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美女と天女  作者: 美貝
HARUKA
19/66

熱血・あ・た・し!3


「せんせーい、早く授業を始めてください」


「あ、ごめん」



おおう。

最近の子は冷めてるな。

今、学生たちは猛烈なる感動に浸ってる場面のはずなんだけどな。


前に目を向けると、みんな白けた目であたしを見てる。

えっ、何この冷ややかな空気。

あたしの熱血が足りなかったか?


そんな冷ややかな空気の中、輝ける一区画。

春果君!

マイ・スピリットセイバーよ!

君だけだよ、そんなキラキラした視線を送ってくれるのは。

やっぱり君が一番可愛い。

君がいるといないとじゃ、その場の空気が違いすぎてね!

もうあたし君なしじゃ生きてけない!



「せんせーい」


「あ、ごめんね」



あたしは、ジーンとした視線を春果君から引き離して授業を始める。

ちっ、もうちょっと浸ってたかったのに、せっかちさんめ。



「じゃぁ、今日は前置詞ね。前置詞って何?いくつある?」



あたしは、地味に授業を始めた。


.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o○.。o


ふぅ。

今日も無事に終わった。


講義ノートが着々とたまってく。

あたしの努力の歴史が積みあがってく。

こんな些細な事が自信に繋がってくんだ。



「Good bye, Sensei」


「See you, guys」



こう言った小さな会話だって、自然に学生たちと出来るようになってきた。


彼らがあたりに打ち解けて来てくれたってのもあるし、あたしが彼らに打ち解けて来たってのもある。

相互作用だな。


一ヶ月経って、お互い肩の力がちょっと抜けたんだろうな。


あたしはこの外見上日本で友達を作るのは時間がかかる。

ごく一般的な日本人と比較したら、やっぱりちょっと見た目が違うからね。


あたし自身は、この萌えるような新緑の瞳もスッとした鼻立ちも、白い肌も気に入ってるし、桑茶の巻き髪もいいと思ってる。


でも、好きじゃない人も大勢いるのも知ってる。


あたしの内面を見る前に、外面だけで拒絶される事だってない訳じゃない。


それは、この大学内にいてすらそう。

生粋の日本人として扱ってもらえない。

それが良い時もあるし(外人だからって許してもらえる)、悪い時だって(疎外感は半端ない)ある。


だから、こうやって学生たちとちょっとでも打ち解けて話せるの、嬉しいんだ。

彼らには色眼鏡はないからね。

若い子って良いね。


そんな若い子達は、今日も荷物を片付けて教室を出てく。

賑やかだった教室が、魂が抜けたようにまたしーんと静まり返る。

今日もありがとう、教室。


あたしも自分の荷物を片付けて教室を出ようとしていると、何の前触れ無なく突然、力強い指があたしの腕をぎゅっと握った。



「夏菜!」


「わ!」



ビックリして振り返ると、春果君が久々にあたしの近くに立ってた。


君、いつからそこにいたの?

気配がなかったから、急に出て来て本当に心臓飛び出るかと思ったよ。


春果君は、いつもと変わらないキューティーフェイスを少し綻ばせてあたしの目を真っ直ぐ見る。

何かいいことあったの?



「どうしたの、春果君。質問?」



あたしは、身体をくるりと回転させて春果君と向き合う。

春果君の指が、あたしの腕から離れた。


でも、彼の手のあったところは、いまだにジンジンとうずいている。

何、敏感になってんだ、あたし。



「今日、夕方時間ある?もしあるなら、空手部の練習見に来てよ。俺、夏菜をみんなに紹介したい」


「え、でも、あたし・・・」


「見に来るだけだから!俺、まだ夏菜を誘わないよ。ちゃんと納得してから入ってほしい。だって入ったら色々お世話になるのは俺たちな訳だし」


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