5 + エンジェル 10
「もうご存知かもしれませんが、櫻井春果です。3年で、生物学部です。春果は、理系なだけあって何でも突き詰めたい奴で。先生のことも、うちの空手部にピッタリだって思ってから、ずっと妥協せず先生を入れるために頑張って来てて」
あたしを抱く春果君の腕の力が強くなる。
「だって、小林は使えないから、絶対誰かうちの空手部の面倒を見てくれる人が必要なのは、みんな賛成しただろ。また適当な奴に頼むくらいなら、俺は絶対夏菜がいい!」
春果君が頭をあたしの肩にグリグリ押し付ける。
髪がほっぺたに当たって、くすぐったい。
「まぁ、確かに小林ちゃんだけじゃ、うまく回らないのは事実よねぇ。連絡を取りたい時に繋がんないんじゃ話にならないわ」
彰さんが、あたしに向けてか、みんなに向けてか、つらつらと話す。
「実は、ちょっと前まで数人うちの空手部の担当がいたのよ、小林ちゃんも含めてね。でも、うちってほら全寮制だし、個性的なのが多いじゃない。だから、中々先生達と馬が合わないって言うか。あたし達の方が強いもんだから、余計たちが悪くてね。男の先生は嫉妬とかしてめんどくさいし、女の先生は・・・」
ブルッ
匠君以外のみんなが、あからさまな身震いを見せる。
抱きしめる腕を通して春果君の身震いも強く感じた。
え、何があったの?
大の男が揃いも揃って震えるなんて・・・
先生、強く興味があるよ?(*´ω`*)
「だから、誰でもいいって訳じゃないのよ」
彰さんは、困ったように話を切り上げる。
あ、そこは掘り下げないのね。
分かった。
後で、春果君に個人的に聞こう。
・・・あれ?
「でも、待って。じゃぁ、何であたし?あたしも、女なんだけど」
・・・。
生暖かい目があたしに四方から注がれる。
春果君の腕の力が、ちょっと強くなる。
「うん。聞いて、みんな。大事な事だから、もう一回言うね。あたしも、女なんだけど?」
・・・。
ぷっ
響君が小さく吹き出した。
おいおいおい上手に咳の振りして誤魔化したつもりだろうけど、あたしは見逃さなかったぜ?
なぁ、ひじきよぉ?
あたしの顔が、ひくひく引きつる。