表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
美女と天女  作者: 美貝
空手部勧誘から逃げきれ!--TUESDAY
44/66

TUESDAY - Beginner-level English 9

次の学生は男子学生だ。


あたしはまた躊躇せず腕を広げて身体を大きな彼の体にうずめる。


ポチャった弾力のあるお腹が、あたしのお腹に当たる。


何か生暖かい。




オージーを思い出す。


お腹の大きい人、めっちゃ多いからね。


中年太りって言うか、中年じゃなくても欧米系はお腹出やすいんだろうね。


芋と肉と乳製品の摂取量、半端ないもんね。


太るなって方が無理な話だわ。





「あはは、こんなおばちゃんでごめんね。折角なら若い子がよかったでしょ。いつもありがとね」





サラッと言って腕の力を解く。


瞳を覗き込むと、大きな動揺が見て取れる。


顔も真っ赤っか。


20前後の男の子だもんね。


そりゃ、ビックリするよね、急に先生に抱き付かれて。


ま、これも異文化学習だからさ。




あたしはまたニコッと微笑んで、次の学生に向かう。


次も男の子か。


彼は見るからに頬を染めて、来たるべき体験に対して緊張してる。


瞳孔が開ききってて、鼻息も荒い。




あ、ちょっと嫌だな。




でも、差別は良くないもんね。


こうなったら、全員にハグしてやる勢いでいけ、あたし。




あたしは、また同じように腕を広げる。


男子学生の顔が期待で強張る。




と、後ろからその腕を引っ張られた。


身体が大きく傾く。




「パーカー先生」




ハスキーな声があたしの行動を抑制する。


あたしは、怪訝に思って振り返った。


力強い圧力を腕に感じる。


ちょっと。

そんなに握ったら、痣になるよ。


周りの学生たちの視線も集めてるし。




春果君は、そのプリティーフェイスを氷の微笑で飾って言った。


そんな長い付き合いって訳じゃないけど、こんなゾクッと震えさせられるような顔は初めて見る。




「もう時間です」




あたしは時計を見た。


まだ、授業終わりまで15分もある。


疑問を込めた目を春果君に向け直す。




「We still have some more time, I guess?」




あたしは努めて困惑を隠して、クールな声で伺う。


春果君は、あたしが次にハグするはずだった子に向かって詰問する。




「なぁ、お前、もう時間だよな。今日は授業はいつもより早く終わるようになってんだよな」




聞かれた子は大げさなほどにビクッとして、首をコクコク縦に振った。




「は、はい。ナズナちゃんの授業だけ短くなるって」




言い終わらない内に、春果君がギリッと歯ぎしりを聞かせる。


そんな怖い顔したら、可愛い顔が台無しだよ、春果君。



男子学生はひぃっと首を竦めて、先ほどの台詞を言い直す。




「パ、パーカー先生のクラスだけ短くなるそうです・・・」




段々声が尻すぼみになっていく。


春果君は満足そうに頷いて、その隣の女学生に目を向ける。



視線だけで同じことを聞く。


女学生も頬を染めて、小さな声で同じことを繰り返した。




「パーカー先生のクラスは今日は短くていいそうです」




春果君は、また満足気に頷く。



・・・。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ