
大学であたしの初級英語に群がる女学生たちの比じゃないね。
芸能人とか言われてんじゃん。
しかし何て失礼なんだ!
湊人君は、そこらの芸能人なんかより、はるかに綺麗だよ!
比べる事自体おこがましいわ!
って、何であたしが怒ってんだよ、もう。
よし、見なかった事にしよう、とあたしは机の上の論文に意識をまた集中させるよう努める。
その内、皆さんの視界からも消えるだろうし、このキャーキャーはそれまでの辛抱だわ。
気持ちはすごく良く分かるから、何も言わないでおいてあげる。
でも、これだけは知ってほしい。
彼、近くで見るともっとやばいんだよ。
ここから見る彼なんかの比じゃないね。
そんな事を知っちゃっている自分。
少し優越感に浸りながら、また自分の世界にトリップ。
少しの間目を動かし続けて、紅茶の補給のために立った時には、案の定おばちゃんの奇声はやんでいたし、お客さんの顔ぶれも変わっていた。
時計を見ると、もう四時半を回っている。
あ、いい時間。
おばちゃん達も夜ご飯の準備に帰る頃だし、夜ご飯時の七時ごろまで静かな時間が訪れるかな。
何度も席を立つのが面倒なので、ティーポット3つに別々の茶葉を入れてお湯を注ぎながら、そんな他愛もない憶測を頭の中で繰り広げる。
ドリンクバー用のトレーに安定の悪さを物ともせず三つ並べてポットを置いた。
そして、コーヒーフレッシュを鷲掴みして、そのまま片手にトレー、片手に大量のフレッシュを掲げ席まで戻った。
日本人のサービスの行き届き具合よ!
テーブルの上のポット君とカップちゃん達は、あたしの飲み残しが入ったのを残して全て片付けられていた。
うるさかったおばちゃんズも遂に重いお腰をお上げになったのか、姿がきれいさっぱり見えなくなってた。
さながら、第二セッションってところか。
あたしはまだ当分このComfortable(快適)な環境に居座り続けるつもりでいる。
ポットの中身がこぼれないように気を付けながら、トレーをテーブルに置いたら、あたしもゆっくり腰を下ろした。
用が済んだペーパー類はごちゃごちゃして鬱陶しいし、無くなったら困るからまとめて鞄に突っ込む。
テーブルの上に、ポット君・カップちゃん・そしてあたしの愛するMacBookちゃんだけと言うスッキリした空間が出来上がった。
さてさて、もう一頑張りしますか。
優雅に紅茶をカップに注いだ手をキーボードに移し、Google Scholarで何気なく論文検索を開始した。
ザワッ
また空気がザワついた。
まだ、検索結果のブラウズすら終わってないんですけど?
今日は、集中しようとすると、それに合わせたかのように周囲が落ち着かなくなるの繰り返しだ。
うん、席が悪いのかな?
何気なく店内から窓へと視線を一周泳がせる。
十数分前に見たのと同じ光景がまた目に入って来る。
ああ、湊人君。
モデルみたいに綺麗。
本当に綺麗。
あたしのしょぼいボキャブラリーじゃ、その綺麗さは表現しきれないよ。




