WEDNESDAY- A Day Off 6
あたしの専門は教育学。
その中でも修士号は更に専門的にTESOL、つまりTeaching of English to Second Speakers of Other Languages (他言語話者に対する英語教授法)を専攻した。
だから、今の仕事は実はあたしの専門にジャストミートって訳。
実際、日本人学生に教えるのと、シドニーにいる外国人に教えるのじゃ、同じ英語を教えるのでも全く勝手が違う。
日本人学生の反応は、いつも予想外で面白い。
特に勉強に対する姿勢とか、勉強の仕方、それに得手不得手の分野が決定的に違う。
だから、研究意欲が燃え上がるんだよね。
勉強(研究)することが仕事の一部なんて、大学教員って何てあたしにとってピッタリな仕事なんだ。
楽しいし。
学生だって、殴り飛ばしてやりたいくらいムカつく事もたまにあるけど、基本的にはみんなとっても可愛いし。
あたし、いっぱい論文読んで、熟慮を重ねて論文書いて、もっともっと知性溢れる美人教師になるんだから。
集めて来た論文のデータをパソコンで2,3本開いて良さそうなものを見繕う。
これがいい、と目星をつけたら、あたしの目は吸い寄せられるように文字を追った。
おばちゃんの興奮も冷めやんだようで、またいつもの落ち着くレベルの喧騒の中に身が浸される。
この、程よいうるささ。
そうそう、これよ、これ。
This is just what I wanted.(あたしはこれが欲しかったんだ。)
快適な環境で好きなことを仕事に出来ている現在の境遇。
身体の中からその事実に対する感謝の気持ちが溢れてきて、今の自分を取り囲む何もかもに愛おしさを感じた。
p■qω・`)*⑅♥︎シアワセ
⋈˖⁺♡৹⑅♡˪৹⌵ೕ♡৹⑅♡⁺˖⋈ ⋈˖⁺♡৹⑅♡˪৹⌵ೕ♡৹⑅♡⁺˖⋈
きゃーーーー!
(゜Ω゜;)ハッ!!
あたしはまた日本の愛されるべきおばちゃん達の嬌声に、論文の世界にトランスされてた意識を引き戻された。
今度は何?
イラッとして、彼女たちの声に聴き耳を立てる。
ってか、何で誰も苦情を言わないの?
誰も言わないなら、あたしが言ってやるYO!
「あの子、さっきの子じゃない?」
「この辺で撮影でもしているのかしら」
「本当に綺麗な顔ね~。もっと近くで拝んでみたいわ」
「あら、じゃぁ、あなた行って来なさいよ。写真やサインくらい頼んでも罰は当たらないわ」
「えー、そんなの、こんなおばさんが、恥ずかしいじゃない」
あ、自分の年は認識してるんだ。
そこで恥じらう前に、公共の場で大声で騒ぐことに対してまず恥じらいを覚えてほしいところなんだけどね。
ね、皆さんもそう思いますよね、と言う同意を求めて、あたしはNathanに入って初めて周囲に目を向ける。
街に面した窓に、一様に視線を釘づけられてるお客さん達の姿が目に入った。
おばちゃん達だけじゃなくて、基本的に大半のお客さんが外の芸能人?に目を奪われている模様。
だから、苦情がないのか。
おばちゃんズが声に出せない他の客の心を代弁しているのね。




