TUESDAY - Beginner-level English 11
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コンコンッ
学内唯一の聖域の中で、あたしがぐったり机に顔を伏せてるとノックの音が聞こえた。
ひんやりした空気と額に触れる冷たくて硬い机の感触で、火照った心と顔を、教室から出てよりもうかれこれ30分くらいずっと鎮静させてたんだ。
でも、今はまだ誰とも話す気になれない。
無視だな。
あたしは、狸寝入りを決め込んだ。
はいはい、何にも聞こえませんよ~(´_ゝ`)
いつも真面目に授業を聞いてくれる春果君の授業妨害は正直ダメージがバカみたいに大きかった。
何で怒ってたの?
意味分かんない。
あたしは、先生として最善だと思う事をしただけなのに。
きっとね、教壇に立つからには、こんな事笑って流せるくらいじゃないとダメなんだと思う。
学生との衝突なんて、無い方が奇跡じゃん?
お互い人間なんだし。
でも、正直新米のあたしには初めての経験だし、心のどこかで彼を頼りにしてただけにショックがあまりにも大きかった。
小さな事で落ち込んじゃってバカみたいだけど。
女学生からのあからさまな敵意も、受けて嬉しいものじゃないし・・・
じわっ(இ_இ; )
軽く視界がぼやけて、鼻もツーンとする。
何度思い返してみても、何が悪かったのか分かんない。
分かんないから、直しようがない。
本人に聞けばいいんだけど、心に余裕がな過ぎて気も乗らない。
コンコンッ
あたしは冷たい机にさらに強くおでこをくっつけて、精神を落ち着かせるよう努める。
気持ちが盛り上がってる時は、何したってうまく行かないから、まずは落ち着かなきゃ。
幸い今週のEnglish Literature(英文学)の講義は、私じゃなくてもう一人の先生の番だし。
コンコンッ
早く宿題の採点して、出席ポイントもExcelに打ち込んで帰ろう。
でも、今見てもきっとまっさらな目で学生たちの英作文見れないから、とにかくまずは落ち着こう。
コンコンッ
ああ、そう言えば明日は会議があるんだっけ。
Save the Homelessの部長にも連絡しなきゃな。
流石にもうどこにも所属してない先生なんて、あたしくらいだろうし。
でも、今はその気にならないから、取り敢えず落ち着いて、あたし。
思考がぐるぐる回ってる。
落ち込んでる時こそ、あれもしなきゃ、これもあるって出て来ちゃうのは人間の性。
ああ、哀しきかな、人間よ。
コンコンコンッ
ってか、しつこくない?
あたし寝てんだって。
バカなの?
見て分かんないの?
ええ加減帰れや。
今は学生の相手出来る状態じゃないんだって。
あたしは、チッと舌打ちをして更に深く腕に顔を埋める。
全部シャットアウトしてんだ。
空気読め、日本人学生よ。




